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6.文化祭 ※女装注意
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「………情けない」
お化けも暗いのも嫌いなことを鷹橋にやっとうちあけると、鷹橋は「お詫び」とホットココアを陽登の両手に持たせてくれた。
またいつもの体育館裏の階段にすわって手を温めながら陽登は項垂れる。
「泣くほど苦手なら初めから言えばよかったのに」
陽登が黙り込むと鷹橋はその頭を撫でた。
「言い難かった?ごめんね」
陽登はされるがままいた。撫でられると気持ちが少し落ち着く。まだバクバクする心臓を押さえて目をつむると、さっき見たお化け屋敷の生首が瞼の裏に映り思い出されてドキドキしながら目を開けた。
「生首……夢に…みそう……」
お化け屋敷の中で生首とその後の鷹橋の手に驚きすぎてほんの少しだけ濡れてしまったズボンを大きめのセーターを引っ張って隠した。
(やっちゃった……)
その汚れが情けなさに拍車をかける。
「もしかしてちびった?」
引っ張ったセーターを指さして鷹橋が問う。
陽登が図星を突かれてうろたえていると、ふふと可笑しそうに千傘はわらった。
「怖くてちびったの?陽登って本当に面白いな」
陽登は馬鹿にされてると思って恥ずかしくて消えてしまいたくなった。
「トイレいって拭いておいで」
鷹橋がハンカチを差し出す。
陽登は羞恥におかしくなりそうになりながらハンカチを断って、逃げる口実ができたと小走りでトイレに向かった。
体育館の一番近くの外の人気ない薄暗いトイレは夕暮れ時は薄暗く、電気をつけてもバチバチと点滅していていかにも何か出そうな雰囲気を醸し出していた。よりによってこんな時に電気が切れかけにならなくたっていいじゃないかと腹を立て入り口で立ち止まる。
汚れた服をどうにかしたいし人がいないほうがありがたいが人がいないのが怖い。
(何ともない…こどもじゃないんだし…何ともない…)
入りたいのに足がうまく進まず入り口で数分もたもたとして、やっと意を決して足を踏み入れると
ガタッ
という音が誰もいないトイレに響いた。陽登が飛び上がって固まっていると一番奥の掃除用具の扉からまた
カラン…
と何かが落ちる音がする。頭が真っ白になり中に入ることも外に出ることもできずに、息を止めて様子をうかがっていると
ドタドタッ
と大きな音がして、今度はその掃除用具置の扉の隙間から茶と黒のぶち猫が悠々と何事もなかったかのように歩いて出てきた。
「……っは、」
猫だったことにほっとして、やっと呼吸を思い出して陽登は息を吐き出す。それでももう怖くてこれ以上中に入れず何もできずにトイレから出て適当にハンカチでズボンの少し湿っていた部分を拭いて、外の水道で手だけあらった。
怖さと情けなさで目が滲んできて、泣きたくなかったから顔を洗い、顔を拭くハンカチがないから制服の肘のあたりで適当に顔をぬぐった。
嫌なことが続いて陽登はもう精神的にいっぱいいっぱいだった。芋づる式に朝の女装も昼のお漏らしも子供も嫌な記憶ばかり連想して思い出してしまって、気持ちがぐらついて涙腺もバカになっているし、このまま鷹橋のもとにも教室にも戻らず帰ってしまいたくなる。
楽しい時間もあったし、「デート」といったからには楽しい気持ちと記憶で自分も鷹橋も終わらせたいのに、だめな自分ばかりが目に付いた。
鷹橋に何も言わず帰るわけには行かないとなんとかほおをたたいて鷹橋のもとにもどった。
「おかえり、大丈夫だった?」
陽登が小さく頷いて座ると鷹橋は距離を詰めて座り直してくる。
「文化祭のお化け屋敷があんだけだめだったら陽登は遊園地のは入れないな」
俺遊園地のお化け屋敷好きなんだよね。と鷹橋は話し続けた。少し拭いただけの汚れた服のまま近くに座られることが落ち着かなくてジリジリと離れると鷹橋は構わず距離を詰めてくる。
「ジェットコースターとかは?のれる?いつか行こうぜ」
自分が臭ったりしてるんじゃないかと不安になって陽登はずっと上の空だった。
「トイレ行って誰かみられたりしなかった?大丈夫?」
あまりに陽登が上の空なのがちびってしまったことを気にしてのことかと思って何気なく鷹橋は陽登のズボンをすこし触って確認した。
「さっきも思ったけど、ちびったって言ってもどこ濡れてんのかわかんないし全然大丈夫じゃん」
陽登はばっと立ち上がった。
「きたない」
今までさんざん漏らした後の処理等まで手伝ってもらっておいて今更かもしれないが、汚れた部分に触れられて鷹橋を汚してしまったと思った。
鷹橋は優しいから大丈夫と言っただけで本当は今陽登は酷く臭くて汚いかもしれない。今までも、そうだったのに黙って優しくしてくれていたのかもしれない。
自分がひどい異臭を放っているような錯覚にとらわれて陽登は動揺しながらやっと言葉を吐き出した。
「………ぁ、ぼ、ぼく、かえるっご、ごめんっ」
鷹橋の反応も見ず駆け出し教室に荷物を取りに行き、今日は片付けはないがまだHRがあると引き止めるクラスメイトも無視して走って教室を出た。
においを気にし始めると、自分の汗のにおいも髪の臭いも服も呼吸も、触ってつく手垢さえも、自分の全部が汚くて臭くておぞましいもののような気がしていてもたってもいられなかった。
後を追ってきた鷹橋と教室を出たところで鉢合わせ、不自然に踵を返して反対の階段を駆け下りて陽登は学校から逃げ出した。
お化けも暗いのも嫌いなことを鷹橋にやっとうちあけると、鷹橋は「お詫び」とホットココアを陽登の両手に持たせてくれた。
またいつもの体育館裏の階段にすわって手を温めながら陽登は項垂れる。
「泣くほど苦手なら初めから言えばよかったのに」
陽登が黙り込むと鷹橋はその頭を撫でた。
「言い難かった?ごめんね」
陽登はされるがままいた。撫でられると気持ちが少し落ち着く。まだバクバクする心臓を押さえて目をつむると、さっき見たお化け屋敷の生首が瞼の裏に映り思い出されてドキドキしながら目を開けた。
「生首……夢に…みそう……」
お化け屋敷の中で生首とその後の鷹橋の手に驚きすぎてほんの少しだけ濡れてしまったズボンを大きめのセーターを引っ張って隠した。
(やっちゃった……)
その汚れが情けなさに拍車をかける。
「もしかしてちびった?」
引っ張ったセーターを指さして鷹橋が問う。
陽登が図星を突かれてうろたえていると、ふふと可笑しそうに千傘はわらった。
「怖くてちびったの?陽登って本当に面白いな」
陽登は馬鹿にされてると思って恥ずかしくて消えてしまいたくなった。
「トイレいって拭いておいで」
鷹橋がハンカチを差し出す。
陽登は羞恥におかしくなりそうになりながらハンカチを断って、逃げる口実ができたと小走りでトイレに向かった。
体育館の一番近くの外の人気ない薄暗いトイレは夕暮れ時は薄暗く、電気をつけてもバチバチと点滅していていかにも何か出そうな雰囲気を醸し出していた。よりによってこんな時に電気が切れかけにならなくたっていいじゃないかと腹を立て入り口で立ち止まる。
汚れた服をどうにかしたいし人がいないほうがありがたいが人がいないのが怖い。
(何ともない…こどもじゃないんだし…何ともない…)
入りたいのに足がうまく進まず入り口で数分もたもたとして、やっと意を決して足を踏み入れると
ガタッ
という音が誰もいないトイレに響いた。陽登が飛び上がって固まっていると一番奥の掃除用具の扉からまた
カラン…
と何かが落ちる音がする。頭が真っ白になり中に入ることも外に出ることもできずに、息を止めて様子をうかがっていると
ドタドタッ
と大きな音がして、今度はその掃除用具置の扉の隙間から茶と黒のぶち猫が悠々と何事もなかったかのように歩いて出てきた。
「……っは、」
猫だったことにほっとして、やっと呼吸を思い出して陽登は息を吐き出す。それでももう怖くてこれ以上中に入れず何もできずにトイレから出て適当にハンカチでズボンの少し湿っていた部分を拭いて、外の水道で手だけあらった。
怖さと情けなさで目が滲んできて、泣きたくなかったから顔を洗い、顔を拭くハンカチがないから制服の肘のあたりで適当に顔をぬぐった。
嫌なことが続いて陽登はもう精神的にいっぱいいっぱいだった。芋づる式に朝の女装も昼のお漏らしも子供も嫌な記憶ばかり連想して思い出してしまって、気持ちがぐらついて涙腺もバカになっているし、このまま鷹橋のもとにも教室にも戻らず帰ってしまいたくなる。
楽しい時間もあったし、「デート」といったからには楽しい気持ちと記憶で自分も鷹橋も終わらせたいのに、だめな自分ばかりが目に付いた。
鷹橋に何も言わず帰るわけには行かないとなんとかほおをたたいて鷹橋のもとにもどった。
「おかえり、大丈夫だった?」
陽登が小さく頷いて座ると鷹橋は距離を詰めて座り直してくる。
「文化祭のお化け屋敷があんだけだめだったら陽登は遊園地のは入れないな」
俺遊園地のお化け屋敷好きなんだよね。と鷹橋は話し続けた。少し拭いただけの汚れた服のまま近くに座られることが落ち着かなくてジリジリと離れると鷹橋は構わず距離を詰めてくる。
「ジェットコースターとかは?のれる?いつか行こうぜ」
自分が臭ったりしてるんじゃないかと不安になって陽登はずっと上の空だった。
「トイレ行って誰かみられたりしなかった?大丈夫?」
あまりに陽登が上の空なのがちびってしまったことを気にしてのことかと思って何気なく鷹橋は陽登のズボンをすこし触って確認した。
「さっきも思ったけど、ちびったって言ってもどこ濡れてんのかわかんないし全然大丈夫じゃん」
陽登はばっと立ち上がった。
「きたない」
今までさんざん漏らした後の処理等まで手伝ってもらっておいて今更かもしれないが、汚れた部分に触れられて鷹橋を汚してしまったと思った。
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「………ぁ、ぼ、ぼく、かえるっご、ごめんっ」
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