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第2章 これから始まる共同生活
二十七日目⑨ エルダの過去とこれから
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「じゃあ、ダニエルさん。今度料理教えてくださいね。」
「おう、任せとけ。」
ダニエルさんに約束を取り付けると、サムズアップで答えてくれた。
エルダはエルダでメアリーさんと何か話している。
少し離れているせいかここからじゃ何を話しているかはわからなかったけど、笑いあっているので問題はなさそうだな。
エルダの笑顔はやっぱりかわいいな……
「それじゃあメアリーさん、また来ます。」
「待ってるわね、エルダちゃん。」
「はい!!」
少し遅くなったけど、満足のいく夕食を食べることができた。
たまにはこういうのもいいよな。
辺りは大分暗くなっており、街灯の灯りが煌めいて見えた。
「エルダ。また来ようか?」
「そうね。たまにはいいかもね。」
「あぁ。それにダニエルさんに料理を教わらないと。」
俺は必ず”勇者様料理シリーズ”をマスターしてやる!!
これでいつでも食べられるようになるから。
「それにしても、どうして急に料理なんか教わろうと思ったの?」
「ほら、その。ずっとエルダに頼りっきりだったから。俺も作れたら、エルダも休めるだろ?それに、エルダが居ない時でも作れないと何かあった時困るかなって。」
俺は本当の目的を隠しながらエルダに説明した。
エルダは何やら納得がいっていない様子だった。
「ねぇ、カイル。教えてもらうなら、定番料理にしてね?勇者様料理はスパイスとか結構使うから、コスパが悪いのよね?」
「え?あ、はい。」
先手を打たれてしまった!!
これじゃあ、大量作成ができないじゃないか!!
ゆっくりと歩くと、街並みはまるで遊園地のようにキラキラと輝いていた。
街行く人々も、笑顔に包まれている。
そんな街を戦争の中にぶち込もうとしている王様はいったい何を考えているんだろうな。
ま、俺がどうにかできるものでもないんだけど……
噴水の公園につくと、エルダが噴水近くのベンチへ腰かけた。
「カイト。本当にありがとう。正直、もう来ないつもりでいたの。来ると戻りたくなりそうだったから。でも、今日来て分かった。私は巣立ちをしたんだなって。ずっとダニエルさんやメアリーさん。リリーちゃんに甘えてたんだなって。」
エルダはそう言うと、星々が煌めく夜空を見上げて大きく深呼吸をしていた。
俺もつられて星空を見上げたら、本当にきれいだった。
空に3つの月が輝いていた。
なんだかダニエルさん一家みたいだった。
「ねぇ、カイト。今朝の話…………うれしかった。」
エルダは少し寂しそうな顔で自分の事を話し始めた。
「私が小さかったころ、お母さんが病気で死んじゃって。お父さんが男手一つで育ててくれたの。って言っても近所のおばさんとかにすごく助けられてだけど。でね、お父さんは冒険者で、依頼があるたびに家を空けてた。それがすごく寂しかった。おばさんとかが来てくれたから生活には問題なかったわよ?でもね、私が10歳の時、お父さんが依頼から帰ってこなかったの。冒険者ギルドに聞いても、未帰還で現在捜索中ってしか教えてくれなかった。だから私はその時決めたの。私が冒険者になってお父さんを探そうって。」
俺はエルダが冒険者を目指した理由を聞いて恥ずかしくなった。
俺は流されるまま冒険者になって、流されるままここにいる。
「それから私は生まれた町を出て、王都へやってきたの。この街にはお父さんの元パーティーメンバーとかがいるって聞いてたから。それで私はこの街で冒険者になった。ちょうどギルマスがお父さんの元パーティーメンバーだったのも幸運だった。いろいろ良くしてもらって、何とかここまでやってこれた。」
そうか、だからシャバズのおっちゃんはエルダを気にかけてたのか。
他に公爵もそう。いろんな人がエルダを気にかけてくれている。
きっと、エルダのお父さんは人格者だったんだろうな。
「だからね。お願いがあるの。私に力を貸して。この先へ進むにはあなたが必要なの。これは私のわがままであってカイトにはメリットが無いってわかってる。でも……私にはカイトが必要なの。」
「なぁ、エルダ。今朝の事覚えてる?俺たち兄妹になったんだ。兄妹に遠慮なんかいらない。俺を頼ってくれ。それが兄になった俺の役目だ。」
エルダは感極まったのか涙を流していた。
俺はそっとエルダを抱き寄せて、泣き止むまで胸を貸した。
それからしばらくして泣き止んだエルダは、どこかすっきりした表情をしていた。
俺たちは明日から新しい人生を送る。
同居人として、パーティーメンバーとして、兄弟として。
「ねぇ、カイト。これからの目標はどうするの?私のお父さんを探すだけってわけにはいかないわよね?」
「それはな。勇者探索もしないといけないしな……。でもまぁ、ぶっちゃけ全部俺の目標のついでだ。俺の目標はスローライフで悠々自適生活だからね。」
本当にこれは俺の最終目標の第一歩でしかないんだけど、その一歩がものすごく大変だ。
いつになったらスローライフに慣れるのやら……
ゆっくりと大通りを歩いていると、ふと何かを思い出したようにエルダが歩みを止めた。
その表情はなんとなくハイライトが消えた感じがしてしまう。
何かあったのかな?
「ところでカイト。その勇者って女の子よね?」
「そうだな。俺の後輩であり、部下だった奴だ。」
「へぇ~。そう………。」
あれ?エルダさん?なんかいきなり不機嫌なんですけど?
さらに表情は能面と化していき、最後は白い目で見られてしまった……
なんで⁈
エルダは無言のまま自宅へと帰っていった。
俺なんかミスった?
「おう、任せとけ。」
ダニエルさんに約束を取り付けると、サムズアップで答えてくれた。
エルダはエルダでメアリーさんと何か話している。
少し離れているせいかここからじゃ何を話しているかはわからなかったけど、笑いあっているので問題はなさそうだな。
エルダの笑顔はやっぱりかわいいな……
「それじゃあメアリーさん、また来ます。」
「待ってるわね、エルダちゃん。」
「はい!!」
少し遅くなったけど、満足のいく夕食を食べることができた。
たまにはこういうのもいいよな。
辺りは大分暗くなっており、街灯の灯りが煌めいて見えた。
「エルダ。また来ようか?」
「そうね。たまにはいいかもね。」
「あぁ。それにダニエルさんに料理を教わらないと。」
俺は必ず”勇者様料理シリーズ”をマスターしてやる!!
これでいつでも食べられるようになるから。
「それにしても、どうして急に料理なんか教わろうと思ったの?」
「ほら、その。ずっとエルダに頼りっきりだったから。俺も作れたら、エルダも休めるだろ?それに、エルダが居ない時でも作れないと何かあった時困るかなって。」
俺は本当の目的を隠しながらエルダに説明した。
エルダは何やら納得がいっていない様子だった。
「ねぇ、カイル。教えてもらうなら、定番料理にしてね?勇者様料理はスパイスとか結構使うから、コスパが悪いのよね?」
「え?あ、はい。」
先手を打たれてしまった!!
これじゃあ、大量作成ができないじゃないか!!
ゆっくりと歩くと、街並みはまるで遊園地のようにキラキラと輝いていた。
街行く人々も、笑顔に包まれている。
そんな街を戦争の中にぶち込もうとしている王様はいったい何を考えているんだろうな。
ま、俺がどうにかできるものでもないんだけど……
噴水の公園につくと、エルダが噴水近くのベンチへ腰かけた。
「カイト。本当にありがとう。正直、もう来ないつもりでいたの。来ると戻りたくなりそうだったから。でも、今日来て分かった。私は巣立ちをしたんだなって。ずっとダニエルさんやメアリーさん。リリーちゃんに甘えてたんだなって。」
エルダはそう言うと、星々が煌めく夜空を見上げて大きく深呼吸をしていた。
俺もつられて星空を見上げたら、本当にきれいだった。
空に3つの月が輝いていた。
なんだかダニエルさん一家みたいだった。
「ねぇ、カイト。今朝の話…………うれしかった。」
エルダは少し寂しそうな顔で自分の事を話し始めた。
「私が小さかったころ、お母さんが病気で死んじゃって。お父さんが男手一つで育ててくれたの。って言っても近所のおばさんとかにすごく助けられてだけど。でね、お父さんは冒険者で、依頼があるたびに家を空けてた。それがすごく寂しかった。おばさんとかが来てくれたから生活には問題なかったわよ?でもね、私が10歳の時、お父さんが依頼から帰ってこなかったの。冒険者ギルドに聞いても、未帰還で現在捜索中ってしか教えてくれなかった。だから私はその時決めたの。私が冒険者になってお父さんを探そうって。」
俺はエルダが冒険者を目指した理由を聞いて恥ずかしくなった。
俺は流されるまま冒険者になって、流されるままここにいる。
「それから私は生まれた町を出て、王都へやってきたの。この街にはお父さんの元パーティーメンバーとかがいるって聞いてたから。それで私はこの街で冒険者になった。ちょうどギルマスがお父さんの元パーティーメンバーだったのも幸運だった。いろいろ良くしてもらって、何とかここまでやってこれた。」
そうか、だからシャバズのおっちゃんはエルダを気にかけてたのか。
他に公爵もそう。いろんな人がエルダを気にかけてくれている。
きっと、エルダのお父さんは人格者だったんだろうな。
「だからね。お願いがあるの。私に力を貸して。この先へ進むにはあなたが必要なの。これは私のわがままであってカイトにはメリットが無いってわかってる。でも……私にはカイトが必要なの。」
「なぁ、エルダ。今朝の事覚えてる?俺たち兄妹になったんだ。兄妹に遠慮なんかいらない。俺を頼ってくれ。それが兄になった俺の役目だ。」
エルダは感極まったのか涙を流していた。
俺はそっとエルダを抱き寄せて、泣き止むまで胸を貸した。
それからしばらくして泣き止んだエルダは、どこかすっきりした表情をしていた。
俺たちは明日から新しい人生を送る。
同居人として、パーティーメンバーとして、兄弟として。
「ねぇ、カイト。これからの目標はどうするの?私のお父さんを探すだけってわけにはいかないわよね?」
「それはな。勇者探索もしないといけないしな……。でもまぁ、ぶっちゃけ全部俺の目標のついでだ。俺の目標はスローライフで悠々自適生活だからね。」
本当にこれは俺の最終目標の第一歩でしかないんだけど、その一歩がものすごく大変だ。
いつになったらスローライフに慣れるのやら……
ゆっくりと大通りを歩いていると、ふと何かを思い出したようにエルダが歩みを止めた。
その表情はなんとなくハイライトが消えた感じがしてしまう。
何かあったのかな?
「ところでカイト。その勇者って女の子よね?」
「そうだな。俺の後輩であり、部下だった奴だ。」
「へぇ~。そう………。」
あれ?エルダさん?なんかいきなり不機嫌なんですけど?
さらに表情は能面と化していき、最後は白い目で見られてしまった……
なんで⁈
エルダは無言のまま自宅へと帰っていった。
俺なんかミスった?
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