【完結】辺境の白百合と帝国の黒鷲

もわゆぬ

文字の大きさ
4 / 52

白百合、黒鷲と領地へ向かう

しおりを挟む

全く、眠れなかった。

シルヴィはそれはもう一瞬で寝てしまった、気疲れしていたのだろう。

少し目を瞑っていたが、手を繋いでしまったのが悪かった。

何とも言えない気持ちになってしまったのだ。


何故、あそこで頂かなかったのかと自分を責めたがこれも決めていた事だ。


だが、こんなにも愛しい人が隣に居る事が拷問だなんて思わなかったんだ。

明日からは別のベッド決定だな。


余り動かないが偶に開けてしまうガウンを、執拗に直したりもした。


途中から天井を見つめる事に専念したが、目に毒過ぎる。

軍人であるシルヴィが私の隣でスヤスヤと眠る姿を見て、安心してくれたのだと分かる。気を張った浅い眠りも出来たはずだ。


夜が明けるまでシルヴィの寝顔を堪能させて貰った。

悪いかと思ったが、長く美しい呂色の髪を梳くと気持ちが落ち着いた。



明けてしまったので、移動中に寝ようと諦めが付いた。もう、起きてしまおう。

まだ時間が有るのだから、本でも読もうかな。

そう思い、繋いだ手を解き立ち上がった。


すると、ガシッとお腹に腕が回ってきた。



「ぐふっ」


苦しい…、物凄い力だ…。

抱き着かれて居るという真実よりも、攻撃されている気分になる。


だが、当のシルヴィは変な体勢だがスヤスヤと寝ている。

内から臓が出て来てしまいそうだったので、可哀想だったが起こす事にした。



「シルヴィ、シルヴィ…」


トントンと肩を叩くと腕は少し緩み、シルヴィが覚醒していくのが分かる。


「え……私は、なに、なにをっ!?」


流石に寝起きは良いのだろう。

シルヴィは自分のしている事に気付いたのか私から離れると、バッと起き上がった。


「ごめんね、起こすつもりは無かったんだけど…。積極的に来られると、さすがの私でも襲ってしまいそうになるから」


そう言って私は微笑んだ。

シルヴィはみるみる顔を赤くして、シーツに潜ってしまった。


可愛い、芋虫さんが出来上がっている。


「もう少し、寝ていて?今日から長旅だ。私は起きてしまったので隣の部屋で本でも読んでいるから」


「分かった」


芋虫さんは少し拗ねたように応えた。

昨日から色んなシルヴィが見られて本当に嬉しい。


なんて可愛いんだ、私のお嫁さんは。



思い出してクスクスと笑ってしまう。

既に幸せだな。

領地に戻ったらどうなるんだろう?



隣の部屋で本を読んでいると、少しうつらうつらとしてしまったのでそのまま瞼を落とした。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



  

「カミュ?寝ているの?」


トントンと誰かが私の肩を揺らす。


まだ重い瞼を開いていくと、夢だろうか愛しい人がそこに居た。



「…私の、黒鷲さん…」



首に手を回し、愛しい人を捕まえる。

温かいな…、、、温かい?


「シルヴィ!?ご、ごめん!寝惚けてしまった!」



しまった。

非現実的過ぎて夢だと思ってしまったが、本当にシルヴィがお嫁さんに来たんだった。


バッと両手を挙げて離すと、ガチガチに固まって真っ赤に染まったシルヴィが居た。

更に、プルプル震え出し羞恥に耐えている。



え、可愛過ぎる。


「お、起きたなら良い」


そう言って足早に部屋から出て行ってしまった。

完全に距離感を間違えてしまった様だ、逃げられてしまった。


私は先程のシルヴィを見てしまった為、両手で顔を覆い身悶えている。

逃げられて良かったかもしれない。

こんな恥ずかしい姿は見られたくないな。


帝国の黒鷲と呼ばれる私が憧れ、焦がれた姿は也を潜めている。

まるで、黒い小鳥だ。


なのに、こんなにも愛しい。


愛とは更新していくものなのだな。


まだまだ、好きに成れる自信が有る。

これ以上彼女に対し重くなりたくは無いが、致し方ないかな。



侍女を呼び、各自準備をして食事をした後領地向かう馬車に乗り込む。


二週間の旅だ。

外装は長期用の平凡な物を三台使う。

昨日の内に荷物は積んでおり、スムーズに出発した。



道中は気になる事を話し合ったり、馬車の中ではお互いの時間を過ごしたり

二人で街に降りてみたり、花畑や綺麗な景色の所で歩いたりと穏やかな時間だった。

二人とも馬に乗れるので、気分転換に競争したのは楽しかったな。

当たり前の様に、完敗だったけど。


領地に着くとこんな時間は余り取れないかもしれないから、大切にしようと思って沢山スキンシップも取った。


可愛いシルヴィが沢山見れたので私は、大満足の二週間だった。


領地、着いて欲しくないな。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。 箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。 落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。 侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!? 幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。  ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!

処理中です...