【本編完結】発明家を目指したら、見初められました!?

もわゆぬ

文字の大きさ
3 / 47

2

しおりを挟む

コンコン

「お父様、お呼びですか?」

『入りたまえ』


「失礼します」

「そこに座りなさい」

「はい、お父様」


私は言われるがままに席に座る。
お父様の隣にはお母様も居た。

この日が遂に来てしまった。何故呼ばれたのか、私は知っている。

お父様は威厳の有るお顔で眉間に皺をたっぷりと寄せて、一枚の紙を机に置いた。

「…アンバート侯爵がロレッタを嫁に欲しいと言って来ている。何故こんな大物から…、うちの娘に…」

「ロレッタ、良かったわね~!!あのアンバート侯爵様よ?お母様とっても嬉しいわ~♡皆様に自慢しなきゃ♡」

「ち、ちょっと母さんは黙っててくれないか」

「あら。では、ロレッタの旦那様にアンバート様以上の方が居るの?」

「何を言っている!うちの娘は、嫁になんぞやらん!!」

「はぁ……、それこそ何言ってるのかしら。
娘とは嫁に行くものよ。年齢も有るし、それに今までの相手だったら断る事が出来たけれど、相手は格上。今回ばかりは諦めなさいな」

「ぅぐっ」


今まではお父様やお母様がお断りして来たのを知っている。
私はこんな感じだ。変な発明ばかりしている、親としても心配なのだろう。
お父様が私を溺愛している為に許されて来てしまい、適齢期ギリギリの18歳になってしまっているのだ。

「それよりも、ロレッタ。貴女はどうなの?
もし嫌で有れば、お父様もお母様も頑張るわ」

「お母様…」

お母様は私を真摯に見詰めている。そんな愛情が、何だかとても嬉しい。


「私、アンバート侯爵様の元へお嫁に行きます」

「ロレッタ!」

「お父様、今まで本当に有難う御座います。私を守り、育てて頂きました。
そろそろ恩返ししたいと思っていたのです。アンバート侯爵様は素敵な方とお聞きしております、どうぞお受けして下さい」

「良い決断ですね、ロレッタ。あなた、ロレッタの意見を尊重してあげましょう」

お母様は優しくお父様の肩を抱いた。
暫くの沈黙の後、お父様は深く溜息をついた。

「……もし嫌な事をされたら、直ぐに帰ってくるのだぞ」

「有難う御座います、お父様」




******


数日後ーーー


「キルフェット伯爵、伯爵夫人。この度は、婚姻をお受け頂き有難う御座います」

「いやはや、何処でうちの娘を知ったかは存じませんが愛娘でしてね。まさか、人気者の貴方様にこの様な形でお渡しする事になるとは思っていませんでしたよ」

「…あなた。申し訳御座いません、アンバート侯爵様。この人ったら、この歳で娘を取られて拗ねて居るのです。お気になさらず」

「こ、こら!」

「いえ、大切なお嬢様です。私はどの様な事を言われても良いと思っています」

「あら」

「精一杯、皆様の分も大切にする事を誓いましょう」

「……宜しく頼みます」



両親の後ろでヒヤヒヤと話を聞いていた私は、ホッと胸を撫で下ろした。

まさか、あの出会いでこんな事になるなんて思ってもいなかった。


「(にしても、『大切にする事を誓いましょう』ですって………。)」


私は全身真っ赤になりながら羞恥に耐えている。
今日は侯爵様が私を迎えに来て下さったのだ。
胸が詰まった様にドキドキして弾けてしまいそう。


私は、すっかりあの時から侯爵様に恋をしている。


あの時侯爵様は、私に実は…と色々話してくれた。

まず、独身で侯爵という地位故に日々ご令嬢方から追いかけ回されていて仕事に支障をきたしている事。
内務の仕事もそれなりに忙しく、癒しが足りない事。

そして、私の発明品と私がそれを語る姿を見て侯爵様はとても癒されたと言うのだ。

「君は、知っていたのに私に媚びる様な素振りも無い。私の元で自由に発明をしてくれたら良い。
少しだけ煩い家族だが、珍しい物が皆好きでね。きっと君の事も受け入れてくれる。
不自由はさせない。是非、妻になって頂きたい」

侯爵様は真っ直ぐ私を見る。

誰もが望む甘やかな物では無い、合理的で正直過ぎる物だった。

けれど、私は嬉しかった。
私を必要としてくれた事が。

いつか大発明をしようとはしているが、それ迄は誰かの重荷にしかなれないような私を、だ。


素敵な方だと思った。
聞き上手で、私の発明を馬鹿にしない人。

ドキドキと胸が高鳴り、頬が紅くなる。

私はきっとこの方を好きになる。
いや、もう好きだ。


出会ってまだ一時間も経っていないが、こんなに素敵な方からのプロポーズを受けない人なんて居るのかしら。答えは否。


「はい、不束者ですが宜しくお願い致します」

「良かった。では、後日君の家に書簡を届ける。待っていて欲しい」

この人の奥さんになれるだなんて、まるで夢なのではないか。


そう、書簡が来たとて今日まで夢だと思っていました。


ですが、これは現実の様です。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

アヒルの子~元王女は世界で一番憎い人と結婚します~

有楽 森
恋愛
 前時代の遺物が数多く残る終わりの国、鳥人の王女アイナの為の祝賀会の準備が進められている中、アイナは本人は、北の保養地を訪れていた。  そこで出会った同じ鳥人の少年に、アイナは恋をする。しかしアイナには世間には秘密の婚約相手がいた。しかもアイナは、幼い頃から課せられた《王女としての使命》から婚約者を憎んでいた。  少年との思い出を胸にしまい、ままならない現実に向き合うアイナ。  城に戻るが《少年との思い出》が《王女としての使命》を阻み、次第にアイナを追い詰め苦しめていく。  本作品は結婚からスタートしません。  鳥人間や羊人虫人などの表現が出てきますが、普段の見た目は普通の人間とあまり変わず、羽があったり(羽は仕舞える)角が生えていたといった程度です。なので、獣人要素は薄目です。  作者は恋愛冒険ファンタジーが好きなので、戦闘、流血があります。本編はシリアスです。ご注意下さい。  一章、二章まで完結しております。三章は恋愛薄目、戦闘描写は強めです。シリアスですが、最後はハッピーエンドです。

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

処理中です...