駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

文字の大きさ
125 / 349
4.アレキサンドライトの輝き

28.ウナ・コリナ

しおりを挟む
 『ヴァリアント・ゲレーロ』との会談の翌日、ラモ・デ・シダーデの町を守備する守備兵30を残し、僕達は旧王都『ウナ・コリナ』を目指し、夕刻までに王都の一角を浄化し拠点の設営を行いました。
 もともと小国のセロ・アスルの旧首都『ウナ・コリナ』は、東西南北1km程の小さな街の様なものです。北の一角に、王城らしき建物がありますが、5階建て位の王宮としては小さな建物でした。
 到着後、ユイの式で街の中にある資産として硬貨や絵画、壷などを一箇所に集めます。その後、フローラさん達と取り分を分配し、換金が必要な絵画や壷などは後ほど分配という事になりました。
 ですが、硬貨だけでもそれなりの金額になるので、それらは僕達からこの地の復興に当たる人たちへの寄付という形で処理するように、フローラさんにお願いします。実際あまりお金があっても仕方ないんですよね、僕達は。

 そして、2日後の事です。王宮の浄化を行い、探索していた僕達の前に気になる壁のある地下室が見つかりました。

「どう思う?」

 僕は傍らのイリスさんと、ユイの顔を見ます。

「ユーリアの意見を聞いてみなさい。うちで解錠のスキルをもってるのは彼女なんだから」

 イリスさんの言葉に、うれしそうにユーリアちゃんが微笑んでいます。ん、折角の勉強の成果を示す機会ですからね。お願いしましょう。

「ユーリアちゃん、お願いできるかな? 罠とか、難易度に問題があったら言ってね」

「はいぃ。やっと私の活躍する場所がやってきましたよぉ」

 そう言いながら、嬉しそうに怪しい壁を調べ始めます。殆ど同じ色に見える小さな2cm四方の四角いブロックで構成された壁なのですが、地下の壁をこんな小さなブロックで構成する理由が無いんですよね。せめてタイル画でも描かれているのなら判るのですけど。
 僕達が見守る中、ユーリアちゃんがタイルとタイルの隙間、僅かな亀裂か隙間にしか見えない部分に、解錠器具を差し込んで暫く後に、カチリと小さな音がしました。
 ユーリアちゃんが、僕達の方を向いて肯いた後、幾つかのタイルを順番に押していきました。そうすると、壁の一角がスライドして、ぽっかりと更に地下への階段が現われたのです。扉が開いた事で、階段の先が感知できましたが、これは……

「「魔物の気配だよね」(ですね)」

 僕とユイの口から、同じ言葉が発せられます。迷宮ですね、これは。イリスさんは考え込んでいましたが、ユーリアちゃんに一旦閉じるように指示します。

「これは、フローラさんやあのヴァネッサさんに確認したほうがいいわね。突入するには、情報が無さ過ぎるわ」

 情報も無しに未発掘の迷宮に挑むのは、かなり危険かもしれません。僕達はユーリアちゃんによる迷宮の閉鎖を確認した後、フローラさんに報告する為に地上に戻る事にしたのです。

*****

「と言う訳なんです」

 僕達がフローラさんに、迷宮の入り口を発見した報告をすると、明らかに面倒な物を見つけてくれた的な顔をされました。
 まあ、復興や再開発には一切かかわりが無く、獲らぬ狸の皮算用ではありませんが、迷宮でのお宝なんて当てにはできません。
 小さな迷宮ですら、上位ランクのハンターでさえ全滅する可能性があります。現状この場にいるハンターは僕達「アレキサンドライト」と「ルース・ダ・ルーア」の二人だけです。そして、フローラさんとしては、どちらのパーティーも損耗を避けたい状態ですからね。

「別に迷宮を発見したから、挑みたいので連絡をした訳ではありませんわ。私たちもまだここの浄化の依頼を受けている最中ですから、迷宮に挑むつもりもありません。
 発見先が王宮の地下だったので、ヴァネッサさん達にも連絡する必要があるのではと思いますわ」

 ユーリアちゃんは残念そうですが、イリスさんの言葉は本当ですよ。依頼の最中ですから、依頼主の許可無く関係のない迷宮探索に赴くわけには行きません。
 しかし、発見場所が場所ですから、王家に関連する可能性が高いですからね。
 フローラさんは小首を傾げて暫く考えていましたが、やがて考えがまとまったのか、頷きます。

「……仕方ありませんね。貴女方の言うとおり、ヴァネッサさん達に知らせないと後々の問題になる可能性が高いですわね。すぐに早馬で連絡をとりましょう」

 そしてメイドさんに指示を出した後、改めて僕達を見て言います。

「これは、個人的な興味ですが、その迷宮に貴女方が挑んだ場合、踏破できると思いますの?」

 さて? 先ほど感じた気配からは、浅い層の魔物の気配しか感じられませんでした。深さも判りませんし、罠の難易度もあります。

「僕達が死ぬ事はないと思いますけど、踏破できるかはわかりませんし、迷宮を破壊してしまう可能性も有るので、なんともいえないですよ」

 僕の答えにみんな頷きますが、ユーリアちゃんは特に残念そうです。『桜の迷宮』の存在は秘密となっていますが、難易度はもっと高いでしょうから、この迷宮にも腕試しも兼ねて挑みたいのでしょうね。
 ただ、チップが僕らの命ですからね。ヴァネッサさんからの情報も含めて、トータルで判断しないとわかりません。今日のところは、依頼のあった作業を完了させないといけませんね。

*****

 2日後、ヴァネッサさんとN º 55ばんと呼ばれていた少年がやって来ました。ついついガンブレードを貫きたい衝動に駆られますが、其処は押さえておきます。短い挨拶の後、本題の迷宮の話題に入ります。

「王宮にある迷宮というのなら、一つしかない。恐らく、『ラビリント・デ・ヴェルホLabirinto de velho』、古の迷宮と呼ばれるモノだろう。王家の古い書物の中にしか存在しない迷宮だ」

 むぅ、ということは情報はあまり期待できませんね。

「幾つかの情報があるが、階層は5層という説が最も多い。だが、それ以上あるという話もあったので、詳細は不明だ。
 そして、魔物はスライムのようなものから、デュラハンまでは確認され、深層に行くほど強くなる。
 致命的な罠はないらしいが、解除に失敗すると魔物に囲まれることはあるようだ。
 最後の情報が重要だが、いわゆる宝物などは存在しない。王家の者が赴けば、場合によっては力を授かる場合があるというくらいだな」

「なんや。デュラハンまでなら戦うたことあるけど、なんもあらへんのや挑む理由もあらへんなぁ」

 シャルさんが最もな事をいいますね。踏破しても報酬がないのであれば、わざわざ挑む理由はありません。

「つまり、私達が以外挑む理由はないということですわね。……ユーリア、どうしたの?」

 イリスさんの声にユーリアちゃんと見てみると、虚ろな目をしています。

「誰かが……呼んで……」

 そう呟いてユーリアちゃんが椅子から立ち上がります。ユイが慌てて立ち上がり、ユーリアちゃんの肩を揺さぶりますが、既に目の光がぼんやりしたものに変わっています。そして、不意に目の前から、その姿が掻き消えてしまいました。

「「「ユーリアちゃん!」」」

 僕達の声が部屋に響きますが、誰も身動き一つしません。そして、今まで聞いた事のないような低い声が、頭痛を伴って頭に響きます。

(『我の領域に侵入した異質なものよ、エルフの娘は預かった。……返して欲しくば、貴様らが古の迷宮と呼ぶ最下層にやって来い……』)

「くわぁ……、…………、っ……」

 痛む頭を両手で押さえながら、なんとか姿勢を元に戻すと、みんなが驚いた顔そしています。直後にドサドサッと音がして、音のした方向をみるとエマ&ジェシーも倒れています。

「ちょっと! クロエ、一体何が起きたのよ?!」

 イリスさんの声が響きますが、僕は呆然と答えるしかありません。

「……ユーリアちゃんは攫われました。返して欲しければ、迷宮の最下層にこいって男の声が聞こえましたが……」

 どうやら、他の人には聞こえなかったようですね。そして、エマとジェシーも倒れています。エマとジェシーも抜きで、魔物ひしめく迷宮に挑めという事なんでしょうか?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

処理中です...