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第1章 ここから始まるDIY

十九日目① 不審者(?)は 頭を下げて ごめんなさい。

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 昨日はバタバタとしすぎてしまった。
 いきなり家が決まり、さらに同居人まで決まった。
 そして今日はいきなりの引っ越し作業。
 エルダも一緒に引っ越すため、ギルドに行く前に一度、エルダの宿へ寄ることになっている。
 ほんといきなり尽くしで目が回りそうだよ。

 いつものように宿舎の食堂に行くと、いつものように旨そうな朝食が並んでいた。
 これも今日で食べ収めかな。
 俺はその味を堪能しつつ、朝食をとったのだった。
 


 最後の食事を終えると、俺は思わず食堂のお姉さま方にお礼を告げた。
 ここまでまじでうまい飯を、毎日食わしてくれたんだ。
 感謝しなければおかしいじゃないか。
 厨房からありがとねって言う言葉聞こえてきた。
 うん、お姉さま方も職人なんだなって思った。

 朝食後、部屋の片づけを終えた俺は部屋の掃除をしていた。
 まあ、そうはいってもスキル【クリーン】を使っただけなんだけどね。
 正直俺の荷物は特になかったりする。
 出ていた全ての荷物はアイテムボックスにしまってあるから。
 ほんとアイテムボックスって便利すぎる。
 約2週間ちょっとだったけど、それなりに愛着がわいてしまったらしい。
 部屋を出たとき、なんだかもの寂しさが押し寄せてきた。
 きっとこの部屋で新しい冒険者が力を蓄え、また巣立っていくのだろう。
 それを思うと少しウルっと来るものがある。
 そして思った。
 俺が入った時よりきれいなんじゃないか?


 
 玄関ホールを抜けて門へ近づくと、いつもの職員が門周辺の清掃活動をしていた。

「おや、カイトさん。住所不定冒険者の回避おめでとうございます。」

 この職員はいちいち嫌味しか言えないのだろうか。

「えぇ、何とかなりましたよ。ギルマスにはだいぶ面倒をかけたみたいですけど。」
「気にしなくていいですよ、これも仕事のうち……っていらなことを言いましたね。さっさと開けてください。新しい初心者が来る頃ですからね。あぁ、ほらきた。」

 通りの先を見ると、2人組の若い青年たちがこちらへ向かって歩いてきた。

「あの、すいません。ギルドから紹介を受けてきました。レイアスです。よろしくお願いします。」
「同じく、ジョシュアです。弟ともどもよろしくお願いします。」

 身なりの良い2人は職員に連れられ、宿舎の中へ入っていった。
 これから彼らは冒険者として巣立つため、幾多の試練を乗り越えるのだろう。
 彼らに幸多からんことを……

 って、俺はそれほど試練を乗り越えた気がしないんだけどね。
 むしろこれから巻き込まれそうで怖いんだけど……



 宿舎を後にした俺は、集合場所の南区の住民街中央にある広場の噴水前にやってきた。
 噴水前では家族やカップルが楽しそうにくつろいでいた。
 周囲には軽食の屋台や喫茶店の店舗も並んでおり、ここだけで一日つぶせそうな感じもした。
 まだエルダは来ていないようだったので、近くのベンチに腰を下ろし待つことにした。
 ただ待つのも暇なので、まだ確認していなかったステータスを開いてみた。

——————

ステータス

 HP :115/115
 MP : 15/ 15(5UP)
 SP : 32/ 32
 体力 : 24(+3)
 力  : 66(1UP)(+3)
 知力 : 12(5UP)
 魔力 : 12(5UP)
 素早さ: 80(-3)
 魅力 :  5
 幸運 : 50

自然回復量
 HP :1/分
 MP :1/分
 SP :1/分

技能 :DIY レベル2……低級アイテムの作成
     ▼設備(NEW)
       銅鍋(NEW)……銅インゴット1で作成。料理および蒸留設備。SP:2

——————

 変更点はこれくらいかな?
 それにしても魔導士見習いになれるようになったら、魔法関連のステータスが伸びる伸びる。
 ただ、それに伴って、物理系が伸びなくなってきた。
 このままいけば、本気で器用貧乏になりかねないな。
 それにいつかはどちらかの装備に偏らせないと、維持費がかさみすぎる。
 って、あれ?もしかしてそんなにかからない?
 おそらくご都合主義様がご乱心召されて、鍛冶師とか薬師とか錬金術師とかの付与がありそうだ。
 うん、そんなんあったら本気で神様の戯れを疑いたくなる。
 そして、絶対に何か良くないことに巻き込まれるに決まってる。
 クワバラクワバラ。
 その時は全力で逃亡します!!
 あ、まさか……そのためのエルダか?!まさかのハニートラップ?!

 なんて冗談を考えていると、目の前にエルダが立っていた。
 エルダは俺の顔を見ながら変な物でも見るかのようにジト目だった。
 どうやら、さっきから変な動きをしていたらしい。
 うん、全く無意識でございました。

「お、お、おはよう、エルダ。」

 かなりぎこちないあいさつになってしまったじゃないか。
 背中に変な汗をかいてしまった。

「おはようございます。カイト……できれば普通に待てなかったかしら?危うく衛兵を呼ばれるところだったわよ?」

 ご迷惑をおかけいたしました!!
 俺は全力全開でジャンピング土下座をエクストリーム的に決めた。
 寸でのところでエルダが衛兵を止めてくれたようだ。
 感謝いたします。
 さすがにここから冷たい牢屋へ直行は勘弁してほしい。

 挨拶を済ませた俺たちは、エルダが拠点としている宿へ移動を開始した。
 ただし、エルダはある一定距離から近づいてはくれなかった……
 解せぬ!!
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