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第3章 ここから始まる転換点?
二十九日目③ 冒険者ギルドにて
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「あ、良かった。キャサリンさんおはようございます。今ギルマスはいますか?」
朝早くから冒険者ギルドはごった返していた。
ダンジョンが機能不全を起こしている以上、依頼書の争奪戦が激化してしまったらしい。
フィールド系で稼げる依頼書には数が限られているからだ。
誰しも清掃作業(地下道)などやりたくはないのだろう。
そんな中キャサリンさんはいつも通りに事務作業をこなしていた。
どう見ても周りの職員の3倍は仕事が早い。
それに今日は赤の制服に、赤いリボンを束ねた髪にあしらっていた。
これが赤い……って何言ってんだ俺は。
俺はキャサリンさんの受付が少し落ち着くのを待って声をかけた。
「いらっしゃいカイト君。伝言を預かっているわ。」
「あ、たぶん俺がここに来た理由と同じだと思います。」
「そう?じゃあ、部屋かえましょうか。」
そう言うと、キャサリンさんは別な受付嬢を呼び出して、当番を変わってもらっていた。
やっぱりキャサリンさんはここでは偉い人なんだろうか。
「こっちよ。」
キャサリンさんに促されるようにギルド内を移動した。
そしてついた先は……
ギルマスの執務室。
何故に?!
「さあ、入って。」
キャサリンさんは、躊躇うことなく執務室の扉を開けて中に入っていった。
俺たちもそれについて入ることにした。
キャサリンさんにソファーに座る様に促されたので、腰を下ろした。
主のいない部屋に勝手に入って勝手にくつろぐことほど、居辛い空気になることはない。
ポールとデイジーも縮こまってしまっている。
「まずは伝言からね。〝しばらく会えなくなるが気にするな。万が一の場合は国外退避をしろ〟だそうよ。万が一の場合は私が対応するから安心して。」
「えっと、何を安心すればいいのかが分かりませんよ。」
シャバズのおっちゃんからの伝言だけだったら、話が全く分からなかったな。
公爵閣下の手紙様様だ。
「だったら、俺の要件もおそらく同じ内容かと思います。これを。」
俺はキャサリンさんに、公爵閣下からの手紙を手渡した。
キャサリンさんは手紙を手に取ると、裏表を確認し、公爵家の封蝋がされていることに気が付いた。
おそらく、内容も察しがついているんだろうな。
手紙を読み終えるとそっと返してくれた。
「なるほど。ある程度は事情を知っているのね。正直この件は失敗することはないわ。だって、国王自ら出陣しちゃったんだもの。」
はぁああああああああああああ~~~~⁈
「何考えているんですかあのバカ国王は……」
俺は頭がおかしくなりそうだった。
自ら死地に向かう王様などどこを探したっているわけがない。
なにか、そそのかされて……
あぁ、何となく見えてきた……
「キャサリンさん、質問いいですか?」
「どうぞ?」
俺はキャサリンさんに、俺が考える筋書きを確かめてみた。
「もしかして、国王には幼い息子がいる。その息子が成人するまでは宰相が実権を掌握する。で、宰相に娘がいた場合、婚約発表。晴れて傀儡政権の出来上がり。なんてことはないですよね?」
「カイト君。あなたは何か能力でも持っているの?まさしくその通りなのよね。おそらく、国王の出陣も魔王討伐を持って国の威厳の底上げをしよう的な感じで、そそのかしたんでしょうね。」
うん、この国終わってしまえ。
あ、だからクーデターを仕掛けるのか……
でも、そこまで考える宰相が何の準備をしていないわけないよな。
「キャサリンさん。宰相も何も手を打っていないわけはないですよね?」
エルダも俺と同じ結論に至ったわけだが、キャサリンさんは大して気にしていない様子だった。
「そうね、おそらく何かを仕掛けるでしょうけども……。それでも公爵閣下が政権を取るわ。何があってもね。」
キャサリンさんの顔がいきなり真剣な表情に変わった。
いつもの真剣なキャサリンさんとは違う、冷徹さを滲ませた、そんな感じがしてぞくっとしてしまった。
「とりあえず、あなたたちはダンジョンへの侵攻は一時中断ね。本当に馬鹿なことをしてくれたわよ。これで資源取れなくなったらどうしてくれるのよ。」
「それも質問していいですか?」
「どうしたのカイト君。」
「いえね、そうやって資源を握られているっていうことは魔人族に支配されていると同意義じゃないのかなって?」
俺はずっと疑問に感じていたことを伝えた。
これはきっと俺がこの世界の人間じゃないから感じる違和感だと思う。
「だから?それが何か問題があるの?ダンジョンの資源で豊かな生活ができる。今回みたいなことが無い限りは問題にすらならない話よ?私たちと魔人族は共存共栄の関係なのよ?向こうが資源を提供する。こちらは魔素・魔力といったエネルギーを提供する。利害が一致するでしょ?」
キャサリンさんはさも当然のように答えていた。
ポールもデイジーも同じように「何言ってんのこいつ?」的にきょとんとしていた。
「カイト、いつも思うけど……。考え方がおかしいわよ?」
エルダが俺を見つめて答えてくれた。
ただ、一瞬だけエルダの瞳から生気が消えた気がした。
もう一度見直すといつものエルダの綺麗な瞳に戻っていた。
俺の気のせいか?
朝早くから冒険者ギルドはごった返していた。
ダンジョンが機能不全を起こしている以上、依頼書の争奪戦が激化してしまったらしい。
フィールド系で稼げる依頼書には数が限られているからだ。
誰しも清掃作業(地下道)などやりたくはないのだろう。
そんな中キャサリンさんはいつも通りに事務作業をこなしていた。
どう見ても周りの職員の3倍は仕事が早い。
それに今日は赤の制服に、赤いリボンを束ねた髪にあしらっていた。
これが赤い……って何言ってんだ俺は。
俺はキャサリンさんの受付が少し落ち着くのを待って声をかけた。
「いらっしゃいカイト君。伝言を預かっているわ。」
「あ、たぶん俺がここに来た理由と同じだと思います。」
「そう?じゃあ、部屋かえましょうか。」
そう言うと、キャサリンさんは別な受付嬢を呼び出して、当番を変わってもらっていた。
やっぱりキャサリンさんはここでは偉い人なんだろうか。
「こっちよ。」
キャサリンさんに促されるようにギルド内を移動した。
そしてついた先は……
ギルマスの執務室。
何故に?!
「さあ、入って。」
キャサリンさんは、躊躇うことなく執務室の扉を開けて中に入っていった。
俺たちもそれについて入ることにした。
キャサリンさんにソファーに座る様に促されたので、腰を下ろした。
主のいない部屋に勝手に入って勝手にくつろぐことほど、居辛い空気になることはない。
ポールとデイジーも縮こまってしまっている。
「まずは伝言からね。〝しばらく会えなくなるが気にするな。万が一の場合は国外退避をしろ〟だそうよ。万が一の場合は私が対応するから安心して。」
「えっと、何を安心すればいいのかが分かりませんよ。」
シャバズのおっちゃんからの伝言だけだったら、話が全く分からなかったな。
公爵閣下の手紙様様だ。
「だったら、俺の要件もおそらく同じ内容かと思います。これを。」
俺はキャサリンさんに、公爵閣下からの手紙を手渡した。
キャサリンさんは手紙を手に取ると、裏表を確認し、公爵家の封蝋がされていることに気が付いた。
おそらく、内容も察しがついているんだろうな。
手紙を読み終えるとそっと返してくれた。
「なるほど。ある程度は事情を知っているのね。正直この件は失敗することはないわ。だって、国王自ら出陣しちゃったんだもの。」
はぁああああああああああああ~~~~⁈
「何考えているんですかあのバカ国王は……」
俺は頭がおかしくなりそうだった。
自ら死地に向かう王様などどこを探したっているわけがない。
なにか、そそのかされて……
あぁ、何となく見えてきた……
「キャサリンさん、質問いいですか?」
「どうぞ?」
俺はキャサリンさんに、俺が考える筋書きを確かめてみた。
「もしかして、国王には幼い息子がいる。その息子が成人するまでは宰相が実権を掌握する。で、宰相に娘がいた場合、婚約発表。晴れて傀儡政権の出来上がり。なんてことはないですよね?」
「カイト君。あなたは何か能力でも持っているの?まさしくその通りなのよね。おそらく、国王の出陣も魔王討伐を持って国の威厳の底上げをしよう的な感じで、そそのかしたんでしょうね。」
うん、この国終わってしまえ。
あ、だからクーデターを仕掛けるのか……
でも、そこまで考える宰相が何の準備をしていないわけないよな。
「キャサリンさん。宰相も何も手を打っていないわけはないですよね?」
エルダも俺と同じ結論に至ったわけだが、キャサリンさんは大して気にしていない様子だった。
「そうね、おそらく何かを仕掛けるでしょうけども……。それでも公爵閣下が政権を取るわ。何があってもね。」
キャサリンさんの顔がいきなり真剣な表情に変わった。
いつもの真剣なキャサリンさんとは違う、冷徹さを滲ませた、そんな感じがしてぞくっとしてしまった。
「とりあえず、あなたたちはダンジョンへの侵攻は一時中断ね。本当に馬鹿なことをしてくれたわよ。これで資源取れなくなったらどうしてくれるのよ。」
「それも質問していいですか?」
「どうしたのカイト君。」
「いえね、そうやって資源を握られているっていうことは魔人族に支配されていると同意義じゃないのかなって?」
俺はずっと疑問に感じていたことを伝えた。
これはきっと俺がこの世界の人間じゃないから感じる違和感だと思う。
「だから?それが何か問題があるの?ダンジョンの資源で豊かな生活ができる。今回みたいなことが無い限りは問題にすらならない話よ?私たちと魔人族は共存共栄の関係なのよ?向こうが資源を提供する。こちらは魔素・魔力といったエネルギーを提供する。利害が一致するでしょ?」
キャサリンさんはさも当然のように答えていた。
ポールもデイジーも同じように「何言ってんのこいつ?」的にきょとんとしていた。
「カイト、いつも思うけど……。考え方がおかしいわよ?」
エルダが俺を見つめて答えてくれた。
ただ、一瞬だけエルダの瞳から生気が消えた気がした。
もう一度見直すといつものエルダの綺麗な瞳に戻っていた。
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