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@rie_RICO

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勤労少女と癒し王子

癒し王子

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〝 ガタンゴトン  ガタンゴトン 〟

 揺られて頭痛が加速し始めてる。
 電車って、なんでこんなに揺れるんだろう。

 早く帰りたい。
 その一心で、スマホを受け取ってから電車に飛び乗った。
 幸い家まではそう遠くない。
 太陽は高く昇り、少し電車の中は少し暑い。

〝 ぐぅぅ…… 〟
 お腹のむしが大合唱。
 瞬時に耳まで真っ赤に染まる。
 乗客が少なくて良かったと、赤い顔を伏せた…。


 お昼…食べ損ねちゃったんだっけ。
 コンビニに寄ってパンでも買って帰ろう。
 あっ! 美紀と約束してたの忘れてた!


 カバンから新しいスマホを出して開く。

「 っ!! えぇっ!」

 目に入った情報があまりにも衝撃で、心の声が漏れた。
 慌てて左手でクチを押さえる。
 何人かが、ちらりとこちらを見たが皆すぐに視線を戻す。

 ドキドキしながら、もう一度スマホを覗く。
 2つ折のスマホは左右に画面があるタイプ。
 右側には見慣れたアプリのアイコンが並んでいるのだけど…

 左側の画面の中央で、男の人が手を振っている。
 全身が表示されていたが、自然に顔へと表示がズームされ今は上半身が見えていた。
    白のシャツに黒(革)のボトムスというシンプルな服装で…
 少し色白、細身だが肩幅が広く、髪は黒のロングで腰よりすこし上あたりだった。
 前髪も少し長めで自然に分けてあり後ろ髪はゆるく後ろに1つで束ねてある。
 目は切れ長で瞳は黒。

 自分より少し大人に見える。

 すごい…すごすぎる。何て綺麗なの……
 あ、男の人だからカッコイイになるのか

 じっと見惚れていたら彼が視線をこちらに向けてきた。 
 滑らかに瞬きをし、口角を上げにっこりと笑うと…文字が浮き出る。

 《何するの? LINU?》
 スマホの中の男の人は、人差し指で何かを押す仕草をした。
 隣の画面にLINUが開く。

 あ、2画面は、こういうこと!
 左側にナビアプリ(男の人)が出て、右で操作するんだ!

 すごいなぁ。と感心しつつ美紀にスタンプを押す。
『予定変更★帰る。ごめんネ』っと、これで良し。

 LINUを終え、改めてスマホの彼を見つめると欠伸をしていた。
 息をしている風に肩も揺れるし、仕草が1つ1つ自然だ。

 普通はこういうアバターってパターンがあって、ずっと見ていると同じ動作を繰り返すんだけど…
 繰り返すどころか次々と違う表情や仕草をしている。
 
 ローレンはアニメ画を立体に見えるよう加工してた。
 でも、これは違う。
 この男の人は生きているみたい。
 すごい不思議。

 黒くて長い髪がサラサラ揺れて柔らかそう。
 立体2Dという次元を超えてリアルすぎる。


 なるほど。モニターってこのナビアプリのことだったんだ。
 確かにこれなら流行りそう。
 うっかりSNSで流したら、他の会社に技術を盗まれてしまうよね…


 ふと、この笑顔が記憶のどこかに引っかかった。
 この口角で笑う人を知っている気がする。
 どこかで…。

 う~ん。……誰かに似ているのかな。
 バイト先? 大学じゃないよね、かなり大人だもの。
 先生は…いるわけないか。
 イケメンだから、芸能人に似せて作ったのかな。

 スマホに夢中になっていると〝 彼 〟から画面上にメッセージが現れた。

《もうすぐ駅だよ》
 ハッとして、顔を上げると見慣れた風景が広がっている。
 電車が減速しており、ホームがゆっくりと窓の外を流れていく。
 今、まさに停止するところだ。

 急いでスマホをポケットに入れて電車を降りた。
 改札を通り、慣れた道を徒歩で帰る。
 途中コンビニで食料を調達しつつ、両手に荷物を持ってアパートに戻る。


 自室に入りホッとし、ため息がひとつ出た。


 部屋に入り荷物を整理し、頭痛薬と缶コーヒーを用意して飲み干す。
 甘さとほろ苦さが胃と脳に染みた。
 まだちょっとズキズキする…
 薬が効くまで少し大人しくしていよう。

「ふぅー」
 ベットに倒れこみ柔らかい感触と弾力に脱力した。
 少ししてポケットをまさぐり、スマホを取り出して眺める。

 開くとスマホの中の〝 彼 〟がメッセージしてきた。
《美紀からLINUだよ》

 見つめていると先ほどのように〝 彼 〟が指で操作してくれる。
 流れるようにLINUが開き、美紀のページが開く。

『ドタキャン!?。みうのくせに(苦笑)。了解。』

 わっ。美紀ごめんね。
 心の中で謝りながらスタンプする。

 用事が終わったLINUを閉じて、再びスマホを観察する。

 すごい便利。このスマホ使いやすい…。
 それに、やっぱり〝 彼 〟がいいな。
 笑顔が素敵だし、すっごい癒される……

 あ。そうだ。
 きーちゃんに〝 彼 〟の名前を…
 設定してって…言われてた…ん……だ……
 …何……に……しよ………
 
 重力に引かれるように瞼が下がる。
 猛烈な眠気が襲ってきた。
 コーヒーの糖分で空腹感が少し和らいでいる。
 布団の柔らかさに身体を沈め、温かさに包まれていく。
 『疲れと薬と寝不足』の三重奏で落ちるように眠った。


 しばらくして…
 寝落ちした みうが寝返りを打ち、手からスマホが滑り落ちる。
 それは開いたまま、ベットの上に投げられた。
 反射した画面は みうの顔を映す。

 すぅすぅと規則正しい寝息が部屋を満たしてゆく。
 コチコチ…と壁時計の音が大きく反響している。
 窓から見える陽は、すっかり落ちはじめていた。

 スマホの中の〝 彼 〟は、眠る みうの横顔を愛おしそうに見つめていた。
 しばらくは寝息を聞いていたようだが、ふと寂しそうに視線を揺らす。

 スマホに文字が現れ…
《みう…やっと逢えた……》

 それは淡く溶けるように消えてゆき、

〝 彼 〟は儚い笑顔で、スマホをスリープモードにした。
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