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16.狂乱
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僕はナヅキを伴い、テレポートで『フューチャ村』に移動した。
「転移魔法を使うだけでも、規格外なのに。パーティー丸ごと、移動できちゃうのね……」
ナヅキが驚いている。
「死神のワープでも、自分ひとり用なのに……」
「僕だって信じられないよ。自分みたいな人間が、転移魔法を使えるなんて、さ」
僕は頭をかいた。
「イメージが思い浮かぶ場所なら。どこにでも、誰とでも行けるみたいだしね。おかげさまで、行動範囲が広がりそうだよ」
「本当に……すごいわ」
ナヅキは感心しきりだった。
……しかし。
それにしても。
「見る影もないな……」
村の惨状を目にして、ため息が出そうになった。
まさに、廃墟そのものだ。
光景を眺めているだけで、気持ちが沈んでいく。
「マモルくん、大丈夫?」
ナヅキが僕に、心配そうな顔を向ける。
「ああ、平気さ。気遣ってくれてありがとう」
僕は、無理やり明るい顔を作った。
ここで落ち込んでいても、何も始まらない。
気をしっかり持っていこう。
事前の情報通り、あたりには霧がただよっているが。
「この霧……不思議な思念を感じるな。自然現象じゃないよ」
「わかるの?」
「解呪師の感覚でね」
「さすがはマモルくん」
ナヅキが微笑んだ。
「けど。魔力の発信源がわからないと、解呪は難しそうだな」
僕は意識を集中させ、魔力の発信源を探ると。
「これは……!」
僕は息をのんだ。
「魔力の発信源は、ファーザ叔父さんの家があったあたり……か」
ファーザ叔父さんの家。
すなわち、僕がお世話になっていた家。
僕たちの、思い出の場所だ。
「……行ってみよう」
ただし。
「周囲の探索をしながらだな。もしかしたら途中で、ユウリやアイと出会えるかもしれない」
「わかったわ」
僕とナヅキは並び立ち、あたりを警戒しながら歩みを進めた。
そして。
探索開始から、それなりの時間が過ぎた頃。
「いらっしゃいませ、お客様」
霧の奥から、声が響いた。
「誰っ!?」
ナヅキが声をあげると。
「あいにくですが。ユウリお嬢さまは、お休み中です」
前方から、ひとりの女の子が姿を現した。
「早急に、お引き取り願えませんか?」
その姿を見た、僕の口からは。
「アイ……?」
思わず、言葉がもれていた。
フローラルホワイトの髪に、紫色の瞳。
エプロンドレスタイプのメイド服。
メチャクチャな美人に、なってはいるけれど。
まちがいない!
「アイ! アイなんだな!」
僕の中で、喜びが弾けた。
手にした巨大な斧は、ずいぶん場違いだけど。
昔とは違うおしとやかな口調に、少しだけ違和感はあるけれど。
記憶の中の幼なじみ『アイ』の姿と、確かに重なった。
「アイ、僕だよ! マモル・フジタニだ! よかった! 本当に生きていたなんて――」
「気に入りませんね」
僕の言葉は、冷ややかな声にさえぎられた。
「……え?」
固まる僕に向かい、アイは口を開く。
「そのお名前は、わたくしのご主人様のものです。10年前に亡くなった、わたくしの愛するご主人様の……」
「ア、アイ……?」
何だ?
様子がおかしいぞ?
「敬愛するご主人様のお名前を、赤の他人が軽々しく口にする。そのような行為が、許されるとお思いですか? たとえ神が許しても、わたくしは絶対に許しません……!」
「ま、待て! 待ってくれ!」
慌てて僕は叫んだ。
「違うんだ! 僕は死んでなんかいない! アイと同じだ! 生き延びて、修行して、それで――」
「問答無用!」
アイは、手にした斧を構えると。
「マモルさまを汚した罪、このわたくしが裁きます!」
いきなり僕に向かい、突っ込んできた。
「マモルくん、あぶない!」
ナヅキの叫びと同時に。
ブゥン!
「うわっ!?」
目の前に飛んできた斧を、僕はギリギリでかわした。
「はああああああああっ!」
すぐに、頭上から声が響く。
目を向けるとそこには、天高くジャンプしたアイの姿があった。
「アース・ブレイク!」
そのままアイは、勢いよく斧を振り下ろしてくる。
「くっ!」
僕はバックステップで、大きく飛びのく。
アイの斧は、目の前の地面に叩きつけられた。
ドゴオオオオオオオオオオン!
大地が震え、小さなクレーターができる。
「なんて破壊力だ……」
僕は舌を巻いた。
この威力はヤバい。
あの意味不明な勇者・ダイトなんかとは、わけが違う。
『いにしえの勇者パーティー』の力で、ステータス強化されてても。
直撃すれば、マズいかもしれない。
「うああああああっ!」
アイはすぐさま、僕に肉薄する。
ブゥン! ブゥン!
斧の嵐を、僕は右に左にステップを踏んでかわす。
「やめろ! やめるんだ、アイ!」
僕は必死に訴えるが。
「黙りなさい! 黙れ! 黙れ黙れ黙れええええええ!」
ブゥン! ブゥン! ブゥン!
アイの猛攻は、さらに激しさを増していく。
まるでバーサーカーだ。
完全な狂乱状態に、陥ってしまっている。
「やめなさい!」
ナヅキが飛び出すと、アイに後ろから組み付いた。
「マモルくんは、あなたを助けにきたのよ!」
必死でナヅキは、アイを羽交い締めにする。
しかし。
「こざかしいっ!」
アイは背負い投げで、ナヅキを投げ飛ばした。
「きゃあ!?」
「あぶないっ!」
僕は飛び出し、ナヅキを受け止める。
すかさず横に飛ぶと、
ブゥン!
間近を、斧の風圧が通り過ぎた。
「ナヅキ、大丈夫か!」
「何とか……。でも、このままじゃマズいわ。彼女、完全に正気を失ってるわよ!」
くそ!
どうしてこんなことに!?
「うああああああああっ!」
ブゥン! ブゥン!
アイは髪を振り乱しながら、立て続けに斧を振り回し続ける。
これでは、危なくて近づけない。
「どうにか、アイの斧を止めないと……?」
……斧?
「そうか! そういうことか!」
僕は一度、アイから大きく距離を取った。
意識を集中させ、アイから魔力の発信源を探る。
……間違いない!
「斧だ! あの斧に『狂戦士の呪い』がかけられている!」
「そういうこと……!」
ナヅキが納得したようにうなずいた。
「なら、僕のやることはひとつだな」
呪いを解き、アイを助ける。
『いにしえの勇者パーティー』の力ではなく。
僕自身の、『解呪』の力で。
……だが。
「この『狂戦士の呪い』は強力だ。生半可な解呪の技じゃ、太刀打ちできそうもない」
「でも、手はあるんでしょ?」
ナヅキに向かい、僕はうなずく。
「僕が持つ、最強の解呪の技を使ってみる」
「最強の……解呪の技?」
「ああ。それは……」
少しだけ。
口にするのがためらわれたが。
僕は大きく息を吸い、答える。
「『解呪のキス』、だよ」
「転移魔法を使うだけでも、規格外なのに。パーティー丸ごと、移動できちゃうのね……」
ナヅキが驚いている。
「死神のワープでも、自分ひとり用なのに……」
「僕だって信じられないよ。自分みたいな人間が、転移魔法を使えるなんて、さ」
僕は頭をかいた。
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「本当に……すごいわ」
ナヅキは感心しきりだった。
……しかし。
それにしても。
「見る影もないな……」
村の惨状を目にして、ため息が出そうになった。
まさに、廃墟そのものだ。
光景を眺めているだけで、気持ちが沈んでいく。
「マモルくん、大丈夫?」
ナヅキが僕に、心配そうな顔を向ける。
「ああ、平気さ。気遣ってくれてありがとう」
僕は、無理やり明るい顔を作った。
ここで落ち込んでいても、何も始まらない。
気をしっかり持っていこう。
事前の情報通り、あたりには霧がただよっているが。
「この霧……不思議な思念を感じるな。自然現象じゃないよ」
「わかるの?」
「解呪師の感覚でね」
「さすがはマモルくん」
ナヅキが微笑んだ。
「けど。魔力の発信源がわからないと、解呪は難しそうだな」
僕は意識を集中させ、魔力の発信源を探ると。
「これは……!」
僕は息をのんだ。
「魔力の発信源は、ファーザ叔父さんの家があったあたり……か」
ファーザ叔父さんの家。
すなわち、僕がお世話になっていた家。
僕たちの、思い出の場所だ。
「……行ってみよう」
ただし。
「周囲の探索をしながらだな。もしかしたら途中で、ユウリやアイと出会えるかもしれない」
「わかったわ」
僕とナヅキは並び立ち、あたりを警戒しながら歩みを進めた。
そして。
探索開始から、それなりの時間が過ぎた頃。
「いらっしゃいませ、お客様」
霧の奥から、声が響いた。
「誰っ!?」
ナヅキが声をあげると。
「あいにくですが。ユウリお嬢さまは、お休み中です」
前方から、ひとりの女の子が姿を現した。
「早急に、お引き取り願えませんか?」
その姿を見た、僕の口からは。
「アイ……?」
思わず、言葉がもれていた。
フローラルホワイトの髪に、紫色の瞳。
エプロンドレスタイプのメイド服。
メチャクチャな美人に、なってはいるけれど。
まちがいない!
「アイ! アイなんだな!」
僕の中で、喜びが弾けた。
手にした巨大な斧は、ずいぶん場違いだけど。
昔とは違うおしとやかな口調に、少しだけ違和感はあるけれど。
記憶の中の幼なじみ『アイ』の姿と、確かに重なった。
「アイ、僕だよ! マモル・フジタニだ! よかった! 本当に生きていたなんて――」
「気に入りませんね」
僕の言葉は、冷ややかな声にさえぎられた。
「……え?」
固まる僕に向かい、アイは口を開く。
「そのお名前は、わたくしのご主人様のものです。10年前に亡くなった、わたくしの愛するご主人様の……」
「ア、アイ……?」
何だ?
様子がおかしいぞ?
「敬愛するご主人様のお名前を、赤の他人が軽々しく口にする。そのような行為が、許されるとお思いですか? たとえ神が許しても、わたくしは絶対に許しません……!」
「ま、待て! 待ってくれ!」
慌てて僕は叫んだ。
「違うんだ! 僕は死んでなんかいない! アイと同じだ! 生き延びて、修行して、それで――」
「問答無用!」
アイは、手にした斧を構えると。
「マモルさまを汚した罪、このわたくしが裁きます!」
いきなり僕に向かい、突っ込んできた。
「マモルくん、あぶない!」
ナヅキの叫びと同時に。
ブゥン!
「うわっ!?」
目の前に飛んできた斧を、僕はギリギリでかわした。
「はああああああああっ!」
すぐに、頭上から声が響く。
目を向けるとそこには、天高くジャンプしたアイの姿があった。
「アース・ブレイク!」
そのままアイは、勢いよく斧を振り下ろしてくる。
「くっ!」
僕はバックステップで、大きく飛びのく。
アイの斧は、目の前の地面に叩きつけられた。
ドゴオオオオオオオオオオン!
大地が震え、小さなクレーターができる。
「なんて破壊力だ……」
僕は舌を巻いた。
この威力はヤバい。
あの意味不明な勇者・ダイトなんかとは、わけが違う。
『いにしえの勇者パーティー』の力で、ステータス強化されてても。
直撃すれば、マズいかもしれない。
「うああああああっ!」
アイはすぐさま、僕に肉薄する。
ブゥン! ブゥン!
斧の嵐を、僕は右に左にステップを踏んでかわす。
「やめろ! やめるんだ、アイ!」
僕は必死に訴えるが。
「黙りなさい! 黙れ! 黙れ黙れ黙れええええええ!」
ブゥン! ブゥン! ブゥン!
アイの猛攻は、さらに激しさを増していく。
まるでバーサーカーだ。
完全な狂乱状態に、陥ってしまっている。
「やめなさい!」
ナヅキが飛び出すと、アイに後ろから組み付いた。
「マモルくんは、あなたを助けにきたのよ!」
必死でナヅキは、アイを羽交い締めにする。
しかし。
「こざかしいっ!」
アイは背負い投げで、ナヅキを投げ飛ばした。
「きゃあ!?」
「あぶないっ!」
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すかさず横に飛ぶと、
ブゥン!
間近を、斧の風圧が通り過ぎた。
「ナヅキ、大丈夫か!」
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くそ!
どうしてこんなことに!?
「うああああああああっ!」
ブゥン! ブゥン!
アイは髪を振り乱しながら、立て続けに斧を振り回し続ける。
これでは、危なくて近づけない。
「どうにか、アイの斧を止めないと……?」
……斧?
「そうか! そういうことか!」
僕は一度、アイから大きく距離を取った。
意識を集中させ、アイから魔力の発信源を探る。
……間違いない!
「斧だ! あの斧に『狂戦士の呪い』がかけられている!」
「そういうこと……!」
ナヅキが納得したようにうなずいた。
「なら、僕のやることはひとつだな」
呪いを解き、アイを助ける。
『いにしえの勇者パーティー』の力ではなく。
僕自身の、『解呪』の力で。
……だが。
「この『狂戦士の呪い』は強力だ。生半可な解呪の技じゃ、太刀打ちできそうもない」
「でも、手はあるんでしょ?」
ナヅキに向かい、僕はうなずく。
「僕が持つ、最強の解呪の技を使ってみる」
「最強の……解呪の技?」
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