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第4章 ここから始まる勇者様?
三十五日目⑥ 結果【勇者モドキ】
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激高している男は、さらにこちらへ突っかかってきた。
「それにそこのでかいの!!よくもこの私に恥をかかせてくれたな!!私を【勇者】と知っての愚弄か!!」
「いや、すまない。お前が【勇者】だとは知らなかった。なんせ【ゴーヨクォート正教国】が〝勝手に認めた〟だけだしな。それに、この人がこちらのテーブルにぶつかりそうだったから、助けたまでに過ぎない。こちらとしては食事の邪魔をされて迷惑を被っている状況なのだがな?」
うん、ポールさんったら煽り上手だこと。
その挑発に乗ってさらに顔を赤く染め上げていく【勇者モドキ】。
なんであいつが【モドキ】ってわかるかと言うと、答えは簡単だ。
【勇者召喚】を本来受けるはずだったのは、俺の後輩の「西森 樹莉亜」だからだ。
つまり、俺やポールたち、さらにはこの国の上層部は、こいつらが【モドキ】であることは一目瞭然なのだ。
しかし、巷は違う。
【勇者】の看板はとても強大なのだ。
たまに現れる【偽勇者】もいるらしいけど、こいつはとてもめずらいい【偽勇者】なのだ。
先程の従者の服装をよく見てみると、白の修道服に金色の刺繍が施されていた。
間違いなく【ゴーヨクォート正教国】の【ユピテル真教】の修道服みたいだ。
まあ、それを教えてくれたのはエルダなんだけどね。
「~~~~~~~っ!!ふう、つい熱くなってしまったな……まずはそいつを返してもらおう。我々の従者なのだからな。」
ポールからの挑発を何とか堪えた【勇者モドキ】は、冷静を装いながら従者を寄越すように言ってきた。
別にこちらには引き止める理由もないので、あとはポールに任せることにした。
「だいじょうぶか?」
「はい。」
ポールが心配をしたが、従者は小さな声で答えるだけだった。
従者は体を起こし、埃を払うと【勇者モドキ】の元へと向かっていった。
しかし、【勇者モドキ】はまだ怒りが収まっていないようでこちらにさらに食い掛ってきた。
「それにしても、貴様らのせいで制裁が中断してしまったではないか!!どう責任を取るつもりだ!!」
「責任も何も、こちらに何か問題があったか?むしろ謝罪をしてほしいのはこちらの方だったんだが……見てみろ、テーブルの上がぐちゃぐちゃだ。」
ポールの言っていることは至極当然で、こちらとしては食事を邪魔されただけなのだ。
「貴様!!やはりこの私、魔王討伐の任を受けた【勇者】にたてつく気か!!この場で成敗してくれるは!!」
そう言うなり、【勇者モドキ】は背負っていた大剣を引き抜いた。
その剣は見た目にもわかるほど、煌びやかなものだった。
汚れなども見られず、ほとんど使用された形跡がない。
きっとその剣で戦ったことがほぼないんだろうな。
「貴様にこの【聖剣・グラム】の錆としてくれるわ!!」
「やっちゃえ【勇者様】!!」
【聖剣・グラム】……ねぇ……
——————
儀礼剣・グラムディセプション:儀式、式典用に誂えた儀礼剣。切れ味等は二の次に見た目だけを追求した剣。アダマンタイトを少量使用することにより、最低限度の切れ味を担保している。
——————
鑑定結果を知っている俺からすれば、とても滑稽にしか見えなかった。
それよりもさっきから後ろのうるさい女は誰だ?
神官服にしては大分豪勢な造りになってるな。
それを取り巻くように立っているおそらく神官騎士も、強そうには全く見えなかった。
「これでも……喰らえ!!」
勇者は縦に一閃、大振りの一撃を放ってきた。
さすがにその攻撃はビビらなかったらEランク冒険者でも躱せるくらいの一撃だった。
ただ、剣の切れ味はすごかった。
俺が聞いた話だと、西洋剣って斬るってより押しつぶすってのが正しい表現だってことだ。
だが、今目の前で起こった事実はそれと違っていた。
剣が地面を切ったのだ。
使い手が悪かったので、ちょっと刺さったくらいだったけど、ちゃんとした人が使ったら地面がきれいに切り裂かれていたと思う。
たぶんジョウジさんなら、なまくらでもいけそうだけど……
「これをよけるか……。貴様なかなかやるな。」
いや、どっから突っ込んだらいいの?
ポールほとんど動いてないからね?
半身ずらしただけだからね?
さらに剣を構えなおした【勇者モドキ】はポールに襲い掛かってきた。
ポールはもう完全に見切っているようで、攻撃すべてをきれいにいなしている。
肩で息をしながら剣を振り回す【勇者モドキ】を見ている、群衆からくすくすと笑い声すら出て来た。
ピ~~~~~~~!!
丁度そのころになって、やっと憲兵隊が現場に到着した。
群衆を掻き分けて中心へ向かうと、【勇者モドキ】が剣を振り回している。
「そこの剣士!!今すぐ剣を降ろしなさい!!ここを王都とわかっての愚行か!!」
憲兵隊の隊長らしき人物が、【勇者モドキ】に向かって静止を命令する。
その声に【勇者モドキ】もやっと冷静になり、自分がかなりまずい状況になっていることに気が付く。
少し離れた場所にいた女性が、神官騎士を引き連れて【勇者モドキ】の側へやってきた。
「これはどういうことですの!?この方は【ゴーヨクォート正教国】が〝正式に認めた〟【勇者様】なのですよ?とらえるならば、愚弄したあの男を捕らえなさい!!」
ものすごい剣幕で憲兵隊長に詰め寄っているけど、その憲兵隊長も困惑していた。
この国の上層部には話が伝わっているが、末端まで行くとそうではないのだろう。
どうした良いものかと、悩んでいる状況だった。
憲兵隊長が困っていると、輪の外から声が聞こえてきた。
「どうしたのですか?こんなに人だかりができて。」
その声の主はリヒター団長だった。
「それにそこのでかいの!!よくもこの私に恥をかかせてくれたな!!私を【勇者】と知っての愚弄か!!」
「いや、すまない。お前が【勇者】だとは知らなかった。なんせ【ゴーヨクォート正教国】が〝勝手に認めた〟だけだしな。それに、この人がこちらのテーブルにぶつかりそうだったから、助けたまでに過ぎない。こちらとしては食事の邪魔をされて迷惑を被っている状況なのだがな?」
うん、ポールさんったら煽り上手だこと。
その挑発に乗ってさらに顔を赤く染め上げていく【勇者モドキ】。
なんであいつが【モドキ】ってわかるかと言うと、答えは簡単だ。
【勇者召喚】を本来受けるはずだったのは、俺の後輩の「西森 樹莉亜」だからだ。
つまり、俺やポールたち、さらにはこの国の上層部は、こいつらが【モドキ】であることは一目瞭然なのだ。
しかし、巷は違う。
【勇者】の看板はとても強大なのだ。
たまに現れる【偽勇者】もいるらしいけど、こいつはとてもめずらいい【偽勇者】なのだ。
先程の従者の服装をよく見てみると、白の修道服に金色の刺繍が施されていた。
間違いなく【ゴーヨクォート正教国】の【ユピテル真教】の修道服みたいだ。
まあ、それを教えてくれたのはエルダなんだけどね。
「~~~~~~~っ!!ふう、つい熱くなってしまったな……まずはそいつを返してもらおう。我々の従者なのだからな。」
ポールからの挑発を何とか堪えた【勇者モドキ】は、冷静を装いながら従者を寄越すように言ってきた。
別にこちらには引き止める理由もないので、あとはポールに任せることにした。
「だいじょうぶか?」
「はい。」
ポールが心配をしたが、従者は小さな声で答えるだけだった。
従者は体を起こし、埃を払うと【勇者モドキ】の元へと向かっていった。
しかし、【勇者モドキ】はまだ怒りが収まっていないようでこちらにさらに食い掛ってきた。
「それにしても、貴様らのせいで制裁が中断してしまったではないか!!どう責任を取るつもりだ!!」
「責任も何も、こちらに何か問題があったか?むしろ謝罪をしてほしいのはこちらの方だったんだが……見てみろ、テーブルの上がぐちゃぐちゃだ。」
ポールの言っていることは至極当然で、こちらとしては食事を邪魔されただけなのだ。
「貴様!!やはりこの私、魔王討伐の任を受けた【勇者】にたてつく気か!!この場で成敗してくれるは!!」
そう言うなり、【勇者モドキ】は背負っていた大剣を引き抜いた。
その剣は見た目にもわかるほど、煌びやかなものだった。
汚れなども見られず、ほとんど使用された形跡がない。
きっとその剣で戦ったことがほぼないんだろうな。
「貴様にこの【聖剣・グラム】の錆としてくれるわ!!」
「やっちゃえ【勇者様】!!」
【聖剣・グラム】……ねぇ……
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儀礼剣・グラムディセプション:儀式、式典用に誂えた儀礼剣。切れ味等は二の次に見た目だけを追求した剣。アダマンタイトを少量使用することにより、最低限度の切れ味を担保している。
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鑑定結果を知っている俺からすれば、とても滑稽にしか見えなかった。
それよりもさっきから後ろのうるさい女は誰だ?
神官服にしては大分豪勢な造りになってるな。
それを取り巻くように立っているおそらく神官騎士も、強そうには全く見えなかった。
「これでも……喰らえ!!」
勇者は縦に一閃、大振りの一撃を放ってきた。
さすがにその攻撃はビビらなかったらEランク冒険者でも躱せるくらいの一撃だった。
ただ、剣の切れ味はすごかった。
俺が聞いた話だと、西洋剣って斬るってより押しつぶすってのが正しい表現だってことだ。
だが、今目の前で起こった事実はそれと違っていた。
剣が地面を切ったのだ。
使い手が悪かったので、ちょっと刺さったくらいだったけど、ちゃんとした人が使ったら地面がきれいに切り裂かれていたと思う。
たぶんジョウジさんなら、なまくらでもいけそうだけど……
「これをよけるか……。貴様なかなかやるな。」
いや、どっから突っ込んだらいいの?
ポールほとんど動いてないからね?
半身ずらしただけだからね?
さらに剣を構えなおした【勇者モドキ】はポールに襲い掛かってきた。
ポールはもう完全に見切っているようで、攻撃すべてをきれいにいなしている。
肩で息をしながら剣を振り回す【勇者モドキ】を見ている、群衆からくすくすと笑い声すら出て来た。
ピ~~~~~~~!!
丁度そのころになって、やっと憲兵隊が現場に到着した。
群衆を掻き分けて中心へ向かうと、【勇者モドキ】が剣を振り回している。
「そこの剣士!!今すぐ剣を降ろしなさい!!ここを王都とわかっての愚行か!!」
憲兵隊の隊長らしき人物が、【勇者モドキ】に向かって静止を命令する。
その声に【勇者モドキ】もやっと冷静になり、自分がかなりまずい状況になっていることに気が付く。
少し離れた場所にいた女性が、神官騎士を引き連れて【勇者モドキ】の側へやってきた。
「これはどういうことですの!?この方は【ゴーヨクォート正教国】が〝正式に認めた〟【勇者様】なのですよ?とらえるならば、愚弄したあの男を捕らえなさい!!」
ものすごい剣幕で憲兵隊長に詰め寄っているけど、その憲兵隊長も困惑していた。
この国の上層部には話が伝わっているが、末端まで行くとそうではないのだろう。
どうした良いものかと、悩んでいる状況だった。
憲兵隊長が困っていると、輪の外から声が聞こえてきた。
「どうしたのですか?こんなに人だかりができて。」
その声の主はリヒター団長だった。
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