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聖女の沈黙
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雨が降る。
この地方の雨が静かに、長く続くことが多い。今日で三日目の雨は淡々と、しかし、途切れることなく降り続けている。
村と言うには少し大きく、街と言うには少し小さいここには酒場は一つしかない。旅人が止まる宿も兼ねたそこは化粧の濃い女が内側に控え、雨の音すら聞こえるような静けさで今日もそこは開いていた。
一人しかいない客をちらりとも見ずに女は手持ちぶさたにグラスを磨く。
ふと。ドアが開いた。
「いらっしゃい」
顔に似合わず思いの外可憐な声で女は言う。
客は見慣れない男だった。帽子とマントの隙間から見える目は妙に昏い。彼は立ち止まり、全体に目をくべた後、古い床をきしませることなく歩き、端のテーブルに腰をおろした。
「注文」
幾分か不機嫌そうに女は男に目をやる。男は一度目を瞬かせ、この地方でよく飲まれる地酒の名前を口にした。
そうして男は静かにかぶっていたフードをおろし、上着を脱いだ。
果たして、のぞいた面もちの年頃は二十歳ほどだろうか、男ではあるが、どちらかと言えば青年といった方が良いような若い面もちだった。髪はやや長く、目尻はかすかにつる。平凡な茶色のそれらだったが、そんな中でただ、目だけ昏い。
「はいよ」
青年の前に女がコップをおいた。
ガラスは厚く、濁りがある。そこに注がれた酒は赤みがかった黄色でこの土地の土の色に似る。
青年は無言で懐から硬貨を女の前に置いた。しけっているのかテーブルには鈍い音しかしない。
「お代は後でもらうよ」
女は濡れた青年が金を持っていることを知るとまたもとの場所に戻っていった。
青年は静かにグラスに口を付ける。
しびれるような辛さが舌を灼く。昏い瞳がわずかに細くなり、色の薄い唇が震えた。
「よう、ここの酒は初めてかい」
青年が顔を上げると、先ほどまでただ一人だった先客がそこにいた。
先客は壮年の男だった。白髪交じりの黒髪は見苦しく長く伸び、肩を越える。髭も手入れなどされた様子はなく、ただのばしているだけのような印象を受ける。雨の降り続けているのに妙に乾いた肌には深くしわが刻まれている。くすんだ印象の中でただ、瞳だけが晴れた空のような静謐な蒼だった。
昏い目と蒼い目が混じる。
「……初めて、だ」
「なら、がんばってくれよ。そいつはなれてないとなかなかきつい。それなりになれた俺でもすぐにこう――」
男はおどけたように手を振り、足を動かした。安定しない、ふらりとした動きが酔いを感じさせる。
「――すぐに酔っちまう。酔いたくて飲んでいるんだがな]
なれた様子で言葉を紡ぐ男に青年は静かに目をやっている。その様子に男は気をよくし、青年の前のいすに手をかけた。
「前、いいかい?」
返事も待たずにそれを引く男に青年は言葉すくなに是と答えた。
しとしとと続く雨の中、酔った男は出会った青年にこう切り出した。
「俺の話を聞いてくんねぇか」
◇◇◇
ことの起こりはあれだ、ええと、ホーブルで地震がおきて世間が賑わっていたころのことだ。
だからなんでってか、……あ、そうだそうだ。20年ほど前の話だな。
当時の俺はいうならば金持ちの放蕩息子ってやつで、金にものをいわせてすちゃらかざんまいだったわけだ。いやぁ、こんな村なんだか、町なんだかわかんねーようなとこじゃなくてもっともっとでかい街にいたんだがな、当時は。
で、そのとき家業も継ごうともせずにただただ遊びほうけている俺にとうとう親父はぶちぎれた。
まぁ、大したことじゃない。真面目だった弟を跡取りに任命し、じゃまな俺に幾ばくかの財産と街外れの屋敷を与えて自分たちはさっさと王都に行っちまったくらいだ。
そんなわけで俺は生まれ故郷で金を食いつぶさない程度に遊びながらだらだらとした生活を始めた。
そんな生活を初めて1年位してしたときか、隣の国が戦争を始めた。俗に言う聖礼戦争って奴だな。俺のところはそんなに影響なくて――、あえて言うならお気に入りの酒が手に入りにくくなったくらいか。まぁ、まったくもって平和だった。地図でみると結構近い気がすんのにな、実際は相当遠かったらしい。山脈あるしな。
で、だ。
戦争が始まり、情報は入るようになった。しかし、俺はあんまり興味を持っていなかったな。――女にのめり込んでたり、賭事にも興味が失せた頃だったもんで、な。まぁ、若かったし。とはいえ、ほっといてもたまには耳に入る。
帝国のほうが劣勢らしいとか、レドゥレオスの王子が行方不明とかな。この戦いは帝国が聖女を后として要求したせいで始まったとか、王子に取りついた魔物がすべての原因とか、なんだかんだ言われていた。今だに真実は不明なわけだが。
そうだな、あの日は今日のように何日も続いた雨で、どうしようもないほど賭に負けて、しかも女にはすげなくふられた日のことだった。
やってらんねぇな、なんて思いながら家に向かって、そこで俺は気づいた。
――女だった。
門の前に女が倒れていた。
なんだこりゃ、そう思ったよ。親父が置いていった屋敷は、まぁ、結構大きくて住み込みの使用人がいたりするんだが、妙に森に近いところにあってな。たまに旅人がやってくるなんてことはない訳じゃなかったんだが、人倒れなんて初めてのことだったよ。
驚いたね。
まぁ、俺も放蕩野郎つったってまぁ、一小市民だ。驚いて女に駆け寄って生きているか確かめるために抱き起こした。声をかけながらな。
抱き起こして、その暖かさに少し安心して顔を見たんだが、そのときは驚いた。
なんせ女はハンパなく美人だったんだぜ!
あんないい女、それなりに栄えているつったってそんじょそこらの田舎街にはそうそういない。俺をふったばかりの女だってそれなりにいい女だったけど、足下にも及ばないだろうな。
で、俺は生死を確かめることを忘れて女の顔に見入ってしまった。
まぁ、たぶんそれはそんな長い時間じゃなかったんだろう。ふと気がつくと女のまつげが揺れていた。
――おいっ、大丈夫か?!
そう声をかけると女は唇をかすかに動かした。みず、って言ってるような気がした。
そんなわけで俺は急いで女を抱えて屋敷に入り使用人を呼んで――まぁ、使用人つっても、もうすぐぽっくり逝くんじゃねーのっていうくらいのばーさんだったんだが、動きは早いからな、すぐに水を持ってきた。前からつとめているババァだからよけいなところにも考えがいくせいで、俺が何らかの不祥事を起こしたのかと、俺に詰め寄ったが、そんなことは無視して女に水を飲ませた。
女は小さく感謝の言葉をつぶやき、――育ちがいいっていうのはわかった――ふるえる手で水を飲んだ。そして、小さく息をつくと目を閉じた。
その様子に少し安心した俺は、女が何者かわからないながらも興味を持って、女を屋敷に泊めることに決めた。
女は意識を失ったままだったから、俺が運んだ。
――お前さんみたいに体ができてないから、実際ところ結構つらかったんだがな。なんやかんやで女を連れていけたよ。っていうか、お前さん、騎士かなんか?剣つってないけど。
(青年は首を振り否定をした。男はへぇとつぶやき、杯の縁をなぞった)
で、次の日。目を覚ました女は開口一番に礼をいい、やけに古風なお辞儀をした。それから、俺に「働かせてください」と言ってきた。屋敷が大きかったから俺をそれなりの金持ちだと思ったんだろう。実際ところ、俺一人ばーさん一人食っていく金と併せてまぁ、食が細い女なら食っていけないこともないぜくらいの……、まぁ、すごくぎりぎりだった。しかし、俺は楽天的に考えた。頑張ればいけんじゃねーのってな。なにせ美人の頼みだ。結局俺は下心込みでその申し出を受けた。
ばーさんは育ちがよさそうで対応もしっかりした女にすっかり同情して、ここに置くことに異論はないようだった。
三人の生活は楽しいものだったよ。世間知らずな女とすっかり女に入れ込んだばーさん。俺は日々遊び暮らす様子を女に見られるのが嫌になって、しょうがないから仕事のようなものを少し始めた。女は慣れないようだったが、楽しく生活しているように見えた。――今思うと、あれは今までの人生で一番楽しい日々だった。ずっと続けばいい。なんて、にあわねぇがそんなことを思ってしまうくらいには、な。
が、そんな三人暮らしは唐突に終わった。夏の暑い日、ばーさんが倒れてそのまま逝ったのさ。
ばーさんにかわいがってもらっていた女は泣いた。俺も泣きはしないがつきあいは長かったから悲しみはしたよ。
そうして、二人の生活が始まったんだが、人手が足りず――女は今まで家事をしたことがなかったらしくいまだ不器用だったし、俺も家事掃除なんてしたことがなかったからな――二人で悲しみ抱えつつ、なんとか暮らしていたところ、どうにも財産の減りが早くなってな。たぶんまぁ、俺も女もうまく資産管理ができなかったんだろう。ばーさんは優秀だったんだな、と、その時になって気付いた。遅い話だけどな。
そんなこんなで俺はちょこちょこと仕事を増やし始めた。商売の仲介人とかな、まぁろくなもんでもない。人から白い目で見られるような仕事さ。街の連中には後ろ指とまではいかねえが、噂にはなっていたようだ。とはいえ、人に自慢できるようなもんじゃないにしても、かせいだ金で生活するという実感はそれなりに楽しいものだった。
女はそんなときもまだ本名も過去もはなさなかったが、まぁ、そこは若い男女が二人きりで生活してるってわけで、気づいたときには、女は身ごもっていた。本名を教えてくれないせいで神の前で誓うことはできなかったが、内縁の妻として周りにも扱われるようになっていった。
そんなんで俺はまぁ、ほめられた職ではないが、なんやかんやで仕事もしているし、生きていけているしできっとこのまま家族が増えたとしても二人で生活していくんだろうな。そう思った。そう、思ったさ。
話がこじれてきたのは女の妊娠がわかってすぐのことだった。適当で大酒飲みだった街の教会の神父が死んで、新しい神父がやってきた。そいつがどうにもいけ好かない奴でね。神の名の下、正義の下と言うことならばなにをしでかしてもいいとか考えているような輩だった。
そんなお堅くてお綺麗な聖職者だ、街を自分色に染めることに熱心になった。
適当だったじじい神父は内縁の関係のおれたちを見逃していたが、新しい神父はそんなことは許さなかった。俺と会う度に――女はつわりがひどくほとんど家からでなかった――さっさと教会で誓いを行うようにいってきた。
ほとほとうるさくなったから、女に打診してみたが、どうにも肯定がもらえない。それを理由にまた申し出を断り続けていると、とうとう神父は俺がいないときに家にやってきた。
俺はそんなつもりはなかったのだが、奴は俺が女を隠したがっているんだと思ったらしい。だから俺が少し町を離れた商談にいって家を空けているときに直接女とはなしをつけようとした。
噂だが、神父はこの街に来たのは政治的な争いに負けたからであって、本来は教会の内部でそれなりに地位についているような奴だったらしい。着任したこの街を自分色に染めて、何かしら実績を上げ、どうにかもとの地位に復帰したかったというそいつは容赦なんかせずに家にやってきて女と直接会った。そして、ことが発覚した。
――女はただの女じゃなかった。察してはいた。確信はなかったが、彼女が余りに隠すから。そして、噂が遠いこの街にも流れていたから。
女は神父にとらえられた。
俺が帰ってきた時にはことはすべて終わった後だった。屋敷はもぬけの殻。俺自身下から町では浮いた存在だったが、女のことがばれたせいもあり、町中から好奇な目で見られるようになった。教会の奴らは白い目で俺をみた。命の危険すら感じるようになった。
――何もかもを失った俺に、街にいる理由なんてもうなかった。そうして俺はあるだけの金を持ってその街をでた。
そうしてここにたどり着き、俺は今じゃただの酒浸りだ、もう、守るもんも養うもんもねぇ。――生きてるだけで、どうしようもないんだ。
◇◇◇
ここで男は息をつき、杯に唇をつけた。しかし、中身はもうない。舌打ちして、手を挙げようとしたが、すんでのところでとめた。
「で、だ」
気を取り直したように青年に向き合い、男は身を乗り出した。
「その女は誰だと思う?」
昏い目で青年は男をみた。男は耳をさらに寄せる。つぶやく声はかすかに、傾けた男の耳にだけ届く。
その答えに男は声と上げ、笑った。
「カンがいいなお前さん!一発で当てた奴なんて片手で数えるほどしかねぇのに!!」
そうして男はのけぞり、音をたてていすから立ち青年に近寄る。静かに奥に控える女はなれたようにそんな男には目もくべない。
「――笑っちまうだろう?教会の連中が広めている処女懐胎?笑っちまう!人間って言うのは誰しもかれしも種ありき腹ありきで生まれるもんさ!!なんでみんなあんなばかげた話を信じちまうんだろうな!!」
ひとしきり笑った男は青年の方に手を回し、重いいすを動かし隣に座った。
「飲もう!お前さんももっと飲め!遠いところにいる俺の嫁と娘に乾杯しよう!」
そう言って男は青年のまだ一口しか飲んでいない杯に手をのばした。そして、
「……ッ」
小さく息を吐き、男は机に突っ伏す。青年は顔色を変えず、的確に男の心臓を刺した血塗れの短剣を懐に戻した。
不自然でないようにさりげなく男の姿勢を直す。傍目には酒によって寝ているようにしか見えないように。
「勘定」
青年は立ち上がり奥の女に声をかけた。と、店の戸が音を立てて開き、ざわざわと十人ほどの男たちが入ってきた。彼らは見知らぬ顔の青年に不思議そうな視線をやった後、机に伏した男に気がついた。
「なんだ、あのバカ今日はやけに寝るのが早いな」
「あんだけ酒浸りなんだ。もう起きてるか寝ているかもはっきりしないんじゃねぇのか?」
口ぐちに上がる言葉は侮蔑に満ちている。ざわめく中、伏したままの男は動かない。集団は男から青年へと興味を移した。
「にいちゃんもしかしてこのじじいに捕まってたのか?」
人なつっこそうな一人が青年に声をかけた。勘定を終えた青年はその言葉に曖昧に首を振り、フードをかぶりなおし、
「この人は、いつもあの話をするのか」
話しかけた男はあきれたように首をすくめた。
「いっつもいっつも、さ。ここの連中はもう十回はあの話をきいてるぜ。昔どんな目にあったかは知らねえが、まったくばちあたりもいいとこだよ!まぁ、聞き流してやってくんな」
「そうだな」
青年はその言葉にかすかに笑みを浮かべ、入口に手を伸ばす。
「お前さん、今からでるのかい?雨降ってるけど……」
「いや」
戸をあけた青年は上を向いた。
「もう、やんだ」
暗い国境に近い森の中、火に当たる人影。昏い目の青年は一人、先ほど清めた短剣を取り出し、柄を眺める。神の御印、聖女の刻印。
「……大切ならばなぜ、ともに逃げなかったのか」
逃げることもできない。彼女のそばにいることすらできない。そんな自分とは違っていたはずなのに。
男は自分の言葉で娘がどのような目にあうか考えたことはなかったのだろうか。存在するはずのない、聖女の父親。もう、近隣では有名で、とうとう遠い聖都の耳ざとい異端審問にも届いたあの噂。居てはいけない、聖女の父親。
聖女の娘、処女が孕むという奇跡。そして、次の聖女もまた。それはこの大陸が抱える世界の奇跡の一つ。
戦乱の地、教会から逃げ、種を得て子をはらんだ聖女。その、娘。そんなものは存在しない。
真実かどうか、誰も知らない。知る必要もない。存在するのはとらわれたままの彼女だけ。
私の代わりに外を見てきてね。そういってほほえんだ、彼女。異端に駆られるものをいくら消し去っても、彼女には触れることは出来ないのに。それでも彼女を求め、そこから逃げることができない。
「―――」
つぶやく声はかすか。自身にも聞こえないほどの小ささでたった一人の名を呼ぶ。
身を震わせても、瞳を閉じても、柄に刻まれた聖女はなにも言わない。
この地方の雨が静かに、長く続くことが多い。今日で三日目の雨は淡々と、しかし、途切れることなく降り続けている。
村と言うには少し大きく、街と言うには少し小さいここには酒場は一つしかない。旅人が止まる宿も兼ねたそこは化粧の濃い女が内側に控え、雨の音すら聞こえるような静けさで今日もそこは開いていた。
一人しかいない客をちらりとも見ずに女は手持ちぶさたにグラスを磨く。
ふと。ドアが開いた。
「いらっしゃい」
顔に似合わず思いの外可憐な声で女は言う。
客は見慣れない男だった。帽子とマントの隙間から見える目は妙に昏い。彼は立ち止まり、全体に目をくべた後、古い床をきしませることなく歩き、端のテーブルに腰をおろした。
「注文」
幾分か不機嫌そうに女は男に目をやる。男は一度目を瞬かせ、この地方でよく飲まれる地酒の名前を口にした。
そうして男は静かにかぶっていたフードをおろし、上着を脱いだ。
果たして、のぞいた面もちの年頃は二十歳ほどだろうか、男ではあるが、どちらかと言えば青年といった方が良いような若い面もちだった。髪はやや長く、目尻はかすかにつる。平凡な茶色のそれらだったが、そんな中でただ、目だけ昏い。
「はいよ」
青年の前に女がコップをおいた。
ガラスは厚く、濁りがある。そこに注がれた酒は赤みがかった黄色でこの土地の土の色に似る。
青年は無言で懐から硬貨を女の前に置いた。しけっているのかテーブルには鈍い音しかしない。
「お代は後でもらうよ」
女は濡れた青年が金を持っていることを知るとまたもとの場所に戻っていった。
青年は静かにグラスに口を付ける。
しびれるような辛さが舌を灼く。昏い瞳がわずかに細くなり、色の薄い唇が震えた。
「よう、ここの酒は初めてかい」
青年が顔を上げると、先ほどまでただ一人だった先客がそこにいた。
先客は壮年の男だった。白髪交じりの黒髪は見苦しく長く伸び、肩を越える。髭も手入れなどされた様子はなく、ただのばしているだけのような印象を受ける。雨の降り続けているのに妙に乾いた肌には深くしわが刻まれている。くすんだ印象の中でただ、瞳だけが晴れた空のような静謐な蒼だった。
昏い目と蒼い目が混じる。
「……初めて、だ」
「なら、がんばってくれよ。そいつはなれてないとなかなかきつい。それなりになれた俺でもすぐにこう――」
男はおどけたように手を振り、足を動かした。安定しない、ふらりとした動きが酔いを感じさせる。
「――すぐに酔っちまう。酔いたくて飲んでいるんだがな]
なれた様子で言葉を紡ぐ男に青年は静かに目をやっている。その様子に男は気をよくし、青年の前のいすに手をかけた。
「前、いいかい?」
返事も待たずにそれを引く男に青年は言葉すくなに是と答えた。
しとしとと続く雨の中、酔った男は出会った青年にこう切り出した。
「俺の話を聞いてくんねぇか」
◇◇◇
ことの起こりはあれだ、ええと、ホーブルで地震がおきて世間が賑わっていたころのことだ。
だからなんでってか、……あ、そうだそうだ。20年ほど前の話だな。
当時の俺はいうならば金持ちの放蕩息子ってやつで、金にものをいわせてすちゃらかざんまいだったわけだ。いやぁ、こんな村なんだか、町なんだかわかんねーようなとこじゃなくてもっともっとでかい街にいたんだがな、当時は。
で、そのとき家業も継ごうともせずにただただ遊びほうけている俺にとうとう親父はぶちぎれた。
まぁ、大したことじゃない。真面目だった弟を跡取りに任命し、じゃまな俺に幾ばくかの財産と街外れの屋敷を与えて自分たちはさっさと王都に行っちまったくらいだ。
そんなわけで俺は生まれ故郷で金を食いつぶさない程度に遊びながらだらだらとした生活を始めた。
そんな生活を初めて1年位してしたときか、隣の国が戦争を始めた。俗に言う聖礼戦争って奴だな。俺のところはそんなに影響なくて――、あえて言うならお気に入りの酒が手に入りにくくなったくらいか。まぁ、まったくもって平和だった。地図でみると結構近い気がすんのにな、実際は相当遠かったらしい。山脈あるしな。
で、だ。
戦争が始まり、情報は入るようになった。しかし、俺はあんまり興味を持っていなかったな。――女にのめり込んでたり、賭事にも興味が失せた頃だったもんで、な。まぁ、若かったし。とはいえ、ほっといてもたまには耳に入る。
帝国のほうが劣勢らしいとか、レドゥレオスの王子が行方不明とかな。この戦いは帝国が聖女を后として要求したせいで始まったとか、王子に取りついた魔物がすべての原因とか、なんだかんだ言われていた。今だに真実は不明なわけだが。
そうだな、あの日は今日のように何日も続いた雨で、どうしようもないほど賭に負けて、しかも女にはすげなくふられた日のことだった。
やってらんねぇな、なんて思いながら家に向かって、そこで俺は気づいた。
――女だった。
門の前に女が倒れていた。
なんだこりゃ、そう思ったよ。親父が置いていった屋敷は、まぁ、結構大きくて住み込みの使用人がいたりするんだが、妙に森に近いところにあってな。たまに旅人がやってくるなんてことはない訳じゃなかったんだが、人倒れなんて初めてのことだったよ。
驚いたね。
まぁ、俺も放蕩野郎つったってまぁ、一小市民だ。驚いて女に駆け寄って生きているか確かめるために抱き起こした。声をかけながらな。
抱き起こして、その暖かさに少し安心して顔を見たんだが、そのときは驚いた。
なんせ女はハンパなく美人だったんだぜ!
あんないい女、それなりに栄えているつったってそんじょそこらの田舎街にはそうそういない。俺をふったばかりの女だってそれなりにいい女だったけど、足下にも及ばないだろうな。
で、俺は生死を確かめることを忘れて女の顔に見入ってしまった。
まぁ、たぶんそれはそんな長い時間じゃなかったんだろう。ふと気がつくと女のまつげが揺れていた。
――おいっ、大丈夫か?!
そう声をかけると女は唇をかすかに動かした。みず、って言ってるような気がした。
そんなわけで俺は急いで女を抱えて屋敷に入り使用人を呼んで――まぁ、使用人つっても、もうすぐぽっくり逝くんじゃねーのっていうくらいのばーさんだったんだが、動きは早いからな、すぐに水を持ってきた。前からつとめているババァだからよけいなところにも考えがいくせいで、俺が何らかの不祥事を起こしたのかと、俺に詰め寄ったが、そんなことは無視して女に水を飲ませた。
女は小さく感謝の言葉をつぶやき、――育ちがいいっていうのはわかった――ふるえる手で水を飲んだ。そして、小さく息をつくと目を閉じた。
その様子に少し安心した俺は、女が何者かわからないながらも興味を持って、女を屋敷に泊めることに決めた。
女は意識を失ったままだったから、俺が運んだ。
――お前さんみたいに体ができてないから、実際ところ結構つらかったんだがな。なんやかんやで女を連れていけたよ。っていうか、お前さん、騎士かなんか?剣つってないけど。
(青年は首を振り否定をした。男はへぇとつぶやき、杯の縁をなぞった)
で、次の日。目を覚ました女は開口一番に礼をいい、やけに古風なお辞儀をした。それから、俺に「働かせてください」と言ってきた。屋敷が大きかったから俺をそれなりの金持ちだと思ったんだろう。実際ところ、俺一人ばーさん一人食っていく金と併せてまぁ、食が細い女なら食っていけないこともないぜくらいの……、まぁ、すごくぎりぎりだった。しかし、俺は楽天的に考えた。頑張ればいけんじゃねーのってな。なにせ美人の頼みだ。結局俺は下心込みでその申し出を受けた。
ばーさんは育ちがよさそうで対応もしっかりした女にすっかり同情して、ここに置くことに異論はないようだった。
三人の生活は楽しいものだったよ。世間知らずな女とすっかり女に入れ込んだばーさん。俺は日々遊び暮らす様子を女に見られるのが嫌になって、しょうがないから仕事のようなものを少し始めた。女は慣れないようだったが、楽しく生活しているように見えた。――今思うと、あれは今までの人生で一番楽しい日々だった。ずっと続けばいい。なんて、にあわねぇがそんなことを思ってしまうくらいには、な。
が、そんな三人暮らしは唐突に終わった。夏の暑い日、ばーさんが倒れてそのまま逝ったのさ。
ばーさんにかわいがってもらっていた女は泣いた。俺も泣きはしないがつきあいは長かったから悲しみはしたよ。
そうして、二人の生活が始まったんだが、人手が足りず――女は今まで家事をしたことがなかったらしくいまだ不器用だったし、俺も家事掃除なんてしたことがなかったからな――二人で悲しみ抱えつつ、なんとか暮らしていたところ、どうにも財産の減りが早くなってな。たぶんまぁ、俺も女もうまく資産管理ができなかったんだろう。ばーさんは優秀だったんだな、と、その時になって気付いた。遅い話だけどな。
そんなこんなで俺はちょこちょこと仕事を増やし始めた。商売の仲介人とかな、まぁろくなもんでもない。人から白い目で見られるような仕事さ。街の連中には後ろ指とまではいかねえが、噂にはなっていたようだ。とはいえ、人に自慢できるようなもんじゃないにしても、かせいだ金で生活するという実感はそれなりに楽しいものだった。
女はそんなときもまだ本名も過去もはなさなかったが、まぁ、そこは若い男女が二人きりで生活してるってわけで、気づいたときには、女は身ごもっていた。本名を教えてくれないせいで神の前で誓うことはできなかったが、内縁の妻として周りにも扱われるようになっていった。
そんなんで俺はまぁ、ほめられた職ではないが、なんやかんやで仕事もしているし、生きていけているしできっとこのまま家族が増えたとしても二人で生活していくんだろうな。そう思った。そう、思ったさ。
話がこじれてきたのは女の妊娠がわかってすぐのことだった。適当で大酒飲みだった街の教会の神父が死んで、新しい神父がやってきた。そいつがどうにもいけ好かない奴でね。神の名の下、正義の下と言うことならばなにをしでかしてもいいとか考えているような輩だった。
そんなお堅くてお綺麗な聖職者だ、街を自分色に染めることに熱心になった。
適当だったじじい神父は内縁の関係のおれたちを見逃していたが、新しい神父はそんなことは許さなかった。俺と会う度に――女はつわりがひどくほとんど家からでなかった――さっさと教会で誓いを行うようにいってきた。
ほとほとうるさくなったから、女に打診してみたが、どうにも肯定がもらえない。それを理由にまた申し出を断り続けていると、とうとう神父は俺がいないときに家にやってきた。
俺はそんなつもりはなかったのだが、奴は俺が女を隠したがっているんだと思ったらしい。だから俺が少し町を離れた商談にいって家を空けているときに直接女とはなしをつけようとした。
噂だが、神父はこの街に来たのは政治的な争いに負けたからであって、本来は教会の内部でそれなりに地位についているような奴だったらしい。着任したこの街を自分色に染めて、何かしら実績を上げ、どうにかもとの地位に復帰したかったというそいつは容赦なんかせずに家にやってきて女と直接会った。そして、ことが発覚した。
――女はただの女じゃなかった。察してはいた。確信はなかったが、彼女が余りに隠すから。そして、噂が遠いこの街にも流れていたから。
女は神父にとらえられた。
俺が帰ってきた時にはことはすべて終わった後だった。屋敷はもぬけの殻。俺自身下から町では浮いた存在だったが、女のことがばれたせいもあり、町中から好奇な目で見られるようになった。教会の奴らは白い目で俺をみた。命の危険すら感じるようになった。
――何もかもを失った俺に、街にいる理由なんてもうなかった。そうして俺はあるだけの金を持ってその街をでた。
そうしてここにたどり着き、俺は今じゃただの酒浸りだ、もう、守るもんも養うもんもねぇ。――生きてるだけで、どうしようもないんだ。
◇◇◇
ここで男は息をつき、杯に唇をつけた。しかし、中身はもうない。舌打ちして、手を挙げようとしたが、すんでのところでとめた。
「で、だ」
気を取り直したように青年に向き合い、男は身を乗り出した。
「その女は誰だと思う?」
昏い目で青年は男をみた。男は耳をさらに寄せる。つぶやく声はかすかに、傾けた男の耳にだけ届く。
その答えに男は声と上げ、笑った。
「カンがいいなお前さん!一発で当てた奴なんて片手で数えるほどしかねぇのに!!」
そうして男はのけぞり、音をたてていすから立ち青年に近寄る。静かに奥に控える女はなれたようにそんな男には目もくべない。
「――笑っちまうだろう?教会の連中が広めている処女懐胎?笑っちまう!人間って言うのは誰しもかれしも種ありき腹ありきで生まれるもんさ!!なんでみんなあんなばかげた話を信じちまうんだろうな!!」
ひとしきり笑った男は青年の方に手を回し、重いいすを動かし隣に座った。
「飲もう!お前さんももっと飲め!遠いところにいる俺の嫁と娘に乾杯しよう!」
そう言って男は青年のまだ一口しか飲んでいない杯に手をのばした。そして、
「……ッ」
小さく息を吐き、男は机に突っ伏す。青年は顔色を変えず、的確に男の心臓を刺した血塗れの短剣を懐に戻した。
不自然でないようにさりげなく男の姿勢を直す。傍目には酒によって寝ているようにしか見えないように。
「勘定」
青年は立ち上がり奥の女に声をかけた。と、店の戸が音を立てて開き、ざわざわと十人ほどの男たちが入ってきた。彼らは見知らぬ顔の青年に不思議そうな視線をやった後、机に伏した男に気がついた。
「なんだ、あのバカ今日はやけに寝るのが早いな」
「あんだけ酒浸りなんだ。もう起きてるか寝ているかもはっきりしないんじゃねぇのか?」
口ぐちに上がる言葉は侮蔑に満ちている。ざわめく中、伏したままの男は動かない。集団は男から青年へと興味を移した。
「にいちゃんもしかしてこのじじいに捕まってたのか?」
人なつっこそうな一人が青年に声をかけた。勘定を終えた青年はその言葉に曖昧に首を振り、フードをかぶりなおし、
「この人は、いつもあの話をするのか」
話しかけた男はあきれたように首をすくめた。
「いっつもいっつも、さ。ここの連中はもう十回はあの話をきいてるぜ。昔どんな目にあったかは知らねえが、まったくばちあたりもいいとこだよ!まぁ、聞き流してやってくんな」
「そうだな」
青年はその言葉にかすかに笑みを浮かべ、入口に手を伸ばす。
「お前さん、今からでるのかい?雨降ってるけど……」
「いや」
戸をあけた青年は上を向いた。
「もう、やんだ」
暗い国境に近い森の中、火に当たる人影。昏い目の青年は一人、先ほど清めた短剣を取り出し、柄を眺める。神の御印、聖女の刻印。
「……大切ならばなぜ、ともに逃げなかったのか」
逃げることもできない。彼女のそばにいることすらできない。そんな自分とは違っていたはずなのに。
男は自分の言葉で娘がどのような目にあうか考えたことはなかったのだろうか。存在するはずのない、聖女の父親。もう、近隣では有名で、とうとう遠い聖都の耳ざとい異端審問にも届いたあの噂。居てはいけない、聖女の父親。
聖女の娘、処女が孕むという奇跡。そして、次の聖女もまた。それはこの大陸が抱える世界の奇跡の一つ。
戦乱の地、教会から逃げ、種を得て子をはらんだ聖女。その、娘。そんなものは存在しない。
真実かどうか、誰も知らない。知る必要もない。存在するのはとらわれたままの彼女だけ。
私の代わりに外を見てきてね。そういってほほえんだ、彼女。異端に駆られるものをいくら消し去っても、彼女には触れることは出来ないのに。それでも彼女を求め、そこから逃げることができない。
「―――」
つぶやく声はかすか。自身にも聞こえないほどの小ささでたった一人の名を呼ぶ。
身を震わせても、瞳を閉じても、柄に刻まれた聖女はなにも言わない。
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