クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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去り行く背中を追いかける(5)

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 シロ先輩が、私をぎゅっと抱き締める。私達はお互いの存在を確かめ合うかのように、しばらくの間そのままでいた。

 やがて、どちらからともなく身体を離す。シロ先輩は、いつもよりも優しい表情で微笑んでいた。私も、ニヘラと笑い返す。

 シロ先輩の手が私の頬に触れる。再び距離が近づくことを期待して目を閉じる。しかし、予想に反して、シロ先輩の指は私の頬をムニっとつまんだだけだった。予想外のことに、パチッと目を開けると、シロ先輩が悪戯っぽそうな笑顔を浮かべていた。

 何だか悔しくなって、私はプクッと頬を膨らませる。シロ先輩はそれを見ると、可笑しそうに笑って言った。

「何を期待してたんだ?」

 私は、さらにフグのようにぷっくりと頬を膨らませた。シロ先輩は、しばらくその様子を見て笑っていたが、そのうちに、ふっと真顔になった。どうしたのかと思って首を傾げていると、シロ先輩は私をじっと見つめながら言った。

「俺の勘違いじゃないんだな?」

 その質問に、私はコクリとうなずく。すると、シロ先輩は満足そうに目を細めた。そして、また真剣な顔に戻る。

 今度は何を言われるのだろうとドキドキしていると、シロ先輩は少し照れたように視線を落とした後、意を決したように口を開いた。

「いつからだ? その……、いつから、その、好き、とか……」

 シロ先輩にしては珍しく歯切れの悪い物言いである。私は、シロ先輩の言わんとしていることを察して、少しだけ気恥ずかしくなった。

 いつから好きかなんて、そんなことは私にも分からない。シロ先輩のことを意識し始めたきっかけは萌乃の言葉だったけれど、今となっては、それがきっかけだったということすら自信がない。もしかしたら、私は、ずっと前からシロ先輩のことが好きだったのかもしれない。でも、自分の気持ちを認めることが怖くて、ずっと気がつかないふりをしていたのかもしれない。

 そんなことを考えているうちに、私は、何と答えるべきなのか分からなくなってしまった。黙り込んでしまった私を見て、シロ先輩が不安そうに眉を下げる。私は慌てて口を開いた。

「いつからかはよく分かりません。でも、この気持ちは多分勘違いなんかじゃありません」
「……多分ってなんだよ」

 私の答えに、シロ先輩は不満そうに口を尖らせた。私は苦笑いをして答える。

「だって、仕方ないじゃないですか。自覚したのは最近なんですから」

 私の開き直ったような答えに、シロ先輩も苦笑いを浮かべる。
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