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第13章
閑話 父の思惑と長男クロノス
しおりを挟む姪の顔は知らぬが、ふん!王子に婚約破棄などと言い渡される程度なのだろう。
顔を見て嫌みの一つでも、遠回しに言って快く協力してやるといえば向こうも、私を呼んだ手前何も文句は言えないだろう。フフフ。
と何やら訳が分からない悪巧みを頭の中でし始めた。
ベルガモットの領地までは、ここからは離れて居るか……。
ならば急ぎマリーンに返事を出して、直ぐにここを出ればマリーン達が先に領地に到着しているだろう。
そして、妻、息子達を呼び出して領地を出ると告げれば、息子からは反対の声が上がったが。
ベルガモットからどうしても、手伝いをしてほしいと言って来てるので、私が助けてやるのだと言い聞かせ領地を逃げるように、少数の騎士達を連れて自分の領地を出たのだった。
息子達も、姪とは面識がないなので丁度良い洗脳ができた。
「お前達…ここを出るのは、ベルガモットの長女の所為いだ!あやつが王子との婚約を破棄した所為で、私はベルガモットに出向き、政の手伝いをと頼まれたのだ。だから仕方なしにだ!いいな」
なんとも訳の分からな物言いで、無理矢理な話しだがそれでも姪の所為だと!言うことは子供達には理解させたのだ。
#*#*#
連れて来られた子供達。
……移動の馬車の中で…。
子供達も幼くはない、とうに成人を迎えて分別はある。
子供達も其々思う事はあるだろうが、父が仕方無しにベルガモットに赴くのだから、仕方ない事だと思い父に付いて行く事になったが……。
連れて行かれる子供達は内心複雑である。
なぜ、父だけがベルガモットに赴かないのか?
なぜ、我々子供達も付いて行かなくては為らないのか?
父は、ベルガモット家の長女パトリシアの所為だと言っていたが…。
長男クロノスは、そうは思っては居なかった。
クロノスは、領地の経営が逼迫していると執事から聞き騎士団を辞めて、領地に戻ってきた矢先にベルガモットへと移動すると父から聞かされた。
次男と三男は、父親の言う通り従妹の所為と言う言葉をそのまま鵜呑みにしているようだ。
長男のクロノスは幼い頃に、ヴァンスと一度会って居るのだが。
その頃はまだ幼く、記憶には余り残っては居なかったが…。国(リシュタール)の騎士団の小隊長をしている、ヴァンスに憧れて騎士団に入隊していたので、父親の言うことは半信半疑だ。
それに、領地の経営が傾いて居るのには気が付いていた。
なので、口出しはできないが…今のところ父の思い通りには動くつもりは全くない。
「俺としては、ヴァンス従兄様の仕事の手伝いが、出来れば嬉しいのだがな…」
と、純粋に思って居たりする。
父親の悪巧みに巻き込まれるのはごめんだからな、早々にヴァンス従兄様と、打ち解けて話すのもありだろうと考えた結果。
【なにもしない】事に徹すると決めた。
正直父上の考えには付いて行けない。
と、日頃から思っているクロノスである。
やはり父は、自分の領地から逃げたのだろうと思っているのだが…。
「本当……勘弁だな」
と、誰にも聞こえない様にぼそりと呟くのだった。
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