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第1章 ここから始まるDIY

十七日目② お礼って大事だよねって話

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 エルダとともに冒険者ギルドを後にした俺は、北区の商業地区を抜け北門を目指した。

「いらっしゃいらっしゃい。安いよ安いよ~~!!」
「そこの綺麗なおねぇさん。これからダンジョンかい?じゃあ、このダンジョン産ポーションかってかないかい?今なら銀貨5枚でどうだい?!」

 商業地区ではいろいろな商店が立ち並び、威勢のいい掛け声ととも熱気を帯びた空気感が何とも言えない活気を感じさせる。

「ポーション買わなくていいの?」

 俺は商店街を素通りするエルダを呼び止めて、ポーション購入を提案してみた。
 するとエルダは少し困ったような表情を浮かべ、次にはため息を吐いていた。
 なぜだ⁈
 
「本当に常識に乏しいのね……。キャサリンさんが心配するだけあるわ……」

 何かボソッとつぶやいた見たいだけど、何か言ったのかな?
 俺やらかした?

 エルダは頭を振って真剣な面持ちで俺の顔を見つめていた。
 そして商店の店先……並んでいる色とりどりのポーションを指さしている。
 
 「あのポーションはおそらく偽物か、水増し品だよ?でこっちは本物だけどぼったくり価格。それと、あれは本物だけどおそらく効果切れ。」

 店主には聞こえないくらいの声量で俺にレクチャーしてくれた。
 その顔は……
 うん、めんどくさそうだね。
 ごめんなさい。

「それに本物だとしても、低品質で大体銀貨1枚から2枚。中品質なら金貨だからね?間違っても薬師以外から買わないことをお勧めするわ。」
「………。(アブナカッタ)」

 おそらく俺一人だったらあの辺に並んでるの間違いなく買っていた。
 本当にエルダ様様だ。

 
 
 それから俺たちは、大通りを行きかう人々を躱しながら北門へと向かう。
 その途中、今日の戦闘についての話になった。

「そういえば今日の戦闘ってどういう役割で行くんだ?」
「基本はカイトが戦ってね?私が戦ったら意味ないし。でも、安心していいわよ。フォローはきちんとするから。あくまでもカイトのダンジョン練習みたいな感じで鉱石回収を進めましょう。」

 エルダの過保護がとても痛い……。
 なんだかんだで、おんぶにだっこになりそうな予感しかしなかった。

 北門へ近づくと、ふと思い出した。
 そういえばここが、エルダを見かけた初めての場所だった気がした。
 確か、男性と痴話げんかをしていたっけ。そしたら、思いっきりビンタしていたと思った。

「そういえば、俺がエルダの事を始めて見たのこの辺だった気がした。確か盛大にビンタをかましてたっけな。」
「うぅ~~~~~~!!」

 エルダにそのことを確認すると、うつむいたまま顔を赤らめていた。
 うん、これ以上踏み込んではいけないのだろう。
 きっと、話す気になったら教えてくれると思う。
 今はこのままでいい。



 北門を出た先には、いつものように荒れた土地が広がっていた。
 鉱山跡地ダンジョンへ向かう一本道には、数組の冒険者パーティーの姿が見えた。
 俺と同じように、鉱山跡地ダンジョンへ向かっているのだろうか。
 エルダに確認すると、鉱山跡地ダンジョンの下層ではそこそこ上質な金属が手に入るそうだ。
 王都にはドワーフの鍛冶屋が多数在籍しており、上質な金属はいつも品薄になるそうだ。
 俺もいつかは取りに行きたいものだと思った。だって、絶対金になる!!

 他愛もない雑談をしながら歩いていると、街道の中腹で広場に出た。
 そういえば、ここでの戦闘で初めてエルダに助けられたんだっけ。
 その話を振ると、あんなに常識の無い冒険者は初めて見たとディスられた……
 解せぬ!!
 冗談はさておき、エルダに改めてお礼を述べた。

「エルダ。あの時助けてくれて本当に助かった。ありがとう。」
「どういたしまして。」

 あの時助けてくれなかったら、本気でやばかったと思う。
 たぶん、俺は今ここにいなかった。
 エルダはそんなにお礼をするなら、稼いだお金でご飯をおごる様に要求してきた。
 つまりはあれか!?で、で、デートのお誘いですか?!
 って、そんなわけはなく、キチンとお礼の為の食事をお誘いしましたよ。



 それから街道を進んだが、特に何事もなく鉱山跡地ダンジョンへ到着した。
 それにしても本当にここの門はどでかいな。
 街道沿いの遠く離れた場所からでも、その存在が確認できるほどだ。
 意匠の凝らされた門は間近で見ると威圧感と重厚感が半端ないな。
 ダンジョンの受付を済ませると腕輪についての説明があったが、俺たちは二人ともすでに腕輪をつけており、それを見せると受付を通してくれた。
 おそらく通行証の変わりも兼ねているのかもしれないな。
 
 ダンジョンの入り口には入場待ちをしている冒険者パーティーが並んでいた。
 前来たときは並んでいなかったので、やはり時間によって違うみたいだ。
 どのパーティーも限界の6人組で、若いパーティーからベテランそうなパーティーまで幅広い年齢層が並んでいる。
 それだけここは人気スポットなんだろうなと、どうでもいいことを考えていると、エルだから鋭い視線が飛んできた。

「カイト、初心者でも大丈夫と言っても油断は禁物よ?ちょっとした判断ミスで死ぬことは冒険者としてはあるあるの話なんだから。」
「あぁ、気を付けるよ。さすがに俺もまだ死にたくないしね。」

 

 しばらくすると俺たちの番となり、ゆっくりとダンジョンへ足を踏み入れた。
 そこには見覚えのある洞窟が広がっていた。
 ついにパーティーとしての初アタック。
 期待に胸が震えるのは仕方がないよね?
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