勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ

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16.狂乱

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 僕はナヅキを伴い、テレポートで『フューチャ村』に移動した。



「転移魔法を使うだけでも、規格外なのに。パーティー丸ごと、移動できちゃうのね……」



 ナヅキが驚いている。



「死神のワープでも、自分ひとり用なのに……」



「僕だって信じられないよ。自分みたいな人間が、転移魔法を使えるなんて、さ」



 僕は頭をかいた。



「イメージが思い浮かぶ場所なら。どこにでも、誰とでも行けるみたいだしね。おかげさまで、行動範囲が広がりそうだよ」



「本当に……すごいわ」



 ナヅキは感心しきりだった。



 ……しかし。


 それにしても。



「見る影もないな……」



 村の惨状を目にして、ため息が出そうになった。


 まさに、廃墟そのものだ。


 光景を眺めているだけで、気持ちが沈んでいく。



「マモルくん、大丈夫?」



 ナヅキが僕に、心配そうな顔を向ける。



「ああ、平気さ。気遣ってくれてありがとう」



 僕は、無理やり明るい顔を作った。


 ここで落ち込んでいても、何も始まらない。


 気をしっかり持っていこう。



 事前の情報通り、あたりには霧がただよっているが。



「この霧……不思議な思念を感じるな。自然現象じゃないよ」



「わかるの?」



「解呪師の感覚でね」



「さすがはマモルくん」



 ナヅキが微笑んだ。



「けど。魔力の発信源がわからないと、解呪は難しそうだな」



 僕は意識を集中させ、魔力の発信源を探ると。



「これは……!」



 僕は息をのんだ。



「魔力の発信源は、ファーザ叔父さんの家があったあたり……か」



 ファーザ叔父さんの家。


 すなわち、僕がお世話になっていた家。


 僕たちの、思い出の場所だ。



「……行ってみよう」



 ただし。



「周囲の探索をしながらだな。もしかしたら途中で、ユウリやアイと出会えるかもしれない」



「わかったわ」



 僕とナヅキは並び立ち、あたりを警戒しながら歩みを進めた。


 そして。


 探索開始から、それなりの時間が過ぎた頃。




「いらっしゃいませ、お客様」




 霧の奥から、声が響いた。



「誰っ!?」



 ナヅキが声をあげると。



「あいにくですが。ユウリお嬢さまは、お休み中です」



 前方から、ひとりの女の子が姿を現した。



「早急に、お引き取り願えませんか?」



 その姿を見た、僕の口からは。




「アイ……?」




 思わず、言葉がもれていた。



 フローラルホワイトの髪に、紫色の瞳。


 エプロンドレスタイプのメイド服。


 メチャクチャな美人に、なってはいるけれど。



 まちがいない!



「アイ! アイなんだな!」



 僕の中で、喜びが弾けた。



 手にした巨大な斧は、ずいぶん場違いだけど。


 昔とは違うおしとやかな口調に、少しだけ違和感はあるけれど。



 記憶の中の幼なじみ『アイ』の姿と、確かに重なった。



「アイ、僕だよ! マモル・フジタニだ! よかった! 本当に生きていたなんて――」



「気に入りませんね」



 僕の言葉は、冷ややかな声にさえぎられた。



「……え?」



 固まる僕に向かい、アイは口を開く。



「そのお名前は、わたくしのご主人様のものです。10年前に亡くなった、わたくしの愛するご主人様の……」



「ア、アイ……?」



 何だ?


 様子がおかしいぞ?



「敬愛するご主人様のお名前を、赤の他人が軽々しく口にする。そのような行為が、許されるとお思いですか? たとえ神が許しても、わたくしは絶対に許しません……!」



「ま、待て! 待ってくれ!」



 慌てて僕は叫んだ。



「違うんだ! 僕は死んでなんかいない! アイと同じだ! 生き延びて、修行して、それで――」



「問答無用!」



 アイは、手にした斧を構えると。



「マモルさまを汚した罪、このわたくしが裁きます!」



 いきなり僕に向かい、突っ込んできた。



「マモルくん、あぶない!」



 ナヅキの叫びと同時に。




 ブゥン!




「うわっ!?」



 目の前に飛んできた斧を、僕はギリギリでかわした。



「はああああああああっ!」



 すぐに、頭上から声が響く。


 目を向けるとそこには、天高くジャンプしたアイの姿があった。



「アース・ブレイク!」



 そのままアイは、勢いよく斧を振り下ろしてくる。



「くっ!」



 僕はバックステップで、大きく飛びのく。


 アイの斧は、目の前の地面に叩きつけられた。




 ドゴオオオオオオオオオオン!




 大地が震え、小さなクレーターができる。



「なんて破壊力だ……」



 僕は舌を巻いた。



 この威力はヤバい。


 あの意味不明な勇者・ダイトなんかとは、わけが違う。



 『いにしえの勇者パーティー』の力で、ステータス強化されてても。


 直撃すれば、マズいかもしれない。



「うああああああっ!」



 アイはすぐさま、僕に肉薄する。




 ブゥン! ブゥン!




 斧の嵐を、僕は右に左にステップを踏んでかわす。



「やめろ! やめるんだ、アイ!」



 僕は必死に訴えるが。



「黙りなさい! 黙れ! 黙れ黙れ黙れええええええ!」




 ブゥン! ブゥン! ブゥン!




 アイの猛攻は、さらに激しさを増していく。


 まるでバーサーカーだ。


 完全な狂乱状態に、陥ってしまっている。



「やめなさい!」



 ナヅキが飛び出すと、アイに後ろから組み付いた。



「マモルくんは、あなたを助けにきたのよ!」



 必死でナヅキは、アイを羽交い締めにする。


 しかし。



「こざかしいっ!」



 アイは背負い投げで、ナヅキを投げ飛ばした。



「きゃあ!?」



「あぶないっ!」



 僕は飛び出し、ナヅキを受け止める。


 すかさず横に飛ぶと、




 ブゥン!




 間近を、斧の風圧が通り過ぎた。



「ナヅキ、大丈夫か!」



「何とか……。でも、このままじゃマズいわ。彼女、完全に正気を失ってるわよ!」



 くそ!


 どうしてこんなことに!?



「うああああああああっ!」




 ブゥン! ブゥン!




 アイは髪を振り乱しながら、立て続けに斧を振り回し続ける。


 これでは、危なくて近づけない。



「どうにか、アイの斧を止めないと……?」



 ……斧?



「そうか! そういうことか!」



 僕は一度、アイから大きく距離を取った。


 意識を集中させ、アイから魔力の発信源を探る。



 ……間違いない!



「斧だ! あの斧に『狂戦士の呪い』がかけられている!」



「そういうこと……!」



 ナヅキが納得したようにうなずいた。



「なら、僕のやることはひとつだな」



 呪いを解き、アイを助ける。


 『いにしえの勇者パーティー』の力ではなく。


 僕自身の、『解呪』の力で。



 ……だが。



「この『狂戦士の呪い』は強力だ。生半可な解呪の技じゃ、太刀打ちできそうもない」



「でも、手はあるんでしょ?」



 ナヅキに向かい、僕はうなずく。



「僕が持つ、最強の解呪の技を使ってみる」



「最強の……解呪の技?」



「ああ。それは……」



 少しだけ。


 口にするのがためらわれたが。


 僕は大きく息を吸い、答える。



「『解呪のキス』、だよ」
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