僕だけの箱庭

田古みゆう

文字の大きさ
6 / 8

p.6

しおりを挟む
「心配することはない。キミはまだ若い。すぐに、箱庭に力を食い尽くされることはないはずだ」
「本当に?」

 男はそう言うが、僕は不安を隠しきれず、思わず瞳が揺れる。

「怖いかい?」
「僕、先生に一人で世話をするんだって聞いたんだ。でも僕は、箱庭の世話の仕方なんて何も知らない。何も分からないんだ。そんな僕に箱庭の世話がちゃんとできるのかな?」
「大丈夫だとも。キミは愛情をもってこの箱庭を見守ればいいんだ。それだけでいい」
「それだけでいいの?」
「そう。それだけでいい。ただし、私のように一部を見るのではなく、全体を見守っておくれ。全体を見て、ゆっくりでいいから、箱庭の傷ついたところを癒しておくれ。キミが望めば、箱庭も応えてくれる。上手く箱庭の世話ができれば、キミも箱庭もずっと長く続いていくはずさ」
「わかった。僕、箱庭をずっと見守っていくよ」

 男の真剣な言葉に、僕の心は決まった。後は任せてくれと伝えたくて、力強くうなずいて見せる。

 僕のうなずきに安堵したように弱々しい笑みを漏らした男は、自身の胸元へ手をやり何かを引っ張るようにして胸元から握りこぶしを離すと、僕の目の前でゆっくりとその手を開いた。

「さぁ。これを受け取って」

 男の手の中では、青い球が弱々しい光を放ちながらふわふわと空中に浮いていた。

「これは?」
「Earthの核だよ。これを胸に刻んだ者が世話役となり、箱庭と繋がるんだ」

 僕は青い光を両手で掬うようにしてそっと受け取った。光は今にも消えてしまいそうなほど弱い。

「さぁ。早く、それを胸にしまって」
「ど、どうやって?」
「胸に当てるだけでいい。それで、核はキミの中に入っていくから」

 僕は言われたとおりに、青く弱々しい光の玉を、そっと自身の胸に押し当てる。光の玉はスッと僕の胸の中へと入っていった。

 核が僕の中へと入ってきた途端、僕の中でカチリと音がしたような気がした。まるで、でこぼこがピッタリと合わさったような安心感が心を満たす。それと同時に、途方もない寂寥感に襲われた。

 僕の瞳からは、どんどんと水が溢れ出す。拭っても拭っても止まらないそれを、男は辛そうに見ている。

「辛かったよな。苦しかったよな。ごめんな」

 男の目からも、水が溢れ出した。僕は、自分の水を拭うのをやめ、男の頬を流れる水をそっと拭う。

「大丈夫。大丈夫だから。あなたは本当に良くしてくれた。ありがとう」

 それは、僕の口から出たEarthの言葉だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか
児童書・童話
私を作ってくれた 私らしくしてくれた あの優しい彼らを 忘れないためにこの作品を

緑色の友達

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。

青色のマグカップ

紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。 彼はある思い出のマグカップを探していると話すが…… 薄れていく“思い出”という宝物のお話。

魔女は小鳥を慈しむ

石河 翠
児童書・童話
母親に「あなたのことが大好きだよ」と言ってもらいたい少女は、森の魔女を訪ねます。 本当の気持ちを知るために、魔法をかけて欲しいと願ったからです。 当たり前の普通の幸せが欲しかったのなら、魔法なんて使うべきではなかったのに。 こちらの作品は、小説家になろうとエブリスタにも投稿しております。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

一人芝居

志波 連
児童書・童話
 母と二人で暮らす小春は、ひとりで頑張る母親に反抗的な態度をとってしまう自分が大嫌いでした。  その苛立ちのせいで、友人ともぎくしゃくしてしまいます。  今日こそはお母さんにも友達にちゃんと謝ろうと決心した小春は、ふと気になって会館のある神社を訪れます。  小春たちが練習している演劇を発表する舞台となるその会館は、ずっとずっと昔に、この地域を治めた大名のお城があった場所でした。  非業の死を遂げた城主の娘である七緒の執念が、四百年という時を越えて小春を取り込もうとします。  小春は無事に逃げられるのでしょうか。  死してなお捨てきれない七緒の思いは成就するのでしょうか。  小さな町の小さな神社で起こった奇跡のようなお話しです。  他のサイトでも投稿しています  表紙は写真ACより引用しました

処理中です...