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二葉と早苗
二葉と早苗の場合 Fin.
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私、東海林桃子はアパートの前に来ていた。スマートフォンを取りだし、住所を確認しようとすると横から声をかけられた。
「よう、ふすま」
「しょうじです! 会長……お久しぶりです」
「会長はやめろ」
城田二葉さん。高校・大学時代の先輩だ。現在はIT系の中小企業に勤めている。
「飲みもんが何も無いことに気づいてな。じゃんけんで負けたから私が出ることになった」
「変わらないですね」
「そんなもんだ。さ、入ろうぜ」
二葉先輩が鍵も開けずにドアノブを掴む。
「おかえり」
「ただいま。下でふすま拾った」
「お久しぶりです如月先輩」
「あら、桃ちゃん予定より早かったのね」
出迎えてくれたのは如月早苗さん。高校時代の先輩だ。現在は地方銀行に勤めている。
「これお土産です」
「何だこれ?」
「クリームカステラってやつです。今人気らしいですよ」
「それ気になってたの。嬉しいわ」
「冷やすとおいしいそうですよ」
「じゃあ、冷蔵庫か」
二葉先輩が袋から箱を取りだして冷蔵庫に適当に入れる。台所からは良い香りが漂ってくる。それに反応するように腹の虫がなる。
「まだ六時だぞ。柄にも無くダイエットか?」
「ち、違いますよ~。お昼軽くしか取ってないんで……」
「ダメよ、ちゃんと三食食べなきゃ」
「まあ良いさ、いっぱいあるから昼の分も食っていけば」
「偉そうに言ってるけど、二葉は何もしてないのよ」
「野菜の皮剥きはしたぞ」
二人は私のために早い夕食にしてくれた。ハンバーグ、唐揚げ、パスタ、シーザーサラダ、白米はもちろんだがパンもある。ちょっとしたバイキングのようだ。
「すごいですね」
「折角お客さんが来るんだからって張り切ってな」
「桃ちゃんに会うの久しぶりだもの」
三人で色んな話をした。昔のこと、今のこと、二人が同棲してからのこと、私の就職が決まったこと、そして将来のこと……。
二人はとても幸せそうだった。高校時代にした如月先輩への私の告白は発破をかけるためだ。しかし、決して嘘ではない。好きというのも幸せになってほしいというのも。
「……如月先輩、約束守ってくれてありがとうございます」
「ええ……」
少し照れ臭そうに応えてくれる。ワンテンポ遅れて、不思議そうな顔をしたしろちゃん先輩が
「何の話だ?」
と聞いてくる。私はそれを無視して、
「先輩、また一緒に食事しませんか?」
「ええ、またいつでも」
「そんなこと言うと毎日のようにたかりに来るんじゃないか」
「そんな言い方ないですよ!」
深夜まで笑い声は絶えなかった。
五年後も十年後もこうやって二人を見ていたい。城田先輩が如月先輩を大事にしているか、如月先輩が城田先輩に愛情を伝えられているかを監視してやりたい。もし出来てなかったら喝を入れてやる。
いつか、私の大事な人を連れてきて『私の尊敬する先輩だ』と紹介しよう。二人は私の隣に立つ人を見てどんな顔をしてくれるだろうか。私の隣に立つ人は二人の事をどう思うのだろうか。
「よう、ふすま」
「しょうじです! 会長……お久しぶりです」
「会長はやめろ」
城田二葉さん。高校・大学時代の先輩だ。現在はIT系の中小企業に勤めている。
「飲みもんが何も無いことに気づいてな。じゃんけんで負けたから私が出ることになった」
「変わらないですね」
「そんなもんだ。さ、入ろうぜ」
二葉先輩が鍵も開けずにドアノブを掴む。
「おかえり」
「ただいま。下でふすま拾った」
「お久しぶりです如月先輩」
「あら、桃ちゃん予定より早かったのね」
出迎えてくれたのは如月早苗さん。高校時代の先輩だ。現在は地方銀行に勤めている。
「これお土産です」
「何だこれ?」
「クリームカステラってやつです。今人気らしいですよ」
「それ気になってたの。嬉しいわ」
「冷やすとおいしいそうですよ」
「じゃあ、冷蔵庫か」
二葉先輩が袋から箱を取りだして冷蔵庫に適当に入れる。台所からは良い香りが漂ってくる。それに反応するように腹の虫がなる。
「まだ六時だぞ。柄にも無くダイエットか?」
「ち、違いますよ~。お昼軽くしか取ってないんで……」
「ダメよ、ちゃんと三食食べなきゃ」
「まあ良いさ、いっぱいあるから昼の分も食っていけば」
「偉そうに言ってるけど、二葉は何もしてないのよ」
「野菜の皮剥きはしたぞ」
二人は私のために早い夕食にしてくれた。ハンバーグ、唐揚げ、パスタ、シーザーサラダ、白米はもちろんだがパンもある。ちょっとしたバイキングのようだ。
「すごいですね」
「折角お客さんが来るんだからって張り切ってな」
「桃ちゃんに会うの久しぶりだもの」
三人で色んな話をした。昔のこと、今のこと、二人が同棲してからのこと、私の就職が決まったこと、そして将来のこと……。
二人はとても幸せそうだった。高校時代にした如月先輩への私の告白は発破をかけるためだ。しかし、決して嘘ではない。好きというのも幸せになってほしいというのも。
「……如月先輩、約束守ってくれてありがとうございます」
「ええ……」
少し照れ臭そうに応えてくれる。ワンテンポ遅れて、不思議そうな顔をしたしろちゃん先輩が
「何の話だ?」
と聞いてくる。私はそれを無視して、
「先輩、また一緒に食事しませんか?」
「ええ、またいつでも」
「そんなこと言うと毎日のようにたかりに来るんじゃないか」
「そんな言い方ないですよ!」
深夜まで笑い声は絶えなかった。
五年後も十年後もこうやって二人を見ていたい。城田先輩が如月先輩を大事にしているか、如月先輩が城田先輩に愛情を伝えられているかを監視してやりたい。もし出来てなかったら喝を入れてやる。
いつか、私の大事な人を連れてきて『私の尊敬する先輩だ』と紹介しよう。二人は私の隣に立つ人を見てどんな顔をしてくれるだろうか。私の隣に立つ人は二人の事をどう思うのだろうか。
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