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第2章 これから始まる共同生活

二十七日目⑦ 望郷の思い?

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 なんだかんだで元の予定をこなせてないけど、まぁそれもいいかと思えている。
 エルダと並んで南区の住宅街を歩くと、少し浮かれている自分が居た。

 住宅街の真ん中にある公園の噴水近くまで歩いてきた。
 ここでエルダと待ち合わせをしたっけ。
 あれからまだ一週間ちょっとしかたってなかったりするんだけど……
 なんだか長くいるような気がしてならない。
 きっと気のせいだろうけど。

「カイト……覚えてる?」
「なにを?」

 不意にエルダが立ち止まると、噴水の縁に腰かけた。
 街灯に照らされた噴水を背にして、いつにもましてきれいに見えた。
 俺の鼓動が激しく打ち鳴らされているのを知ってか知らずか、エルダはニコリと笑みを浮かべていた。
 
「カイトってここで私に笑顔でいてほしいって言ってくれたんだよ。」
「うっ、あ、あれは心の声がその……えぇっと。」

 エルダはテンパってる俺を見てクスクスと笑っていた。
 たぶん、こうなるのわかっててその質問をしたんだと思う。
 なんだか、この前から更に容赦がなくなってきた気がする。
 きっとこれがエルダなんだろうな。

「あの時、一瞬ドキッとしたの。」
「そう……なんだ。」

 それから会話が止まってしまった。
 俺の鼓動はさらにその速度を上げていく。

 エルダはゆっくりと立ち上がると、【森のアナグマ亭】に向かって歩き始めた。
 俺もそれにつられてついていく形となってしまった。
 なんとも様にならないな……

 

 そしてしばらくそのままゆっくりと歩いていると、懐かしい看板が見えてきた。

【森のアナグマ亭 】

 エルダが定宿にしていた宿だ。
 メアリーさんとの約束……ちゃんと守れているかな……
 エルダを悲しませずにいられているだろうか……

カランコロンカラン

「いらっしゃいませ!!」

 女の子の元気な挨拶が聞こえてきた。
 確かリリーちゃんって言ったかな?
 うん、元気っ娘だね。

「おう!!エルダちゃん。いらっしゃい。元気そうで何よりだ。」
「リリーちゃんにダニエルさん、ご無沙汰しています。」

 厨房の奥から顔を出したダニエルさん。
 こんな強面なのに、こんな可愛い娘が生まれるなんて……
 遺伝子組み換えが行われたのではないだろうか……

「おうカイト、お前さんなんか良からぬ事かんがえてねぇ~か?」

 おっと、また顔に出てたかな?

「エルダおねぇちゃん。今日はどうしたの?」
「カイトと夜ご飯をここでどうかって話になって。まだ大丈夫?」

 リリーちゃんがエルダにしがみつくと、上目遣いで話しかけてきた。
 その顔はうれしさ満開って感じがした。
 
「おう、任せろ!!エルダちゃんには特製オムライスだ。いつものホワイトソースでいいかい?」
「お願いします。」

 何そのハイカラな食べ物は。
 てか、オムライスもちゃんとあるんだね。
 本当に昔の転移地球人めっちゃ頑張ったんだな。
 感謝!!

「俺はどうしようっかな。メニューある?」
「はい、お兄ちゃん。」

 ちょっと重めのメニュー表を持ってきてくれたリリーちゃんの働きっぷりが、なんだかほほえましく思えてきた。

「ありがとう。」

 さて、どんなものがあるのかな……
 お、モン肉料理もちゃんとあるんだね。

 え?
 マジで……
 本気で言ってるの?!
 こ、こ、これは!!!!!!

——————

メニュー表

 豚丼    銅貨 3枚
 イノシシ丼 銅貨 5枚
 牛丼    銅貨10枚

etc

——————

 丼物があるじゃないか!!

「ダニエルさん!!この丼ってもしかして勇者・賢者関連!?」
「ん?あぁ、そりゃ当たり前だろ?賢者様料理シリーズは基本中の基本だぞ?」

 まじかよ?!
 ほんと賢者様に感謝!!

「じゃあ、牛丼一つお願いします。あと、もしかしてつゆだくも行けたりしますか?」
「わかった、牛丼並盛つゆだくだな。」

 ん?並盛だって⁉

「ストップ!!もしかして大盛りも行けるんですか?!」
「変な兄ちゃんだな。あたりまえだろう?」

 カスタム来た~~~~!!

「じゃあ、牛丼大盛りつゆだくねぎだくでお願いします。」
「あいよ、牛丼大盛りつゆだくねぎだくだな。」

 やばい。
 テンション上がってきた!!

 こっちに来る前も食べてなかったから、1か月以上ぶりの丼物だよ。
 まさかこっちで食べられるとは思ってなかった。

「カイト、なんだかうれしそうね?」
「あぁ、もう食べられないものだと思ってたから。そうだエルダ、もしかしてカレーライスもあるの?」
「ここには置いてないけど、ちゃんとした料理店には置いてあるわよ?」
「そっか、ここには無いのか。」
「仕方ないわよ。いくら魔術師のおかげで輸送ができるって言っても、量には限界があるから。それでも塩・コショウがこれだけ流通してくれて助かってるわ。」

 確かにそうなんだよな。
 塩と胡椒が流通してくれているおかげで、これだけうまい飯が食べられるんだから、感謝しかないわけで。

「でも、あなたのおかげで香辛料の値段もかなり下がると思うわ。カイトはそれだの物を作ったって自覚を持ってね?」
「はい……」

 若干ジト目のエルダは呆れ顔であった。

「ほら、おまっとさん。エルダちゃんには特製オムライスだ。」
「ダニエルさん⁉」

 エルダのオムライスは……
 お子様ランチでした。
 ホワイトソースのオムライスにはちょこんと旗が立っており、おそらくこの国の旗だったと思う。
 プレートの上にはミニハンバーグと揚げ芋、葉物野菜が盛り付けられていた。
 確かにお子様ランチなんだけど……よく見るときちんと栄養バランスを考えられた盛り合わせになっていた。
 ダニエルさんすげ~

「あんちゃんにはこいつだな。牛丼大盛りつゆだくねぎだく一丁。」

 ドンとテーブルに置かれたドンブリには見まごうことなき牛丼が盛り付けられていた……

「カイト……。泣いてるの?」

 え?
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