推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう

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ぶっ飛ばしたいほど尊い推し(8)

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「もしかして、樹の脱退と何か関係があるの?」

 私がそう言うと、蓮の体がピクリと揺れた。図星だ。私は確信した。

 ファンを大事にする蓮は、もちろんグループのことだって大事に思っている。それは、Scorpioスコルピオのファンなら誰でも知っていることだ。蓮のグループ愛は人一倍。そんな蓮がグループの一大事に何も思わないはずがないのだ。

「もしかして……そんなの絶対に嫌だけど……もしかして明日のお知らせって、Scorpioの解散について?」

 私のその言葉に、成瀬さんが驚いたように目を大きくした。蓮は黙ったまま何も言わない。しかし、その目は鋭く私を睨みつけている。まるで手負いの獣だ。そんな蓮に向かって、私は更に言葉を重ねた。

「ねぇ、蓮はそれでいいの? 納得してるの?」

 私の質問は、蓮を更に苛立たせたようだ。

「……お前に関係ない」

 蓮は冷たく言い放つ。その態度に成瀬さんが諫めるように声をかけた。

「おい、蓮」

 蓮は聞く耳を持たない。むすりとしたまま、私に背を向けて部屋の中へ戻ろうとする。

「待って!」

 私はベランダから身を乗り出して蓮を引き止めた。大きく息を吸うと、意を決して叫ぶ。

「Scorpioを解散させないでっ!」

 私の叫び声に、窓枠に手を掛けていた蓮の体がビクリと止まった。そして、ゆっくりと振り返る。苛立ちのこもった蓮の視線が私に向けられる。その視線に怯むことなく、私は蓮の目を見つめ返した。

「お願い! Scorpioを解散させないで」

 その言葉に蓮の目が一段と鋭くなった。彼は苛立たしげに頭を搔くと、長い足で一気に距離を詰めてくる。あっという間に私との間合いを詰めると、その大きな手を私の首元へ伸ばしてきた。そのままネックレスをグッと掴み上げる。

「きゃっ!?」

 突然首を引っ張られ、私は思わずバランスを崩した。その拍子にベランダの柵に脇腹を強くぶつける。痛みに顔を顰めたが、蓮はそんなことお構いなしだ。彼はネックレスを掴んだまま私を睨みつけてくる。

 ……怖い。でも、絶対に目を逸らしちゃいけない。

 蓮の形相が段々と険しくなってくる。彼の鋭い視線は私を責め立てているように感じた。そんな視線を真っ直ぐに受け止め続けていると、一瞬蓮の瞳が揺れたような気がした。だがすぐに元の不機嫌な顔に戻る。蓮は私のネックレスから手を離した。

「お前には関係ねぇよ」

 蓮の突き放すような言葉に、思わず叫び返した。

「関係なくない! だって私、スコッコだもの!」
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