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第3章 ここから始まる転換点?

三十四日目⑤ 経験の差

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 ダンジョンへ入る前に【職業:斥候】へ変更しておく。
 事前打ち合わせで基本ダンジョン内はこれで進むことにしていた。

 理由はスキル【マッピング】にある。
 性能は言わずもがな。
 本来【職業:斥候】が手書きでやっているマッピング作業をスキルが全自動で行ってくれているからだ。
 みんなには見えないけど、俺の視界の端っこに常に表示されているのだ。
 正直最初は煩わしかったけど、慣れてしまえば特に問題なくなりそうだ。

 スキル【マッピング】を持っていることを聞いたポールとデイジーから、ずるいずるいの大合唱だったのは言うまでもなかった。
 普通は【職業:斥候】の人を雇うかパーティーを組むかして探索するか、自分でダンジョンの地図を手書きするか、もしくはギルドで買うかの3択が基本だそうだ。
 それを自前でやってしまえる俺が羨ましいと、デイジーがぼやいていた。
 安い地図を買ったのはいいが、適当な奴をつかまされる人が後を絶たないそうだ。

 ただし、俺はまだここに入ったばっかりの為、今いる入り口ホールの部分しか表示されていなかったりする。

「では、探索開始しますか。一応スキル【気配察知】を使ってみたけど、100m範囲にはモンスターは見つからないね。」
「私も感じられないからたぶん狩られた後かもしれないね~。」

 本当にデイジーの感知能力はでたらめだと思う。
 スキルじゃないのにスキル以上って、どうやったら覚えられるんだよ。
 むしろその能力の方が羨ましいからね?

「じゃあ、移動隊列は俺が先頭で次がエルダ。デイジーが後衛で、カイトが最後尾を頼む。戦闘の時、カイトはそのまま俺の後ろに移動してくれ。」
「OK~~」
「わかったわ。」
「じゃあ、後方警戒ってことだな?」

 それぞれの行動を確認して探索を開始する。
 戻ったらキャサリンさんにリーダー変更のお知らせをしようかな……
 それにしてもポールの統率力が半端ないな。
 シャバズのおっちゃんが言っていた通り、Cランクにあがってもおかしくない実力者なんだろうな。
 たぶんこれはデイジーも一緒だろう。
 よし、負けてられない。
 俺も強くなって、みんなを守れるようになろう。

 俺は決意を新たにダンジョン探索に邁進するのだった。

 

「ポール止まって。前方500mに敵の気配。数は……3。おそらくゴブリンね。」
「わかった。カイト、フォーメーションを戦闘用に変更しよう。俺の後ろについてくれ。デイジー後方警戒を頼む。エルダは【魔光陣】を即時展開できるように準備しておいてくれ。」

 ポールは矢継ぎ早に指示を出して、戦闘態勢に移行した。
 まあ、相手はゴブリンなので、さほど警戒する必要はな……

ピュン!!

 俺のすぐ横を一本の矢が通り過ぎた。
 まだ距離的に100mも移動していない。

「敵襲!!前方通路角からゴブリンアーチャーの狙撃だよ!!カイト、呆けてないで戦闘態勢!!」

 くそ!!こんなところで経験の差が出て来てしまった。
 油断はしていなかった、でも俺の感知外からの攻撃で確認が遅れてしまった。
 デイジーは既に魔導弓を構えて魔法の矢を番えていた。
 エルダも魔導書を開いて準備万端。
 ポールは言うまでもなく盾をどっしりと構えている。
 俺だけだ完全に出遅れてしまった。

「カイト!!このまま詰める!!おそらく、アーチャーとソードマンの組み合わせだ!!俺がソードマンを押さえるから、その隙にアーチャーを仕留めろ!!エルダ、目視後に即発動!!デイジー後方警戒と打ち漏らしの狙撃頼む!!」

 畜生、かっこわり~~~~!!

 俺は、盾を構えて走り出したポールを追走する。
 カンカンとポールの盾に矢が当たる音が聞こえ、おそらくアーチャーは二匹。
 矢のほとんどが狙って打っているってより、牽制用にバラまいている風に感じた。
 エルダは牽制用にと、あえて爆発系の【魔光陣】を発動させた。
 発動させた【魔光陣】から放たれた火炎の塊は、通路の壁にぶつかった瞬間、爆音とともに大量の熱を放出させた。
 通路の角に陣取っていたであろう3匹はたまらず角から姿を現した。

 やはりアーチャー2・ソードマン1の構成だった。
 ここまで近づけばさすがの俺の探知範囲に入ってくる。
 スキル【マッピング】とも連動しており、赤いでゴブリン達の居場所がわかる様になっている。
 つか、既に見えているんだけどね!!

 動揺を隠せずにいるゴブリン達に対し、一気に距離を詰めたポールが仕掛ける。

「スキル【シールドチャージ】!!」

 タワーシールドの突撃をまともに食らったゴブリン達は、ボーリングのピンの様に吹き飛ばされていった。
 その一匹は既にデイジーによって狙撃され、アーチャー1匹が絶命していた。
 エルダも既に火弾の【魔光陣】を展開しており、射線が取れ次第発動可能状態だった。
 俺は残るソードマンに肉薄していた。
 ソードマンは俺の動きを見て、慌てて態勢を立て直そうとしていたが、デイジーが2射目でソードマンの足を射抜き、さらに態勢を崩していく。
 俺はただ、とどめを刺すだけでよかった。
 ソードマンの首めがけて振った双剣は、面白い様にソードマンの首を刎ねた。
 残る1匹はエルダの火弾によってハチの巣にされていたのだった。

 この戦いは終わりを迎えたのだが、俺には課題が山積みになっていた。
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