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恋花と愛那
恋花と愛那の場合 5ー2
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時計を見た愛那が下に降りようと言った。どうやら夕飯の時間のようだ。恋花には七時の夕飯は早く感じられた。
一階に行くと、愛那の母、由紀恵の張り切りようが目に見えた。大きなハンバーグ、ボール状のお皿からこぼれそうなほどのシーザーサラダがテーブルに見えた。コンソメスープのような匂いもする。どれもビュッフェのような出来だった。
「ハンバーグだ!」
愛那は子どものようにはしゃぐ。それを見る由紀恵さんの顔は嬉しそうだ。本当に娘のことを可愛がっているのがうかがえた。
「恋ちゃん、食べよ? 冷めちゃうよ」
「うん」
料理はどれも見た目通りの美味しさだった。
「ごちそうさまー!」
「ご馳走さまです」
「はい、お粗末様でした」
「恋ちゃん、お風呂入ろお風呂!」
「愛ちゃん、食後すぐなんだから急かさないの」
由紀恵さんが恋花の気持ちを代弁してくれた。
「じゃあ、あたしの部屋に戻ろっか」
「うん、ごめん。まだ動くのは……」
夕飯の前にやっていたゲームを少しプレイした。二戦ほどしたところで恋花から声をかける。
「まさか、お風呂一緒に入る気じゃないよね?」
「え? ダメなの?」
「なんでも言うこと聞いてくれるって……」
見るからに悲しそうな表情で言う。そもそも、他人とお風呂に入るのが苦手なのだということを告げようとした。しかし、取られた言質のせいで恋花は折れるしかなかった。
「分かったよ……、じゃあお風呂行こうか」
脱衣場は二人同時に準備できる程広くはなかった。しかし、お風呂場は二人入って狭くないくらいには大きかった。
「お父さんもお母さんもお風呂好きでね、特別大きく作って貰ったんだって」
「恋ちゃん、いえ、恋花さん。お背中洗います!」
愛那が妙な口調で妙なことを言いだす。恋花は不気味に思いながらも返事をする。
「……? じゃあ、お願いします……」
「よっしゃ!」
恋花は座ったまま愛那に背中を向ける。愛那は手にボディーソープを出して泡立て始める。そして、少し丸まった背中に手を置く。
「ひゃっ!?」
恋花は普段は絶対に出さないような声をあげた。優しく触られたはずだが、直接背中を触られるという経験がそもそも無いため、分かっていても驚いてしまった。
「恋ちゃんの可愛い声いただき~」
「うっさい! 洗うなら早く洗え」
「ひゃ~、ごめんごめん」
実際、愛那の洗い方は気持ち良かった。洗われているというよりもマッサージされているという感じすらしてくる。
「背中流すよー」
「はい、よろしく」
目を閉じながら答える。自分の背中をお湯が流れていくのを感じる。心の垢まで落ちていくような清々しさとはこういうことなのだろう。
「今度は私が洗おうか?」
「おー! 恋ちゃんから言い出してくれるなんて! 是非、お願いします!」
「上手くなかったらごめんね」
愛那は、既に背中をこちらに向けて座っている。子どものように体を揺らす彼女に、最後に小声で言ったことは聞こえていなかったようだ。
「ん……。そこ、気持ちいいよ~」
「変な声を出すな」
「えへへ……。でも、気持ちいいのはホントだよ」
無防備な後頭部を軽く叩く。その後、蛇口を捻ってシャワーを出す。
「頭流すよ」
「はーい!」
「んー、さっぱり! 恋ちゃん、ありがと!」
浴槽に入るとお湯は溢れてこぼれだしたが、二人が十分に入れる広さだった。恋花はいつもの癖で二分程で浴槽から上がろうとする。
「まだ二百数えてないよ!」
子どもみたいな理由で止められる。
「別に愛那はまだ入ってれば良いでしょ、私はカラスなの」
「じゃああたしも出る!」
愛那はハリセンボンのように頬を膨らませながら立ち上がる。既に風呂場から出た恋花を追いかけるように急ぎ足で出ていった。
一階に行くと、愛那の母、由紀恵の張り切りようが目に見えた。大きなハンバーグ、ボール状のお皿からこぼれそうなほどのシーザーサラダがテーブルに見えた。コンソメスープのような匂いもする。どれもビュッフェのような出来だった。
「ハンバーグだ!」
愛那は子どものようにはしゃぐ。それを見る由紀恵さんの顔は嬉しそうだ。本当に娘のことを可愛がっているのがうかがえた。
「恋ちゃん、食べよ? 冷めちゃうよ」
「うん」
料理はどれも見た目通りの美味しさだった。
「ごちそうさまー!」
「ご馳走さまです」
「はい、お粗末様でした」
「恋ちゃん、お風呂入ろお風呂!」
「愛ちゃん、食後すぐなんだから急かさないの」
由紀恵さんが恋花の気持ちを代弁してくれた。
「じゃあ、あたしの部屋に戻ろっか」
「うん、ごめん。まだ動くのは……」
夕飯の前にやっていたゲームを少しプレイした。二戦ほどしたところで恋花から声をかける。
「まさか、お風呂一緒に入る気じゃないよね?」
「え? ダメなの?」
「なんでも言うこと聞いてくれるって……」
見るからに悲しそうな表情で言う。そもそも、他人とお風呂に入るのが苦手なのだということを告げようとした。しかし、取られた言質のせいで恋花は折れるしかなかった。
「分かったよ……、じゃあお風呂行こうか」
脱衣場は二人同時に準備できる程広くはなかった。しかし、お風呂場は二人入って狭くないくらいには大きかった。
「お父さんもお母さんもお風呂好きでね、特別大きく作って貰ったんだって」
「恋ちゃん、いえ、恋花さん。お背中洗います!」
愛那が妙な口調で妙なことを言いだす。恋花は不気味に思いながらも返事をする。
「……? じゃあ、お願いします……」
「よっしゃ!」
恋花は座ったまま愛那に背中を向ける。愛那は手にボディーソープを出して泡立て始める。そして、少し丸まった背中に手を置く。
「ひゃっ!?」
恋花は普段は絶対に出さないような声をあげた。優しく触られたはずだが、直接背中を触られるという経験がそもそも無いため、分かっていても驚いてしまった。
「恋ちゃんの可愛い声いただき~」
「うっさい! 洗うなら早く洗え」
「ひゃ~、ごめんごめん」
実際、愛那の洗い方は気持ち良かった。洗われているというよりもマッサージされているという感じすらしてくる。
「背中流すよー」
「はい、よろしく」
目を閉じながら答える。自分の背中をお湯が流れていくのを感じる。心の垢まで落ちていくような清々しさとはこういうことなのだろう。
「今度は私が洗おうか?」
「おー! 恋ちゃんから言い出してくれるなんて! 是非、お願いします!」
「上手くなかったらごめんね」
愛那は、既に背中をこちらに向けて座っている。子どものように体を揺らす彼女に、最後に小声で言ったことは聞こえていなかったようだ。
「ん……。そこ、気持ちいいよ~」
「変な声を出すな」
「えへへ……。でも、気持ちいいのはホントだよ」
無防備な後頭部を軽く叩く。その後、蛇口を捻ってシャワーを出す。
「頭流すよ」
「はーい!」
「んー、さっぱり! 恋ちゃん、ありがと!」
浴槽に入るとお湯は溢れてこぼれだしたが、二人が十分に入れる広さだった。恋花はいつもの癖で二分程で浴槽から上がろうとする。
「まだ二百数えてないよ!」
子どもみたいな理由で止められる。
「別に愛那はまだ入ってれば良いでしょ、私はカラスなの」
「じゃああたしも出る!」
愛那はハリセンボンのように頬を膨らませながら立ち上がる。既に風呂場から出た恋花を追いかけるように急ぎ足で出ていった。
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