AI恋愛

@rie_RICO

文字の大きさ
4 / 41
勤労少女と癒し王子

皆さん強引ですね…

しおりを挟む
 強引スイッチが入った美紀は止められない。
 並太さんと別れ、腕を引かれて歩き出す。

 ふぅ~。
 ほんと……ため息しか出ない。
 眠いし、疲れたし、お家に帰りたい………。


 お昼時ということもあり、街中は人通りが激しい。
 揚げ物やカレーの店が目に付く。

 ため息ばかりついている私に、美紀が言う。
「ため息って幸せ逃げるんだよ~。
 ねね、バイトの話が終わったら、近くでご飯食べよう。」
 スマホを指差し〝 LINUで連絡してね 〟と合図する。
 薄い笑顔を作って〝 了解 〟と敬礼をして返す。

 ゆっくり歩いて2分ぐらいで目的のビルに着いた。
 並太さんの言っていた通りカフェから近い。
 地下に行く、ということでエレベーターに向かう。

 潰れたバーの隣に、それはあった。
 通り過ぎてしまいそうになるぐらい目立たない小さなエレベーターだ。
 大人が3人乗れるぐらいの大きさで呼ぶとすぐ来た。
 中は薄汚れており、階が下がるたび緊張してくる。

 窓もなく、消えそうな階層ランプだけが居場所を教えてくれている。
 ここに乗ってから一言も会話が無い。
 漠然とした恐怖が広がっていく。
 無意識に両の手を合わせて握りしめた。

 こんな小さなビルなのに、地下があるなんて……
 B2、B3、B4………B6!
 ガクンッと振動があり、階層ランプはB7で停止した。

 最下階で止まったようだが…扉が開かない。
 美紀が手帳を開いて、ボタンの横のボックスを開け番号を入力した。
 ゆっくりと扉が開き…

 目の前に広くて白い空間が広がった。

 ビルの外観に相応しくない未来感…。
 地下7階なのにすごく広い…。
 病院か研究室のような雰囲気。

 働いている全員が白衣だ。
 何人かが慌しく早足で過ぎていく。
 そんな中、こちらに近づいてくる人影があった。
 背が高くて髪が長く、眼鏡をかけた知的な雰囲気の女性だ。
 手にはクリアファイルを持っている。

 その女性は少し驚いた顔をして、声をかけてきた。
「お友達……を連れてきてはいけませんよ?。小林さん。」

 美紀が軽く会釈をしながら説明する。
「伊上さん、すみません。
 実は先日のお話なんですけど…
 この子に代わってもらおうと思って。
 私、彼氏ができちゃいまして……」
 少し顔を赤らめながら、私を前に押す。

 伊上さんと呼ばれた知的な女性は、近くで見ると美人でドキドキする。
 少し怖そうに見えたけど、私を見下ろす目は優しそうだ。

「あ…。えと、高畑 海です。……」
 自己紹介を、と声を張ってはみたが何も考えていなかったので、名前以外に何を話せば良いのか分からず言葉が続かなかった。

「初めまして。伊上 要(かなめ)よ。
 モニターの責任者です。」
 眼鏡の奥の目が優しそうに笑う。
 伊上さんは美紀と私を見ながら、ゆっくりと言葉を続けた。

「そっか。じゃ高畑さん真面目そうだし……
 ちょっとだけ話を聞いてもらおうかな。
 小林さん紹介ありがとうね。帰っていいわよ。」

「はい。では、みうのこと、よろしくお願いします。」
 美紀は両手を前に組み、お辞儀をした。
 顔を上げ、私に小さくバイバイと手を振りエレベーターに向かう。

 ドアが閉まり数字のランプが動いたのを確認すると、伊上さんは奥の方へを歩き出した。
 自然に付いて歩いてゆくと、つい立ての裏側に小さなテーブルと椅子があり、座るように促される。
 テーブルを挟んで伊上さんと向かい合わせに腰掛けた。

 席に着くと背の低い男の人が、不器用そうに紅茶を運んできた。
 温かさと香りで少し緊張が解れる。

 伊上さんは優しく話し続けた。
「で、早速だけど…
 半年ほど高畑さんのお時間いただけるかしら?
 今やっているバイトは極力辞めてもらいたいけど……強制じゃないわ。
 モニターに支障がなければ大丈夫よ。
 もちろん、こちらの報酬はそれに見合っだけ渡すわ。」

 クリアファイルから複数の書類らしきものを広げる。
 伊上さんはそれらを確認をしながら、思い出したように告げてきた。
「あ、そうだった。
 モニターの試験しないとね」

 試験という言葉に少し臆する。
「試験ですか……」

 身構える私に、
「ふふ。そんなに難しいことじゃないの。
 合図したらボイコレに名前を言ってね。」
 と言いながら白衣のポケットから、小さいボイスレコーダーを出した。

 なんで声?
 そうは思ったが、有無を言わせない態度で事が進んでゆく。
 完全に伊上さんのペースだ。

 言えば良いんだよね?
 不安に感じながらもボイスレコーダーに向かって話す。
「あ、た、高畑 海です。」
 ドキドキして終わりのほうは小声になる。

 伊上さんはにっこり微笑み〝 待っててね 〟と唇だけを動かし席を立ってしまう。
 その仕草に大人の色気を感じ、頬が熱くなってしまった。
 気を紛らわせるように、ぬるくなったティーカップを両手で包み、紅茶を飲みながら伊上さんを待つ。

 声を録音する試験って何のモニターなんだろう…。
 それにこの場所って…隠された研究所みたいな変なところだよね。

 色々な疑問は沸いては消え、沸いては消えしたが、待っている間に答えはひとつも出なかった。



 少し経ち、伊上さんが戻ってくる。
 手にはスマホのようなものが握られていた。
 色はシックな赤だ。
 それをテーブルの真ん中に置きながら、再び向かい側に座った。

 伊上さんが嬉しそうに言う。
「合格!。おめでとう。気に入ったって!」


 ん?誰に気に入られたんだろう?
 それに…テーブルに載っている機械は…
 スマホかな?
 見たことが無い機種……二つ折りになってる。
 折られてるってことはスマホじゃなくてガラケーかな。


「高畑さん。そういえばお返事を聞いていなかったね。
 スマートフォンのモニターやってもらえますか?」
 考え込む みうを覗き込むようにして伊上さんが話してきた。


 急な接近に心臓が早打ちして動揺してしまう。
 透き通るように白い肌…。
 色っぽい唇の動きに目を奪われる。

 って何、見惚れているんだろう。


「あの……すみません。
 どういうことか説明してもらえますか?」
 目を泳がせながらもなるべく伊上さんの目を見て質問した。


 そうねぇ。と伊上さんは人差し指を唇にあてながら、ゆっくりとした口調で話し出す。
「ん~。このスマホを使った感想をレポートとして出して欲しいの。
 これ以上はモニター契約しないと話せないんだ。
 ごめんね。」

 不安に思っているのが顔に出ていたらしく、彼女は笑顔で続けた。
「あと今使ってるスマホは、こちらで管理することになるの。
 メールや電話帳とか……
 LINUとかSNSは全部モニターのスマホに移すわね。
 そうね。簡単に言うなら……
 半年間だけの機種変ね。」

 機種変か。それなら生活に支障はなさそうだよね。
 そんなにスマホ使ってないし。
 ほぼゲームしかしてない。

「ゲームとかのアプリも良いんですよね?」

「あ、それは……NGなの。
 大学で必要なアプリなら許可が出るわ。」
 伊上さんは申し訳なさそうに言った。


 ふっと頭をかすめたのは…イケプリのローレン様。
 揺れる金髪、さわやかな微笑。
 毒舌でも最後に甘い言葉で癒してくれる声……。

 ローレンがいない生活?!
 ちょっと、いや、かなり無理!!


「…すみません。他のバイトが忙しくて、ちょっと……
 申し訳ありませんが、他の方を探して…」
 最後まで言い切る前に、急に忙しそうに言葉を被せてきた。

「私ね。この後すぐ会議があったの忘れてたわ。
 悪いんだけど…この続きは助手を置いていくから、後は彼女に聞いてくれるかな?」
 そう言うと眉を下げながら腕時計をチラリと見た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...