上 下
52 / 52

二人、永遠に

しおりを挟む


ーーーピチチチチ


小鳥の声で頭が冴えていく、数時間程度だろうが深く眠ってしまったのだとゆっくりと目を開けた。


「………~!?!!!!?」

物凄い近くに麗しく可憐な寝顔が有り、仰天して飛び起きようとしたがガッチリと腕の中に居るので抜け出せ無い。
何度も見ている筈なのに、何度も見惚れてしまうのは惚れた腫れたの問題では無いと思う。
今日も麗しの白百合様だ。

「ん…、おはよう。シルヴィ、早いね……」

寝起きにも関わらず、キラキラ三割増しなのは何故なのだろう。
ふわりと笑う彼の笑顔に昨夜の情事がフラッシュバックしてまともに目が合わせられない。

此方に帰って来てから、それはもう怒涛の様に結婚式の準備をして『ドレスが綺麗に着れないから式終わってからにしましょうね♡』とお義母様に念を押されてしまったので、結局そういう事はお預けでいたのだ。

そして昨日無事に結婚式を終え、身も心も本当の夫婦となりました。

「お、おはよう、カミュ」

眩しい。眩し過ぎるわ、旦那様。
昨日の妖艶な美しさを思い出し、恥ずかしくて掛布団に潜る。
初めて同士でしたよね?ちょっと、意味が分からないです。

クスクスと笑い声が聞こえて掛布団の上から頭を撫でられた。
『歯を磨いてくるね』と言い残し、彼はするりと起き上がってしまう。
そんな後ろ姿を小さく開けた布団の中から見ていると、彼が戻って来る。

「シルヴィも歯磨きする?」
と、口に歯ブラシを咥えながら私の歯磨き道具一式を持って現れた。

「…っ!!」

歯ブラシを咥えているのに素敵だなんて、なんて完璧な人なのだろう。
そんな事を考えながらこくりと頷いて起き上がろうとすると、全身が悲鳴をあげている事に気付く。
日頃鍛錬を積んでいると自負しているが、まさかこんな事になるとは思わず硬直しているとカミュが優しく上半身を起こしてくれた。

「…まだ、無理しちゃ駄目だよ」

彼は、動けずに硬直する私を見て少し嬉しそうにニヤリと笑う。
昨夜色々驚いた所だが、まだそんな顔をするのかと自分の顔が一瞬で沸騰したのが分かった。

「今日は一日ゆっくりしようね」

「そ、…そうね。そうするわ」

動けない私にカミュは甲斐甲斐しく世話をしてくれる。こんなにも幸せで良いのか。

帰って来てからというもの、結婚式の準備もあったのだが何より此方の生活が一変した。
鉄麟竜であるゼルバを連れ帰り、縁を結んだせいかは分からないが、瘴気が薄れ魔物が凶暴化しなくなっていった。ゼルバが言うには、竜と人間が縁を結ぶとその土地が豊かになると言われているのでその所為ではないか、との事だった。
そして、魔物にとって竜は魔物の頂点。絶対的な存在である。毎日の様に怪我をしたり老衰で亡くなった魔物の亡骸がいつの間にやら献上されている。
『オレ、ニクタベナイ。スキニスレバイイ』とゼルバが言うので、魔物産業も衰える事は無い。

気候による大量発生や、少なからず凶暴化する個体も有るが魔物による被害がグッと減ったのだ。
これには領民達も喜び、外からの観光客も徐々に増えている。

カミュは魔物産業だけではなく、自分の知識を最大限に生かした幅広い事業を展開し、領地を潤している最中で有る。
身長も少しだけ伸びて私と変わらない位になった。まだ、成長していたのか…。

「どうしたの?そんなに見つめられると照れてしまうな」

「あ、ご、ごめんなさい。幸せだなぁ……と、思って…」

「ふふ、そうだね。とっても幸せ」

そう言って彼は私の額にキスをして、抱き締めてくれる。

「ねぇ、カミュ。私ね、多分ずっと貴方の事が好きだったんだわ」

「え?」

「考えていたの。初めて貴方を見た時から私は貴方の事ばかり考えていた。カミュに結婚を申し込まれた時、貴方を四六時中眺めて居られるなら奥さんに成りたいと直ぐに思ったの。今思えば、ずっとずっと貴方に恋をしていたからなんだわ」

「…じゃあ、私と一緒だね」

「ふふ、そうみたい。今更気付くなんて、変よね」

「ううん、とっても嬉しい」

彼がそう言うと何故か私の視界はぐるりと入れ替わり、いつの間にやら彼の顔がはっきりと見えた。

「あれ?」

「はぁ…、シルヴィが可愛過ぎる。明日もゆっくりしようね?」

「え、…え?」


にっこりと微笑む彼に逆らえる人なんて居るのだろうか。

私の白百合様は今日も美しく咲いている。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

ランゲルハンス

パパったら!!!!

もわゆぬ
2020.06.04 もわゆぬ

少しだけタイミングが悪いパパです😂

解除
煌澤明
2020.03.09 煌澤明
ネタバレ含む
もわゆぬ
2020.03.09 もわゆぬ

ありがとうございます✨
こちらはゆっくり更新ですので、メインが終わるまで気長にお待ち下さい🙇‍♂️

解除
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

公爵子息の母親になりました(仮)

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,207pt お気に入り:3,339

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:681pt お気に入り:9,824

ちびヨメは氷血の辺境伯に溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:42,624pt お気に入り:4,698

【完結】この愛に囚われて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:817

ドッペル 〜悪役令嬢エレーヌ・ミルフォードの秘密

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:523

竜の巣に落ちました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:170

裏切られた氷の聖女は、その後、幸せな夢を見続ける

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:878

【完結】王太子の側妃となりました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:312pt お気に入り:6,019

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。