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第2章 これから始まる共同生活
二十一日目④ そして終局へ
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魔法師団が受け持つ治療スペースには、所狭しとケガ人が搬送されていた。
冒険者の姿はわかるが、騎士団の姿も見て取れた。
それだけ激しい戦いが繰り広げられているのだ。
Cランクパーティーに被害が多発し、すでに戦闘不能者が10名を超えていた。
騎士団到着はぎりぎりとなってしまったみたいだ。
だけどそれを悲嘆する者はここにはいなかった。
彼らが到着していなければ、最悪の事態が待っていたからだ。
前線に到着した俺たちは、Dランク同士で即席のバディを組んで戦闘を開始した。
即席ってこともあってか連携何てあったもんじゃないけど、ゴブリンくらいだったら俺たちDランクで何とかなる。
緊密な連携が取れなくても、空いた隙間に攻撃を仕掛けるくらいは問題ない。
むしろ新しい発見もあったんで収穫と言えば収穫かもしれない。
俺たちがゴブリンを受け持ったことで、C・Dランクの冒険者にも余裕ができ、少しづつだったけど戦況は改善していっていた。
「ゴギャギャギャギャガギャグギャギャ!!」
突如として戦場にひと際大きいモンスターの咆哮が鳴り響いた。
あまりの咆哮に地面と空気がビリビリと振動していた。
それが怒りから来るものなのかは分からないが、その激しさから感情の高ぶりが容易に想像できた。
遠目からの確認だが、群れの中にひと際巨大なゴブリンの姿が見えた。
おそらくその巨大なゴブリンがロードなんだと思う。
そいつの元でブースたちBランクは戦闘しているのだろう。
俺たちは足手まといとなるため、近づくことはできない。
できるのは今目の前で暴れまわるゴブリンどもを殲滅することだけだ。
徐々にその数を減らしていくゴブリン達の群れ。
治療がひと段落したためか、魔法師団の攻撃もさらに厚みを増していった。
戦況は終局へと向かっていく。
ゴブリン軍団も残すところあと4匹となった。
ブースたちBランクと騎士団精鋭が担当しているロード。
Cランクたちと騎士団が担当しているゴブリンジェネラルが3匹。
俺たちDランク以下の冒険者は、この戦いの最後を見届けていた。
ロードもジェネラルも徐々にその動きに精彩を欠いていった。
そして終わりは訪れる。
まず初めに3匹のジェネラルが屠られた。
ロードはそれを見るとひと際大きな声で叫んだ。
それは怒りとも悲しみともとれる声だった。
冒険者と騎士団により態勢を崩されたロードの額にきれいに魔法の矢が突き刺さる。
頭を下げたと同時にその首を騎士が切り落とした。
これにて長い長いゴブリン集落討伐作戦が終了したのだった。
あとは、うち漏れがないことを動ける者全員で確認して回った。
「諸君!!良くやった!!これにてゴブリン討伐作戦の終了を宣言する!!」
周囲の索敵作業が終わるころ、ブースの声が響き渡った。
それを聞いた冒険者たちは一斉に歓喜を爆発させた。
疲れてはいるだろうけど、それを超えるほどの感情が爆発していく。
今回は、それほどまでの死闘となったのだった。
野営陣地には騎士団とともに到着した冒険者ギルドからの補給部隊の姿も見えた。
ゴブリン襲撃により、停滞していた物資が到着したらしい。
補給部隊には料理人も帯同しており、ここにいる全員に食事が提供されていく。
考えてみれば朝食べたっきりまともに飲み食いできていなかった。
食事臭いを嗅ぎ意識すると、途端に腹が減る。
食事を受け取った俺は、無我夢中で掻き込んだ。
空腹は最高のスパイスとはよく言ったものであった。
今まで食べたどの料理よりもうまかった。
食事が終わるころには、辺りは暗くなり始めていた。
このまま帰還するのは危険との判断で、もう一泊ここで野営することとなった。
さらに騎士団の後詰部隊も到着した為、歩哨の当番はなくなった。
俺たちは夕食後、そのまま休むことになった。
もちろんエルダも一緒に……
「カイトお疲れ様。初めての討伐戦がとんでもないことになったわね。」
まさにその通りであった。
一歩間違えば俺はここにはいなかった。
幸い今回の作戦での死者は出なかったけど、重傷者が多数出てしまった。
手放しには喜べない戦果だった。
「もう、散々だった。そして自分の未熟さを痛感したよ。」
「そう。それがわかれば今回参加した意味があるわね。」
エルダは俺の答えを聞くと、満足そうにうなずいていた。
おそらく討伐戦参加は、おのれの未熟さを体験させるいい機会だったのかもしれない。
しかし、今回はあまりにもイレギュラーすぎた。
まさか、集落がダンジョンのカモフラージュだったとは誰が予測できたであろうか。
今回のゴブリン討伐戦はあまりにもおかしなことが重なり過ぎていた。
最初の出来事はゴブリンの異常発生。
そこから集落の発見につながり、殲滅戦を行おうとしたら後ろからの奇襲。
さらには集落は実は隠れ蓑で、未確認ダンジョンが発生していた。
そこからスタンビードが発生して、それを統率できるレベルの知能を持ったゴブリンロードが出現する。
どう考えたって明らかに偶然とは思えない。
必然なのかそれとも意図的なのか……
今なその判断材料があまりにも少なすぎた。
ここで結論を出すことは無理だろうな。
そして後日、このことが波乱の幕開けになるとはこの時の俺たちは知る由もなかった。
冒険者の姿はわかるが、騎士団の姿も見て取れた。
それだけ激しい戦いが繰り広げられているのだ。
Cランクパーティーに被害が多発し、すでに戦闘不能者が10名を超えていた。
騎士団到着はぎりぎりとなってしまったみたいだ。
だけどそれを悲嘆する者はここにはいなかった。
彼らが到着していなければ、最悪の事態が待っていたからだ。
前線に到着した俺たちは、Dランク同士で即席のバディを組んで戦闘を開始した。
即席ってこともあってか連携何てあったもんじゃないけど、ゴブリンくらいだったら俺たちDランクで何とかなる。
緊密な連携が取れなくても、空いた隙間に攻撃を仕掛けるくらいは問題ない。
むしろ新しい発見もあったんで収穫と言えば収穫かもしれない。
俺たちがゴブリンを受け持ったことで、C・Dランクの冒険者にも余裕ができ、少しづつだったけど戦況は改善していっていた。
「ゴギャギャギャギャガギャグギャギャ!!」
突如として戦場にひと際大きいモンスターの咆哮が鳴り響いた。
あまりの咆哮に地面と空気がビリビリと振動していた。
それが怒りから来るものなのかは分からないが、その激しさから感情の高ぶりが容易に想像できた。
遠目からの確認だが、群れの中にひと際巨大なゴブリンの姿が見えた。
おそらくその巨大なゴブリンがロードなんだと思う。
そいつの元でブースたちBランクは戦闘しているのだろう。
俺たちは足手まといとなるため、近づくことはできない。
できるのは今目の前で暴れまわるゴブリンどもを殲滅することだけだ。
徐々にその数を減らしていくゴブリン達の群れ。
治療がひと段落したためか、魔法師団の攻撃もさらに厚みを増していった。
戦況は終局へと向かっていく。
ゴブリン軍団も残すところあと4匹となった。
ブースたちBランクと騎士団精鋭が担当しているロード。
Cランクたちと騎士団が担当しているゴブリンジェネラルが3匹。
俺たちDランク以下の冒険者は、この戦いの最後を見届けていた。
ロードもジェネラルも徐々にその動きに精彩を欠いていった。
そして終わりは訪れる。
まず初めに3匹のジェネラルが屠られた。
ロードはそれを見るとひと際大きな声で叫んだ。
それは怒りとも悲しみともとれる声だった。
冒険者と騎士団により態勢を崩されたロードの額にきれいに魔法の矢が突き刺さる。
頭を下げたと同時にその首を騎士が切り落とした。
これにて長い長いゴブリン集落討伐作戦が終了したのだった。
あとは、うち漏れがないことを動ける者全員で確認して回った。
「諸君!!良くやった!!これにてゴブリン討伐作戦の終了を宣言する!!」
周囲の索敵作業が終わるころ、ブースの声が響き渡った。
それを聞いた冒険者たちは一斉に歓喜を爆発させた。
疲れてはいるだろうけど、それを超えるほどの感情が爆発していく。
今回は、それほどまでの死闘となったのだった。
野営陣地には騎士団とともに到着した冒険者ギルドからの補給部隊の姿も見えた。
ゴブリン襲撃により、停滞していた物資が到着したらしい。
補給部隊には料理人も帯同しており、ここにいる全員に食事が提供されていく。
考えてみれば朝食べたっきりまともに飲み食いできていなかった。
食事臭いを嗅ぎ意識すると、途端に腹が減る。
食事を受け取った俺は、無我夢中で掻き込んだ。
空腹は最高のスパイスとはよく言ったものであった。
今まで食べたどの料理よりもうまかった。
食事が終わるころには、辺りは暗くなり始めていた。
このまま帰還するのは危険との判断で、もう一泊ここで野営することとなった。
さらに騎士団の後詰部隊も到着した為、歩哨の当番はなくなった。
俺たちは夕食後、そのまま休むことになった。
もちろんエルダも一緒に……
「カイトお疲れ様。初めての討伐戦がとんでもないことになったわね。」
まさにその通りであった。
一歩間違えば俺はここにはいなかった。
幸い今回の作戦での死者は出なかったけど、重傷者が多数出てしまった。
手放しには喜べない戦果だった。
「もう、散々だった。そして自分の未熟さを痛感したよ。」
「そう。それがわかれば今回参加した意味があるわね。」
エルダは俺の答えを聞くと、満足そうにうなずいていた。
おそらく討伐戦参加は、おのれの未熟さを体験させるいい機会だったのかもしれない。
しかし、今回はあまりにもイレギュラーすぎた。
まさか、集落がダンジョンのカモフラージュだったとは誰が予測できたであろうか。
今回のゴブリン討伐戦はあまりにもおかしなことが重なり過ぎていた。
最初の出来事はゴブリンの異常発生。
そこから集落の発見につながり、殲滅戦を行おうとしたら後ろからの奇襲。
さらには集落は実は隠れ蓑で、未確認ダンジョンが発生していた。
そこからスタンビードが発生して、それを統率できるレベルの知能を持ったゴブリンロードが出現する。
どう考えたって明らかに偶然とは思えない。
必然なのかそれとも意図的なのか……
今なその判断材料があまりにも少なすぎた。
ここで結論を出すことは無理だろうな。
そして後日、このことが波乱の幕開けになるとはこの時の俺たちは知る由もなかった。
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