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第1章 ここから始まるDIY

十三日目② 話はきちんと聞きましょう

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「おじさん、ここ初めて?」
「どうしてわかったんだ?」

 近づいてきた女性は、俺に話しかけてきた。
 しかし、その表情は呆れを通り越してジト目だった。
 俺は思わずむすっとした顔で答えてしまった。

「だって、ここに来るのに水魔法関連のスキルか装備持ってないから。こりゃ初めての新人さんなのかなってね。」
「そうだったのか……」

 つまり、水関連の何かしらの方法が無いと戦えないってことなのか?
 俺が何か考え込んでいるように見えたのか、さらに情報を提供してくれた。

「さっきの岩に擬態していたのが【ロックミミクリー】。基本的には転がってきて体当たりしてくるわ。強さ的には……下の下ね。気を付けなければいけないのはその外装。鉄の剣程度だと全く歯が立たないはずよ。」
「だからさっき、攻撃がはじかれたのか。それじゃあ剣士はこいつと相性がかなり悪いな。」

 俺の答えに首肯で答えてくれた女性。
 なんともありがたいことだ。

「で、こいつの弱点は水属性。水にぬれるとその外装がふにゃふにゃになっちゃうのよ。」
「つまり、水属性の魔法か、またはそれに準じたアイテムで一度濡らせばいいってことか……」

 くそ、情報不足だ。
 なんでキャサリンさんは教えてくれなかったんだ?

「まあ、あとは雨の日とかはこいつらはカモもいいところだけどね。」

 なるほど、今日は太陽燦々と輝くいい天気だ。
 こいつらからしたら最高の日じゃないか……

「というわけで、おじさんが新人さんか、無謀はおバカさんかどちらかだなと思って手を貸したの。」
「そうか、ありがとう。助かったよ。」

 女性が倒した岩モンスターから討伐証をはぎとると、モンスターは地面にチリのように消えていった。
 ドロップアイテムは魔石(極小)と殻のようなものだった。

 女性はこの後もここで狩りをするとのことで、ここで別れることとなった。

 俺は女性に改めて礼を言いその場を後にした。
 あ、そういや名前聞きそびれたな。
 ま、そのうち合いそうな気がするし、今はいいかな。



 急いで街に戻った俺は、その足で冒険者ギルドへと駆けこんだ。

「岩モンスターの弱点なんで教えてくれなかったんですか?!」

 キャサリンさんにそう詰め寄ると、呆れた顔でジト目をされてしまった。
 お、俺は悪くないんだからね?!

「それを伝える前に出て行っちゃったのはカイト君よ?それに聞きもしないのに答えられるわけないでしょ?新しい場所に行く場合は必ず情報を確認する。それが冒険者としての常識よ?一歩間違えば即死につながる職業なんだからね?わかりましたか?」

 とめどなくあふれ出る言葉には、やさしさが詰まっていた。
 ……
 詰まってるよね?
 ものすごくジト目が痛いんですが。

 改めて対策について相談すると、さすがキャサリンさん。
 東区の一軒の魔道具屋を教えてくれた。
 この店は隠れた名店らしく、知る人ぞ知るその道のすごい人らしい。
 うん、毎回思うけどかキャサリンさんの表現が独特すぎる……

 地図(?)をもらいその店に足を運んだ。
 ……迷子になりかけて、衛兵に連れて来てもらったのは内緒だ……

カランコロン

 扉を開けるとそこは……
 いっつあめるへん!!!!
 まじで目がくらみましたよ……

「いらっしゃい、魔道具店「ライラ」へようこそ。カモ葱(お客)様。」

 にこやかに営業スマイルで目をぎらつかせた女性が、店の奥から出てきた。
 背丈はそれほど高くはないけど、スタイルはそこそこいい感じにまとまっている気がする。
 それよりなにより、その衣装どうにかなりませんか?!
 どう見てもゴスロりでしょ?!
 
 この世界は癖強すぎませんか?!

 って、まあ、その金髪に似合ってるから文句はないんですけどね。
 むしろ肌も白いし、ビスクドールって思えばそうかもしれない……
 
 とまあ、そんなことよりも、今後のために装備品の相談だ。

 
 
 「ロックミミクリーね~。なら、これなんかどうかしら。」

 店主が薦めてきたのは【水の杖】という魔道具だった。
 戦闘用としては初期装備らしい。
 これを装備して杖に魔力を込める。
 すると、杖の先端の宝石部分からスキル【ウォーターバレット】が発動する仕組みらしい。
 いよいよ来たよ、ついに俺が魔法使いデビューする日が!!

 さっそく試し撃ちをさせてもらえることになった。
 店の裏手に移動すると試射場が備わっていた。
 しかも、防護魔法がきちんとかけられているので心配ないそうだ。
 俺は左手に持った杖に魔力を込める。

 込める……

 こめ……る?
 こ……める?

 あの、込め方どうやるの?

「ねぇ、あなた……ステータスの魔力値っていくつなの?」
「あはははは、それはとびっきりの……1です!!」

 あ、目から光が消えた。
 うん、明らかに冷やかしだと思われたかも……
 それは困る。

「えっと、この代わり使えそうなのをもらえますか……」
「……はぁ~。じゃあこれね【魔晶石(水)】。使い捨ての魔道具だけど、投げて破裂した場所を起点にして周りに水の爆発が起こるわ。魔力のない……1のあなたに使えるのはこれくらいよ。」 

 よし、これに決めた!!
 これくださいな!!

 え?1個銀貨1枚?買う買う買う買う。
 10個くださいな。

 これでやっとまともにあそこで戦える。
 あ、でもこれってちゃんと元取れるのか?

 ロックミミクリーのドロップアイテムは魔石(極小)と外殻なんだとか。
 魔石(極小)が銅貨5枚
 外殻が銅貨5枚
 合わせて銅貨10枚……
 つまり銀貨1枚……
 これ……やってもやらなくても変わりがないパターンでは?
 むしろ、ドロップ100%じゃないと赤字じゃね?

 ロックミミクリー許すまじ!!
 ……通行料だと割り切ろう。

「あなたは初心者っぽいから先に忠告よ。道のはずれにある大穴には絶対に近づかないこと。おおよそ【アーマードロックアント】の巣よ。硬さは【ロックミミクリー】なんてかわいいわ。」
「分かりました。近づかないようにします。」 

 追加情報で、大体は魔法職に魔法で外殻を破ってもらって、近接職がとどめを刺す流れが一般的だそうだ。
 ソリストの俺には関係ない話でもある。

 それにしても、今の話を聞けて本当にラッキーだった。
 知らなかったら洞窟かと思って入ってしまっただろうから。

 本当に情報とは大事だと身に染みた一日だった。

 今日はこれくらいにして、明日に備えよう。
 おやすみなさい。

所持金:金貨2枚 銅貨105枚(金貨1枚 銅貨5枚相当)
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