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第二章 少女失踪事件
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「あ、そうだ」
「なんだ」
律儀に返事をしてくれる姫島屋先生は、本当に優しい。
「特段面白いとか、楽しいとかいう話じゃないんですけど」
「予防線はいらん。なんだ?」
「うちの生徒がひとり、行方不明なんです」
ぴく、と姫島屋先生の動きが止まる。ゆっくりと振り向いた先生と視線を合わせたあと、軽く肩をすくめてみせた。
「詳しいことはわからないんです。保護者が捜索願を出したみたいで。状況は家出っぽいんですけど。……この村って平和そのものだから、際立っちゃいますね。そういう事件が」
「平和か」
「違うんですか? 長い間、事件も事故もないって聞いてますよ」
「田舎は長閑でゆったりとしているように見えて、古くからの風習が根強く残っている部分がある。ここら一体も例外ではない」
ん? と、いうと?
「山城ヶ原村の土地は、ある名家が所有しているものなんだ。地主というやつだな」
「はぁ、そういう話は、よくテレビでやってますね」
ドラマとかで。
姫島屋先生は苦笑をして、パンにかぶりつく。
ゆっくりと咀嚼してから、話を続けた。
「その地主の家系がここいらを仕切っているんだ。当主は市議会議員でな、地位も財力もある。正直、あまりいい噂を聞かない。自分の不利になる事件を、握りつぶすこともできるらしいぞ」
「ええ、それって犯罪じゃないですか。……でも、噂なんですよね」
「どうだか。実際、沙賀城家の権力は、昔から揺るがず警察にも顔がきくらしいからな」
沙賀城家?
「それって、沙賀城美咲さんの実家ですか。中等部二年二組の」
「そういえば校長が、沙賀城家のご息女が中等部にいると言っていたな」
「その子ですよ」
「む?」
「行方不明になったって、話した子です」
姫島屋先生の表情が、厳しいものになった。
「なんだ」
律儀に返事をしてくれる姫島屋先生は、本当に優しい。
「特段面白いとか、楽しいとかいう話じゃないんですけど」
「予防線はいらん。なんだ?」
「うちの生徒がひとり、行方不明なんです」
ぴく、と姫島屋先生の動きが止まる。ゆっくりと振り向いた先生と視線を合わせたあと、軽く肩をすくめてみせた。
「詳しいことはわからないんです。保護者が捜索願を出したみたいで。状況は家出っぽいんですけど。……この村って平和そのものだから、際立っちゃいますね。そういう事件が」
「平和か」
「違うんですか? 長い間、事件も事故もないって聞いてますよ」
「田舎は長閑でゆったりとしているように見えて、古くからの風習が根強く残っている部分がある。ここら一体も例外ではない」
ん? と、いうと?
「山城ヶ原村の土地は、ある名家が所有しているものなんだ。地主というやつだな」
「はぁ、そういう話は、よくテレビでやってますね」
ドラマとかで。
姫島屋先生は苦笑をして、パンにかぶりつく。
ゆっくりと咀嚼してから、話を続けた。
「その地主の家系がここいらを仕切っているんだ。当主は市議会議員でな、地位も財力もある。正直、あまりいい噂を聞かない。自分の不利になる事件を、握りつぶすこともできるらしいぞ」
「ええ、それって犯罪じゃないですか。……でも、噂なんですよね」
「どうだか。実際、沙賀城家の権力は、昔から揺るがず警察にも顔がきくらしいからな」
沙賀城家?
「それって、沙賀城美咲さんの実家ですか。中等部二年二組の」
「そういえば校長が、沙賀城家のご息女が中等部にいると言っていたな」
「その子ですよ」
「む?」
「行方不明になったって、話した子です」
姫島屋先生の表情が、厳しいものになった。
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