20 / 43
キャサリンと絵美李
キャサリンと絵美李の場合 4-3
しおりを挟む
駅から十分くらい歩くと、庭付き二階建ての一軒家が多く並んでいるのが見えてきた。
「私の家、もうここから見えるんだけどどれだと思う?」
いたずらっぽい笑顔で聞いてくる。あたりを見回すと表札に”山崎”とある家が見えるが、ありふれた苗字だしフェイクだろうと考えた。あまり深く考えずに百メートルほど先にある家を指す。高い塀に囲まれて中の様子がほとんど分からない頭一つ抜けて広い土地だった。
「ハズレ~」
じゃあとその向かいの家を指す。キャシーは首を振った。
「……まさか、ここ?」
キャシーがそちらに向かって歩き出す。それは最初にフェイクだと思った”山崎”さんの家だ。
「っぽくない?」
「そんなことないけど……」
「ま、入ろ」
彼女は扉の前に立つとポケットからスマートフォンを取り出す。ケースのままインターホンの横の白い長方形にかざすとガチャという音がした。玄関は思ったよりも狭く、順番に靴を脱がないとぶつかってしまう。キャシーが先に上がってスリッパを用意してくれた。基本的に靴下か裸足で過ごす身としては違和感がある。そのまま二階へと上がる。「スリッパだから気を付けてね」と声をかけてくれるあたりがやっぱり王子だ。
四畳くらいの部屋に通された。ベッドがないのが意外だ。寝室は別なのだろうか?他は特筆して驚くようなところはない。水色のカーテン、黄緑色の丸いマットの上に茶色いテーブルが置かれている。同じく茶色い学習机には置き場に困ったのであろう教科書が積まれている。その横には小さい本棚があり、上には小物が並んでいた。本棚の中身は後でチラ見しようと思った。
「適当に座って。押し入れとか本棚の奥見ても変なものなんて無いからね。飲み物持ってくるけど、麦茶と紅茶とオレンジジュースどれがいい?」
「じゃあ紅茶で」
「アイスでいい?」
「アイスで」
「ミルクと砂糖は?」
「どっちもいらない」
「承知しました、姫様」
彼女が部屋を出て階段を下る音が聞こえ始めたのを見計らって本棚に近づく。少年漫画が多めで少女漫画と小説が少しといったところだ。ほとんどメディア化されたような有名作品ばかりだが、いくつかは知らないタイトルだ。後で調べてみよう。
「お待たせ~」
ピンクの可愛らしいトレーを持って戻ってきた。グラスにアイスティーが二つ、パン皿が数枚、フォークも置いてある。コースターを敷いてグラスを差し出してくれる。
「さっき買ったパンもう食べるよね?」
「ええ、いただきましょ」
お皿にパンを並べていく。焼きたてというには時間が経ってしまったが、まだいい香りがする。キャシーイチオシのキャラメルコロネに手をつける。ひたすら甘くて美味しい。パンもしっかりしていてるが、キャラメルクリームの邪魔はしていない。キャラメルクリームはこぼれそうなほどしっかりと詰まっている。そう思いながら食べているといつの間にかなくなっていた。
「美味しかった?」
「うん」
「もいっこ食べる?」
「キャシーの分でしょ」
「私はいつでも食べれるからさ」
押し負けてもう一ついただく。食の太い方ではないがペロリと食べれてしまった。
キャシーがスッと近づいてくる。
「口元にキャラメルついて…」
その顔を手ひらの壁で遮る。
「……それはダメ」
「二人っきりだよ?」
「それでもダメ」
キャシーは口を三角に結ぶ。彼女のペースに乗せられると、いつの間にか一線を越えそうだったからである。
「友達同士のスキンシップだよ?」
「日本生まれの日本育ちのくせに」
「バレた」
会話の主導権を握った(?)ところで話題の転換を試みる。
「催促するわけじゃないけど、お土産が気になるわ」
キャシーはにっこりと笑うと
「お昼にしよ。パンだけじゃ足りないでしょ?」
「私の家、もうここから見えるんだけどどれだと思う?」
いたずらっぽい笑顔で聞いてくる。あたりを見回すと表札に”山崎”とある家が見えるが、ありふれた苗字だしフェイクだろうと考えた。あまり深く考えずに百メートルほど先にある家を指す。高い塀に囲まれて中の様子がほとんど分からない頭一つ抜けて広い土地だった。
「ハズレ~」
じゃあとその向かいの家を指す。キャシーは首を振った。
「……まさか、ここ?」
キャシーがそちらに向かって歩き出す。それは最初にフェイクだと思った”山崎”さんの家だ。
「っぽくない?」
「そんなことないけど……」
「ま、入ろ」
彼女は扉の前に立つとポケットからスマートフォンを取り出す。ケースのままインターホンの横の白い長方形にかざすとガチャという音がした。玄関は思ったよりも狭く、順番に靴を脱がないとぶつかってしまう。キャシーが先に上がってスリッパを用意してくれた。基本的に靴下か裸足で過ごす身としては違和感がある。そのまま二階へと上がる。「スリッパだから気を付けてね」と声をかけてくれるあたりがやっぱり王子だ。
四畳くらいの部屋に通された。ベッドがないのが意外だ。寝室は別なのだろうか?他は特筆して驚くようなところはない。水色のカーテン、黄緑色の丸いマットの上に茶色いテーブルが置かれている。同じく茶色い学習机には置き場に困ったのであろう教科書が積まれている。その横には小さい本棚があり、上には小物が並んでいた。本棚の中身は後でチラ見しようと思った。
「適当に座って。押し入れとか本棚の奥見ても変なものなんて無いからね。飲み物持ってくるけど、麦茶と紅茶とオレンジジュースどれがいい?」
「じゃあ紅茶で」
「アイスでいい?」
「アイスで」
「ミルクと砂糖は?」
「どっちもいらない」
「承知しました、姫様」
彼女が部屋を出て階段を下る音が聞こえ始めたのを見計らって本棚に近づく。少年漫画が多めで少女漫画と小説が少しといったところだ。ほとんどメディア化されたような有名作品ばかりだが、いくつかは知らないタイトルだ。後で調べてみよう。
「お待たせ~」
ピンクの可愛らしいトレーを持って戻ってきた。グラスにアイスティーが二つ、パン皿が数枚、フォークも置いてある。コースターを敷いてグラスを差し出してくれる。
「さっき買ったパンもう食べるよね?」
「ええ、いただきましょ」
お皿にパンを並べていく。焼きたてというには時間が経ってしまったが、まだいい香りがする。キャシーイチオシのキャラメルコロネに手をつける。ひたすら甘くて美味しい。パンもしっかりしていてるが、キャラメルクリームの邪魔はしていない。キャラメルクリームはこぼれそうなほどしっかりと詰まっている。そう思いながら食べているといつの間にかなくなっていた。
「美味しかった?」
「うん」
「もいっこ食べる?」
「キャシーの分でしょ」
「私はいつでも食べれるからさ」
押し負けてもう一ついただく。食の太い方ではないがペロリと食べれてしまった。
キャシーがスッと近づいてくる。
「口元にキャラメルついて…」
その顔を手ひらの壁で遮る。
「……それはダメ」
「二人っきりだよ?」
「それでもダメ」
キャシーは口を三角に結ぶ。彼女のペースに乗せられると、いつの間にか一線を越えそうだったからである。
「友達同士のスキンシップだよ?」
「日本生まれの日本育ちのくせに」
「バレた」
会話の主導権を握った(?)ところで話題の転換を試みる。
「催促するわけじゃないけど、お土産が気になるわ」
キャシーはにっこりと笑うと
「お昼にしよ。パンだけじゃ足りないでしょ?」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる