勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ

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07.提案

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 お客さんが誰もいない、カフェ『死神の住み家』の店内で。


 僕はふたりの死神と、テーブルを挟んで対面していた。



 ひとりはナヅキ。


 もうひとりは。



「はじめまして! ワタシはカンナギと申します! ナヅキさんを助けてくれて、本当にありがとうございました!」



 カンナギは人なつっこい笑みを浮かべ、ペコリと頭を下げた。



 銀色の髪に、金色の瞳。


 ナヅキに負けず劣らずの、美少女だ。



「いやいや、それは逆だよ。僕が、ナヅキに助けられたんだ」



「控えめなお方ですねぇ。ナヅキさんが恋しちゃったのもうなずける――」



「ちょ、ちょっとカンナギ! 余計なことは言わないで!」



 なぜか、ナヅキが慌てている。



「ところで、さっそくだけど。ひとつ、気になってることがあるんだ」



 僕は切り出した。



「ナヅキのおかげで、僕は今生きてるけど。本当ならさっき、『封印の塔』で死ぬ運命だったんだよね?」



 だから。



「僕が生き延びてしまったせいで。ナヅキやカンナギに、迷惑がかかったりはしないのかな? って思ってさ」



「そういうことなら、心配ご無用です! 順番にお話ししますね?」



 言いながらカンナギは、店の隅にある水晶玉を指した。



「これは、ワタシが作ったマジック・アイテムでして。死期が近いと思われる人の情報を、キャッチできるんです。死亡時刻に死亡場所、死因などなど、ですね」



「今回のフジタニくんの件も、この水晶玉に映し出されたの。私は水晶玉と、自分の精神とをリンクさせて。頭に浮かんだ状況の場所にワープした、ってわけ」



「……ほ、ほほう。なんだかスゴイな……」



死神たちのオーバーテクノロジーに、僕はあっけに取られてしまった。



「でも、ですね」



 カンナギが続ける。



「水晶玉の精度は、100パーセントではありません。たまに、ハズレることもあるんですよ」



「私のワープも、死亡推定時刻キッチリに飛べるわけじゃないの。少し早まるから、その……この間みたいなアクシデントが起こる場合も……」



 ナヅキの顔が赤くなった。



「なるほど」



 ふたりの説明に、僕は納得した。



「ほんの少しでもハズれる可能性がある以上。僕の死は、確定した運命じゃなかった。だから、問題なしってことか」



「まさしくその通りです! ワタシとしましては、命が助かって喜ばしい限りですよ!」



 カンナギが笑った。



「私たち、死神はね」



 ナヅキが続ける。



「むやみに人を、死の世界に連れていきたいわけじゃないの。そこは誤解しないでもらえると、嬉しい……かな」



 ……なるほど。



「よくわかった。心に留めておくよ」



 僕がうなずくと、ナヅキは嬉しそうにはにかんだ。



「マモルさん、ほかに質問はありますか?」



 カンナギがニコニコと問いかける。


 そうだな……。



「死神が人間界に溶け込んで生活してる、っていうのはホントなの?」



「ええ」



 ナヅキがうなずいた。



「冥界だと距離が離れすぎで、小回りがきかないもの。人間界にいた方が、何かと便利っていうわけ」



「街ですれ違った人が実は死神だった! なーんてことも、あるかもしれませんよ?」



 カンナギがイタズラっぽく笑った。



「ふむふむ。それでふたりは、ここでカフェを経営してるってわけか――」



「むぐぐぐぐぐぐぐぐぅ!」



「しょぼーん……」



 いきなりナヅキは、バリバリと頭をかきむしり。


 カンナギは、しょんぼりとうつむいた。



「あの……?」



 僕が戸惑っていると。



「今月もお客さん、ひとりも来てないわよね……」



「もう、家賃が払えませんよぉ……」



「このままじゃ私たち、ここを追い出されちゃうかしら……」



「紅茶や料理の味には、自信があるんですけどねぇ……」



「どうしてかしら……」



「どうしてでしょう……」



「トホホホ……」



「トホホホホ……」



 どんよりした空気を発しながら。


 ナヅキとカンナギは、がっくりと肩を落とした。



「おそらくだけど」



 そんなふたりに、僕は告げる。



「お客さんが来ない理由のひとつは、店の名前だと思うよ」



「え?」



「へ?」



「いや、だってさ」



 目を丸くするふたりに、僕は言う。



「『死神の住み家』っていう名前で、カフェだってわかるかな? ぶっちゃけるけど、僕はわからなかった。それに、たとえばだけど」



 僕は続ける。



「ふたつの小説があったとする。片方のタイトルは、『人神の交わり』。もう片方のタイトルは、『勇者パーティー追放された僕は、死神とのうっかりキスで最強になれました』」



「ちょっ!?」



 ナヅキの悲鳴は、スルーして。



「内容をイメージしやすいのは、どっちだと思う?」



「そ、それはまあ……後者だと思うわ。具体的にどんなお話かがわかるから、興味を引きやすい……あっ」



 ナヅキがハッとした。


 カンナギもうなずく。



「そういうことですか! どんなに内容がおもしろくても、パッと見でおもしろそうだと思われなければ読まれない! ということですね?」



「そう。で、これはカフェも同じ。どんなに美味しい紅茶を出せても、パッと見で紅茶が飲める店だとわからなければ。お客さんは来ないよ」



 僕の言葉に。



「すごい……」



「それは……気づきませんでした……」



 ナヅキとカンナギは、尊敬の表情を浮かべた。



 人間の視点では、普通の考えだと思うけど。


 彼女たちは死神だ。



 いくら見た目がソックリでも。


 このあたりの感度が人間と一緒とは限らない、ということだろう。



「……そうだ!」



 ひらめいた!


 これは、恩返しのチャンスだぞ!



「ナヅキ、カンナギ。もしよければ、だけど」



 僕は、ふたりに提案する。



「このカフェを流行らせる手伝いを、僕にさせてくれないか?」



「えっ?」



「お手伝いしてくれるんですか!?」



「ああ! 2時間もあれば、集客準備はできる」



「に、2時間!?」



「たったそれだけで……?」



 驚くふたりに向かい、僕はうなずく。



「これだけにぎやかな街なんだ。ちゃんと宣伝すれば、お客さんは来てくれるよ」



 手ごたえはあった。


 今の僕には、『いにしえの勇者パーティー』の力がある。


 この力で、いろんなアイデアが実現できるはずだ。



「どうかな? ナヅキに命を救われた恩を、少しでも返したくてさ。もちろん、ムリにとは言わない――」



「お願いします! フジタニくん!」



「マモルさん! どうかナヅキさんとワタシに、力を貸してください!」



 ナヅキも、カンナギも。


 僕に向かい、深々と頭を下げてくれた。



「ありがとう。僕に恩返しの機会を、与えてくれて」



 僕も、頭を下げ返すと。


 さっそく頭の中で、プランを組み立て始めるのだった。
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