書捨て4コマ的SS集〜思いつきで書く話

ねぎ(ポン酢)

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書捨て小話

呪い屋

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街に「呪い屋」が引っ越してきた。
皆、気味悪がっていた。
だが興味津々ではあった。

「呪い屋」は呪い屋なので、呪いの店をオープンさせるらしい。
やっと借りられたのであろう、閉じたシャッターが並ぶ過疎化した商店街の角にある一番ボロくて今にも潰れそうなテナント。
そこでコツコツ呪い屋は店のオープン準備を進めていた。

「……何か、ファンシーな店構えだな……。」

毎朝、その前を通りながら、形になっていく店構えを拍子抜けしたように皆が見つめていた。

ある日、チラシがポストに入っていた。
もちろん件の「呪い屋」のチラシだ。

『退屈な日常に、ちょっとした「呪い」はいかがでしょう?
 「呪い」と申しましても、当店で扱いますのは大変軽度の「呪い」です。
 どれぐらい軽度かと申しますと、一番強力な「呪い」の例としましては「タンスの角に足の小指をぶつける呪い」程度のものでございます。
 「呪い」は「呪い返し」が付き物ですが、「タンスの角に足の小指をぶつける呪い」の呪い返しでしたら、皆様のご負担もとても少ない!!(※痛い事には代わりありません。)
 当店でお売りします「呪い」は、相手にも貴方様にもとても優しい「呪い」となっております。
 どうぞお気軽にご利用下さい!!
 現在、オープニングキャンペーンとしまして、一件、ワンコイン(500円)でお受け致しております!!(※おひとり様一回限り。※税別)
 また、ご相談もお受けしております。(30分300円。※税別)
 どうぞお気軽に「呪い屋」にお越しくださいませ!!』

何なんだ、このポップなチラシは……。
カラフルな配色と丸っこい文字で飾られたチラシ。
店構えがファンシーなら、チラシはこれか……。
私は困惑しながらそのチラシをテーブルに置いた。
おそらく「呪い屋」の店主の頭の中はファンキーなのだろう。

変化はすぐに起こった。

ある朝、出勤して仕事を始めた10時きっかり。
フロアで悲鳴やら何やらが響いた。

「か!課長!!あ!頭が……!!」

その声に振り向き、私は盛大に吹き出した。
淋しげだった課長の頭はもっさりとしたアフロヘアーになっていて、その上「本日の主役」というタスキをお硬いスーツの上からつけていたのだ。

皆、騒然とした。
しかもタスキもアフロも、何をどうしようと取れないのだ。
困惑も次第におかしさに塗り替えられ、怒り心頭だった課長もふさふさのアフロヘアーに慣れてきたのか「……意外と似合うな?」などと言い出し得意げに鏡を見ている。
もうどうしようもないので、そのまま仕事をした。

皆、どこかでわかっていた。

「呪い屋」だ、と。

誰かが依頼して課長に「呪い」をかけたのだ。
いや、もしかしたら課長が誰かに「呪い」をかけて、「呪い返し」にあったのかもしれないが……。

誰も何も言わない。

その手の話題は瞬く間に広がった。
やれ、どことこの誰々の手が猫の手になっただの(肉球が触り心地よかったらしい)、どこどこのお姑さんが買い物中に立派な中世のドレスになっただの(宝塚ファンでまんざらでもなかったらしい)、びっくりするような笑えるような、でもどこか喜ばれる要素も少しだけ含まれた奇妙な出来事。

人々はくすっと影で笑った。
そして「呪い」の使い方を覚えた。

「ちょっと!!誰よ!!私の靴を「ガラスの靴」に変える「呪い」をかけたのは!!怖くて履けないし!!痛いわよ!!この靴!!」

「あ~!!やられた!!誰だよ!!俺のチャリを「デコチャリ」にする「呪い」をかけやがったのは!!」

そんな悲鳴が街では度々上がっている。

なんだか街が明るくなった。
シャッター街だった商店街も、「呪い屋」目当てで人が来るようになったせいか、だいぶ活気が戻ってきた。

「呪い屋」の「呪い」は、半日から一日で消える。
なので、ふさふさアフロヘアーがなくなった課長は、次の日、とても寂しそうだった。
今度、何かの時に呪ってあげようかと思っている。

しかし「呪い屋」は恐ろしいものでもある。
一番恐ろしい「タンスの角に足の小指をぶつける呪い」や「電車やバスを乗り逃がす呪い」などの場合は1回限りなので、それが「呪い」によるものなのか、はたまた単なる偶然かわからないのだ。

街に「呪い屋」が引っ越して来た際は、あなたも注意した方がいい。
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