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二葉と早苗
二葉と早苗の場合 番外編~2/14~
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『今日は帰れそうにない』
午後十時、如月早苗は同棲している恋人、城田二葉からメッセージを受け取った。その後には猫が手を合わせて『ごめん』と書かれたスタンプも送られていた。
今月に入ってから彼女が忙しいことは承知していた。今日渡せないだろうというのも覚悟していた。
「私と仕事どっちが大事? とか言わないけど……」
一人ぼっちの部屋で呟くと余計に空しく感じた。テレビを点けるとトーク番組で、チョコがどうのなどと話していた。
冷蔵庫には数日前から作っていたザッハトルテがある。仕事から帰ってきてすぐに仕上げに入り、七時頃には作り終えていた。
もうまもなく、二月十四日は終わろうとしている。
「早く食べないと美味しくなくなっちゃうわよ……」
突然、玄関の方からガチャガチャという音が聞こえた。極力足音を立てないように玄関に向かった。
扉が開く。
「……ただいま」
「……お帰りなさい」
目の前にいたのは二葉だった。
「帰れないんじゃなかったの?」
「ああ、なんとか帰れた。……って、もう十五日か。ハッピーバレンタイン、早苗」
二葉はそう言って、小さな紙袋を差し出す。早苗の好きなブランドのお菓子詰め合わせセットだ。
「ありがとう。覚えてたのね」
「三日くらい前からあれだけ楽しそうにされてたら忘れようがない」
「違う、ここのお菓子が好きだって言ったこと」
「ああ、忘れるもんか」
二葉が着替えている間に冷蔵庫からケーキを出して、切り分けてお皿に乗せた。
「ハッピーバレンタイン、二葉」
「チョコケーキか」
「ザッハトルテって言うのよ」
「ふーん、これがそうなのか。いただきまーす」
スポンジとチョコが交互に薄く重ねられており、少しビターなチョコ味のスポンジとミルクチョコのバランスがとても美味しかった。
「うん、美味しい! やっぱり早苗の料理はいいなあ」
「そんなに褒めてくれるならホワイトデーは期待してるわ」
「手作りはしないぞ」
「あら、残念。折角エプロン姿が見られるかと思ったのに」
午後十時、如月早苗は同棲している恋人、城田二葉からメッセージを受け取った。その後には猫が手を合わせて『ごめん』と書かれたスタンプも送られていた。
今月に入ってから彼女が忙しいことは承知していた。今日渡せないだろうというのも覚悟していた。
「私と仕事どっちが大事? とか言わないけど……」
一人ぼっちの部屋で呟くと余計に空しく感じた。テレビを点けるとトーク番組で、チョコがどうのなどと話していた。
冷蔵庫には数日前から作っていたザッハトルテがある。仕事から帰ってきてすぐに仕上げに入り、七時頃には作り終えていた。
もうまもなく、二月十四日は終わろうとしている。
「早く食べないと美味しくなくなっちゃうわよ……」
突然、玄関の方からガチャガチャという音が聞こえた。極力足音を立てないように玄関に向かった。
扉が開く。
「……ただいま」
「……お帰りなさい」
目の前にいたのは二葉だった。
「帰れないんじゃなかったの?」
「ああ、なんとか帰れた。……って、もう十五日か。ハッピーバレンタイン、早苗」
二葉はそう言って、小さな紙袋を差し出す。早苗の好きなブランドのお菓子詰め合わせセットだ。
「ありがとう。覚えてたのね」
「三日くらい前からあれだけ楽しそうにされてたら忘れようがない」
「違う、ここのお菓子が好きだって言ったこと」
「ああ、忘れるもんか」
二葉が着替えている間に冷蔵庫からケーキを出して、切り分けてお皿に乗せた。
「ハッピーバレンタイン、二葉」
「チョコケーキか」
「ザッハトルテって言うのよ」
「ふーん、これがそうなのか。いただきまーす」
スポンジとチョコが交互に薄く重ねられており、少しビターなチョコ味のスポンジとミルクチョコのバランスがとても美味しかった。
「うん、美味しい! やっぱり早苗の料理はいいなあ」
「そんなに褒めてくれるならホワイトデーは期待してるわ」
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