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第3章 ここから始まる転換点?
二十九日目⑤ 訓練所での出来事
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「ごめんなさい。カイト……。」
泣きじゃくることはなくなったけど、いまだ俯いたまま謝罪の言葉を口にするエルダ。
俺はもう気にしていないんだけどな。
思いを伝えるって難しいな。
「もういいから。今は俺の家族であることは嘘じゃないんだろ?」
「うん。」
「じゃあ、この話は終わりにしよう。そしてシャバズのおっちゃんが帰ってきたら、2人でしばこう。」
俺の冗談を聞いて苦笑いをしながらも泣き止んでくれた。
まあ、半分は冗談じゃないんだけどね。
マジで脱毛剤開発したろかな?
「話がそれましたけど、キャサリンさん。今後の状況を教えてくれませんか?このままだと、予定が全くこなせなくなってしまっているので。」
「そうね、先行した王家直轄暗部のダンジョン到達があと3日くらいかかる予定よ。おそらくテレポート系のスキルを持った人間がいれば、すでについているはずだけど。それについては先手を打ったわ。暗部にかかわるスキルホルダーはすべて身柄を拘束してあるわ。」
あ~おそらく公爵閣下の処の暗部だな……
国より手練れの暗部を抱えるってどんだけなんだろうか。
むしろ国王より国王なんじゃなかろうか。
「ということは、3日以内にこの国の実権を全て掌握するつもりだってことですね。」
「そうなるわね。もし、間に合わなかった場合は……スタンピードの発生よ。その時はあなた達4人を地下のワープゲートにぶち込みます。」
今なんて言った?
地下にワープゲートあるの⁈
それよりも俺たち4人をワープさせるって⁈
「待ってください!!キャサリンさんたちはどうするんですか?住民全てを避難させるんですよね?!」
エルダはキャサリンさんの言葉に驚きを隠せないでいた。
この街にはエルダの思い出の場所がたくさんある。
会いたい人もたくさんいる。
それらすべてを守りたいのだ。
「それは無理ね。私としてもすべての国民を守りたいわ。でも、ここにあるワープゲートだとエネルギー残量的に10人が限界よ。即時ワープは良くて4人。だからあなた達を送り出すのよ。【勇者】を押さえてもらうためにね。」
「キャサリンさん、言っている意味が分かりません。」
俺はキャサリンさんが何を言いたいのかわからなかった。
この解決策でなぜ【勇者】が出てくるのか。
「そうね、【魔王】の職業を持つものを倒せるのが、【勇者】の職業を持つものだけだからよ。そして、その顔を知っているのはあなただけだから。だからあなたには探し出してもらわないと困るのよ。」
「だからと言って解決にはならないでしょう?」
解決策を聞いているのに解決策になっていない。
どういうことなんだ。
【勇者】とは何だんだ?
つまりスタンピードが発生して戦争に突入した場合、俺は【勇者】パーティーとして【魔王】討伐に参加しなきゃいけないってことか⁈
俺のスローライフ返せバカ国王!!
「ただ、その心配には及ばないわ。3日もあれば制圧は出来るわ。だから何も心配はいらないよの。」
俺の心配をよそに肩を竦めながら笑って見せるキャサリンさん。
なんか煙に巻かれたっていうか、ごまかされたっていうか……
すっきりしない回答だった。
会話がかみ合ってるようで、かみ合っていないそんな感じがした。
「そうだ、キャサリンさん。この街から出ない方がよさそうだから、訓練場とか借りてもいいですか?」
会話の流れをぶった切った形で、デイジーが質問を始めた。
やはり違和感しかないな。
この違和感がここ最近強くなっている気がする。
確かに悪い話を終わらせるのにはこれが結構使える手段だったりするけど、今の話の流れだとそれが必要とは思えない。
だがここでデイジーが無理やり話をぶった切った。
むしろ話を無理やり修正しているような……そんな気がしてならなかった。
「それなら第二訓練場を使うといいわ。たぶん彼らもいるだろうから。」
「彼ら?」
キャサリンさんの答えに、エルダが首をかしげていた。
確かに誰だよって話だよな。
俺の知っている人……ってほとんどいないな……
「今ちょうど、長期依頼から帰ってきて彼らが訓練しているはずよ?」
嫌だから誰だよ?!
「行けばわかるわ。」
というわけで、俺たちは半ば強引に第2訓練場へ移動した。
そこでは6人パーティが連携の動きの確認を行っていた。
それはとても基礎的な動きが中心で、激しい動きというのはほとんどなかった。
ただ、纏っている気配はただ者ではないことが伝わってくる。
俺なんて前に立ったら、1分持たずに制圧されるだろう。
「なあエルダ。あの人たち知ってる?」
彼らを見据えつつ、エルダに声をかけるも返事がなかった。
「エルダ?エルダさん?エルダさんや~~~い。デイジー、何かわかる?」
「え?え?ええええええええ?!ジェダンおじさん?!」
ん?なんかどっかで聞いた気がする…
どこでだっけかな……
「まさか生きていたとは……」
ポールまで固まってしまったよ。
なんかまたおいていかれてる感じがするな……
「おとう……さん?」
エルダの声が訓練場にすっと響き渡った。
それは今にも消えそうで、弱弱しい声だった。
でも、何故か訓練場全体を包み込んで、すべてのモノの耳にその声は届いた。
「ん?エルダの声が聞こえた?」
訓練場の真ん中で訓練していたパーティーの一人、がふと顔を上げてこちらを見上げている。
その顔はとても不思議そうにしていた。
「お父さん!!!!!!」
そしてエルダの叫びが訓練場全体にこだましたのだった。
お父さん?!
泣きじゃくることはなくなったけど、いまだ俯いたまま謝罪の言葉を口にするエルダ。
俺はもう気にしていないんだけどな。
思いを伝えるって難しいな。
「もういいから。今は俺の家族であることは嘘じゃないんだろ?」
「うん。」
「じゃあ、この話は終わりにしよう。そしてシャバズのおっちゃんが帰ってきたら、2人でしばこう。」
俺の冗談を聞いて苦笑いをしながらも泣き止んでくれた。
まあ、半分は冗談じゃないんだけどね。
マジで脱毛剤開発したろかな?
「話がそれましたけど、キャサリンさん。今後の状況を教えてくれませんか?このままだと、予定が全くこなせなくなってしまっているので。」
「そうね、先行した王家直轄暗部のダンジョン到達があと3日くらいかかる予定よ。おそらくテレポート系のスキルを持った人間がいれば、すでについているはずだけど。それについては先手を打ったわ。暗部にかかわるスキルホルダーはすべて身柄を拘束してあるわ。」
あ~おそらく公爵閣下の処の暗部だな……
国より手練れの暗部を抱えるってどんだけなんだろうか。
むしろ国王より国王なんじゃなかろうか。
「ということは、3日以内にこの国の実権を全て掌握するつもりだってことですね。」
「そうなるわね。もし、間に合わなかった場合は……スタンピードの発生よ。その時はあなた達4人を地下のワープゲートにぶち込みます。」
今なんて言った?
地下にワープゲートあるの⁈
それよりも俺たち4人をワープさせるって⁈
「待ってください!!キャサリンさんたちはどうするんですか?住民全てを避難させるんですよね?!」
エルダはキャサリンさんの言葉に驚きを隠せないでいた。
この街にはエルダの思い出の場所がたくさんある。
会いたい人もたくさんいる。
それらすべてを守りたいのだ。
「それは無理ね。私としてもすべての国民を守りたいわ。でも、ここにあるワープゲートだとエネルギー残量的に10人が限界よ。即時ワープは良くて4人。だからあなた達を送り出すのよ。【勇者】を押さえてもらうためにね。」
「キャサリンさん、言っている意味が分かりません。」
俺はキャサリンさんが何を言いたいのかわからなかった。
この解決策でなぜ【勇者】が出てくるのか。
「そうね、【魔王】の職業を持つものを倒せるのが、【勇者】の職業を持つものだけだからよ。そして、その顔を知っているのはあなただけだから。だからあなたには探し出してもらわないと困るのよ。」
「だからと言って解決にはならないでしょう?」
解決策を聞いているのに解決策になっていない。
どういうことなんだ。
【勇者】とは何だんだ?
つまりスタンピードが発生して戦争に突入した場合、俺は【勇者】パーティーとして【魔王】討伐に参加しなきゃいけないってことか⁈
俺のスローライフ返せバカ国王!!
「ただ、その心配には及ばないわ。3日もあれば制圧は出来るわ。だから何も心配はいらないよの。」
俺の心配をよそに肩を竦めながら笑って見せるキャサリンさん。
なんか煙に巻かれたっていうか、ごまかされたっていうか……
すっきりしない回答だった。
会話がかみ合ってるようで、かみ合っていないそんな感じがした。
「そうだ、キャサリンさん。この街から出ない方がよさそうだから、訓練場とか借りてもいいですか?」
会話の流れをぶった切った形で、デイジーが質問を始めた。
やはり違和感しかないな。
この違和感がここ最近強くなっている気がする。
確かに悪い話を終わらせるのにはこれが結構使える手段だったりするけど、今の話の流れだとそれが必要とは思えない。
だがここでデイジーが無理やり話をぶった切った。
むしろ話を無理やり修正しているような……そんな気がしてならなかった。
「それなら第二訓練場を使うといいわ。たぶん彼らもいるだろうから。」
「彼ら?」
キャサリンさんの答えに、エルダが首をかしげていた。
確かに誰だよって話だよな。
俺の知っている人……ってほとんどいないな……
「今ちょうど、長期依頼から帰ってきて彼らが訓練しているはずよ?」
嫌だから誰だよ?!
「行けばわかるわ。」
というわけで、俺たちは半ば強引に第2訓練場へ移動した。
そこでは6人パーティが連携の動きの確認を行っていた。
それはとても基礎的な動きが中心で、激しい動きというのはほとんどなかった。
ただ、纏っている気配はただ者ではないことが伝わってくる。
俺なんて前に立ったら、1分持たずに制圧されるだろう。
「なあエルダ。あの人たち知ってる?」
彼らを見据えつつ、エルダに声をかけるも返事がなかった。
「エルダ?エルダさん?エルダさんや~~~い。デイジー、何かわかる?」
「え?え?ええええええええ?!ジェダンおじさん?!」
ん?なんかどっかで聞いた気がする…
どこでだっけかな……
「まさか生きていたとは……」
ポールまで固まってしまったよ。
なんかまたおいていかれてる感じがするな……
「おとう……さん?」
エルダの声が訓練場にすっと響き渡った。
それは今にも消えそうで、弱弱しい声だった。
でも、何故か訓練場全体を包み込んで、すべてのモノの耳にその声は届いた。
「ん?エルダの声が聞こえた?」
訓練場の真ん中で訓練していたパーティーの一人、がふと顔を上げてこちらを見上げている。
その顔はとても不思議そうにしていた。
「お父さん!!!!!!」
そしてエルダの叫びが訓練場全体にこだましたのだった。
お父さん?!
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