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第三話 ガリア学院
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西から東にあるガリアに行くにはあまり時間がかからなかった。
馬車で1時間ほどで、ガリアにあるガリア学院に着いた。
時刻は夕方で、もうすでに授業は終わっているが、アーニャ先生の担当するクラスの皆は俺を待っているらしい。
道中、紙に何やら書いていたと思えば、このことのようで、紙飛行機魔法を使いクラスに手紙を送っていたのだ。
「教室に入る前に私が担当するクラスについて話そうと思う」
アーニャ先生は教室の扉の前で足を止めると、俺にそう言っていた。
「私のクラスは2組。その名の通り、2位ということになる。この学院ではパーティとしての強さ、ダンジョンにどれほど深く潜り込めるかで順位付けが決まる。そして私はアラスに期待している。だから君は私が集めた推薦組のパーティーに入って欲しいの」
アーニャ先生はそう言うと、何か忘れていたことを思い出したよな表情になると、
「ああ! 安心して。うちの学院のパーティーは4人と決まってるけど、ちゃんとアラスが来る前に一人追い出しておいたから。所詮は数合わせだったから」
そういって、優しく微笑むアーニャ先生が怖くなる。
「あとはねー。うちの学院についても話してなかったわね。ラリアでは食事もお金もすべてが支給されていたと思うけど、ここではダンジョンでの活躍でお金が支給されるから。まぁ、稼がなくても最低限の衣食住くらいは保障されてるけど、豚小屋で寝たくないでしょ? そういうことよ」
アーニャ先生は自らの発言を疑問に思ってはいないらしく、涼しい顔をしていた。
俺はいよいよ実力主義の学院に来たのだと実感する。
「あとは授業に出席する必要もないから。全てはダンジョンでの結果が全て。何か質問ある?」
「いえ、特には」
本当は聞きたいこともあったのだが、質問するたびに恐ろしい答えが返ってきそうだから俺は質問しなかった。
「そう。じゃあ、ご対面ね」
アーニャ先生は教室の扉を開ける。
すると、
「待ってましたー!! 我らが期待の4人目の推薦組!!」
「アーニャっちから聞いたよー! めちゃくちゃ強いんだってー! 私たちの生活費もよろしくね」
「おおーやはり推薦組はオーラが違うな、オーラが!!」
教室には30人ほどいて、皆は俺を見るなり拍手で迎え入れてくれていた。
俺はその慣れない歓迎に、愛想笑をすることしかできずにいると、
「今日は豪華な夕食を用意したわ! もちろん、私のおごりよ」
そう言い、指をパッチンと鳴らしていた。
すると、どこで待機していたのか料理が開け放たれたドアから次々と浮遊して運ばれてくる。
「流石アーニャっち! 優しい!!」
「そりゃー、大事な教え子だからねー!!」
既に出来上がっていたクラスに溶け込めるはずもなく、ただそれを壇上の上から見ていると、常日頃運動でもしてそうな爽やかな短髪の男が話しかけてきた。
「アーニャっちは自己中心的だからなー。アラスが戸惑っていることなんてお構いなしさ」
「君は?」
「ああ、そうだったな。俺の名前はエラルド! 推薦組でパーティーのリーダーをしている。アラスもよくこんな学院に来たな。ここは大変だぞ!」
馴れ馴れしく、でも、人がよさそうにニコニコしながら言うエラルド。
「そうは見えないけど。皆元気そうで活気がすごいある」
そう、教室に入った瞬間わかった。
皆ニコニコと笑っているのだ。
すると、エラルドは大笑いをしていた。
「元気そう、か! 傍から見るとそうなのかもな。でも、余裕がないから笑うしかないんだ。特にここ最近は最下位の5組にも抜かされそうな勢いでな。それに......」
「それに?」
エラルドは曇った表情をしていた。
「いや! なんでもないさ! それより、こっちこいよ! 推薦組の二人が待ってる。あ! 先に言っとくけど、変人だけど気にしないでくれ」
エラルドの発言から察するにこの学院はかなり厳しい学校というのは分かったが、実感できなかった俺はエラルドが言いかけた言葉を尋ねる気にもならず、俺はエラルドの後をついていった。
そこには腕組をしながらむすっとした表情の銀髪美少女と眼鏡をかけ、ゆるふわと言った表現が似合う、これまた美少女がいた。
「紹介するよ。こっちの銀髪がリーフェ。んで、眼鏡をかけたほうがユラ」
「よろしくお願いします、アラスくん」
「ああ、よろしく」
丁寧にお辞儀をするユラ。
それを見て、『ああ、なんだ。変人じゃないじゃないか』と思う。
だが、リーフェは違った。リーフェは俺のことをむすっとしながら見つめていた。
その視線に何も悪いことをしていないのに、気まずくなってくる。
「おい、リーフェ。これはルールなんだ。お前がいくら強かろうと関係ない。仲間になるんだ。挨拶くらい――」
「うるさいわね! 分かってるわよ!」
リーフェは何故か俺の方を向いたままそう言うと、
「よろしく。でもね、私一人でダンジョンなんて攻略できるんだから! あんたがいくら強くても私の邪魔はしないで」
そう言う、むすっとした表情のままのリーフェの視線が怖くて俺は視線を外した。
何かすれば噛みつかれそうで、この先こんなのと過ごさなければいけないのかと思う。
「ごめんなー。リーフェはいつもこうなんだ」
「ふんっ! あんたも私のダンジョン攻略の邪魔はしないでよね」
「へいへい」
いつものことだよと肩をすくめたエラルド。
その光景を見て俺は苦笑いすることしかできなかった。
そんなちょっと気まずい空気を感じていると、おれの袖が何かに引っ張られている。
俺は袖口を見ると、小さく白い手が袖を引っ張っている。
「ねえねえ、アラスくん。アラスくんはダンジョン好き?」
ユラはまるで小動物が命乞いしているかのような上目遣いで俺を見ていた。
「ダンジョン好き?」なんて尋ねられたことは初めてだし、好きではない。
ダンジョンは恐ろしいところという認識だ。
だが、ユラはきっとダンジョンが好きなのだろう。
だから俺にそのことを尋ねたのだ。
「ま、まぁまぁかな」
俺は嘘が下手だった。
声は平坦でコミュニケーション能力がある人間なら、俺が嘘を言っているということを見抜くだろう。
しかし、ユラは違った。
「私はね、ダンジョン大好きなの。特に階層を重ねるごとに背筋が凍るような雰囲気が味わえるでしょ? あれ、たまらないの」
ユラは呼吸が荒くなり、はぁはぁと言いながらそう言っていた。
前言撤回。やはりユラも変人だった。いや、狂気さえ感じる。
「だから言ったろ。変人ばかりだって」
エラルドは俺の方に手を置くと、そう言っていた。
その感覚に俺は安心感を覚える。
「ああ、そうみたいだ」
リーフェとユラには聞こえないように小声で言う。
「まぁ、こんなんだからさ、俺たちは推薦組のくせに最弱なんて言われてんだわ」
「最弱?」
「そうさ。最弱。アラスが加わったところで変わりはしないと思うわ」
エラルドは深く嘆息した。
「心外ね。あんたたちが私のペースについてこれないだけよ」
リーフェはエラルドの発言にむっとしていた。
「わかったわかったって」
エラルドはリーフェを軽くあしらうと、
「ま! それはダンジョンに潜るときにわかるさ。それより、今日はアーニャっちのおごりだ。食わないのは損。食べようぜ」
そう言うとエラルドは席に座り、肉を頬張っている。
俺はその光景を見て、ソンネ達ともこういう時があったのだと思う。
俺がまだ期待されていた頃の話だ。
俺たち5人の中は良好で、常に一緒にいた。
懐かしく思うってことは未練なんてものがあるのだろうか。
おそらく、あると思う。
だが、今となってはそれよりも憎しみのほうが大きい。
この場所は実力が全てで、ラリアから来た俺でも歓迎してくる。
多少変わっているリーフェやサラに対して不安に思うこともあるが、こんな俺でも一応は迎え入れてくれているのだ。
この学院にきてよかった。そう実感した。
馬車で1時間ほどで、ガリアにあるガリア学院に着いた。
時刻は夕方で、もうすでに授業は終わっているが、アーニャ先生の担当するクラスの皆は俺を待っているらしい。
道中、紙に何やら書いていたと思えば、このことのようで、紙飛行機魔法を使いクラスに手紙を送っていたのだ。
「教室に入る前に私が担当するクラスについて話そうと思う」
アーニャ先生は教室の扉の前で足を止めると、俺にそう言っていた。
「私のクラスは2組。その名の通り、2位ということになる。この学院ではパーティとしての強さ、ダンジョンにどれほど深く潜り込めるかで順位付けが決まる。そして私はアラスに期待している。だから君は私が集めた推薦組のパーティーに入って欲しいの」
アーニャ先生はそう言うと、何か忘れていたことを思い出したよな表情になると、
「ああ! 安心して。うちの学院のパーティーは4人と決まってるけど、ちゃんとアラスが来る前に一人追い出しておいたから。所詮は数合わせだったから」
そういって、優しく微笑むアーニャ先生が怖くなる。
「あとはねー。うちの学院についても話してなかったわね。ラリアでは食事もお金もすべてが支給されていたと思うけど、ここではダンジョンでの活躍でお金が支給されるから。まぁ、稼がなくても最低限の衣食住くらいは保障されてるけど、豚小屋で寝たくないでしょ? そういうことよ」
アーニャ先生は自らの発言を疑問に思ってはいないらしく、涼しい顔をしていた。
俺はいよいよ実力主義の学院に来たのだと実感する。
「あとは授業に出席する必要もないから。全てはダンジョンでの結果が全て。何か質問ある?」
「いえ、特には」
本当は聞きたいこともあったのだが、質問するたびに恐ろしい答えが返ってきそうだから俺は質問しなかった。
「そう。じゃあ、ご対面ね」
アーニャ先生は教室の扉を開ける。
すると、
「待ってましたー!! 我らが期待の4人目の推薦組!!」
「アーニャっちから聞いたよー! めちゃくちゃ強いんだってー! 私たちの生活費もよろしくね」
「おおーやはり推薦組はオーラが違うな、オーラが!!」
教室には30人ほどいて、皆は俺を見るなり拍手で迎え入れてくれていた。
俺はその慣れない歓迎に、愛想笑をすることしかできずにいると、
「今日は豪華な夕食を用意したわ! もちろん、私のおごりよ」
そう言い、指をパッチンと鳴らしていた。
すると、どこで待機していたのか料理が開け放たれたドアから次々と浮遊して運ばれてくる。
「流石アーニャっち! 優しい!!」
「そりゃー、大事な教え子だからねー!!」
既に出来上がっていたクラスに溶け込めるはずもなく、ただそれを壇上の上から見ていると、常日頃運動でもしてそうな爽やかな短髪の男が話しかけてきた。
「アーニャっちは自己中心的だからなー。アラスが戸惑っていることなんてお構いなしさ」
「君は?」
「ああ、そうだったな。俺の名前はエラルド! 推薦組でパーティーのリーダーをしている。アラスもよくこんな学院に来たな。ここは大変だぞ!」
馴れ馴れしく、でも、人がよさそうにニコニコしながら言うエラルド。
「そうは見えないけど。皆元気そうで活気がすごいある」
そう、教室に入った瞬間わかった。
皆ニコニコと笑っているのだ。
すると、エラルドは大笑いをしていた。
「元気そう、か! 傍から見るとそうなのかもな。でも、余裕がないから笑うしかないんだ。特にここ最近は最下位の5組にも抜かされそうな勢いでな。それに......」
「それに?」
エラルドは曇った表情をしていた。
「いや! なんでもないさ! それより、こっちこいよ! 推薦組の二人が待ってる。あ! 先に言っとくけど、変人だけど気にしないでくれ」
エラルドの発言から察するにこの学院はかなり厳しい学校というのは分かったが、実感できなかった俺はエラルドが言いかけた言葉を尋ねる気にもならず、俺はエラルドの後をついていった。
そこには腕組をしながらむすっとした表情の銀髪美少女と眼鏡をかけ、ゆるふわと言った表現が似合う、これまた美少女がいた。
「紹介するよ。こっちの銀髪がリーフェ。んで、眼鏡をかけたほうがユラ」
「よろしくお願いします、アラスくん」
「ああ、よろしく」
丁寧にお辞儀をするユラ。
それを見て、『ああ、なんだ。変人じゃないじゃないか』と思う。
だが、リーフェは違った。リーフェは俺のことをむすっとしながら見つめていた。
その視線に何も悪いことをしていないのに、気まずくなってくる。
「おい、リーフェ。これはルールなんだ。お前がいくら強かろうと関係ない。仲間になるんだ。挨拶くらい――」
「うるさいわね! 分かってるわよ!」
リーフェは何故か俺の方を向いたままそう言うと、
「よろしく。でもね、私一人でダンジョンなんて攻略できるんだから! あんたがいくら強くても私の邪魔はしないで」
そう言う、むすっとした表情のままのリーフェの視線が怖くて俺は視線を外した。
何かすれば噛みつかれそうで、この先こんなのと過ごさなければいけないのかと思う。
「ごめんなー。リーフェはいつもこうなんだ」
「ふんっ! あんたも私のダンジョン攻略の邪魔はしないでよね」
「へいへい」
いつものことだよと肩をすくめたエラルド。
その光景を見て俺は苦笑いすることしかできなかった。
そんなちょっと気まずい空気を感じていると、おれの袖が何かに引っ張られている。
俺は袖口を見ると、小さく白い手が袖を引っ張っている。
「ねえねえ、アラスくん。アラスくんはダンジョン好き?」
ユラはまるで小動物が命乞いしているかのような上目遣いで俺を見ていた。
「ダンジョン好き?」なんて尋ねられたことは初めてだし、好きではない。
ダンジョンは恐ろしいところという認識だ。
だが、ユラはきっとダンジョンが好きなのだろう。
だから俺にそのことを尋ねたのだ。
「ま、まぁまぁかな」
俺は嘘が下手だった。
声は平坦でコミュニケーション能力がある人間なら、俺が嘘を言っているということを見抜くだろう。
しかし、ユラは違った。
「私はね、ダンジョン大好きなの。特に階層を重ねるごとに背筋が凍るような雰囲気が味わえるでしょ? あれ、たまらないの」
ユラは呼吸が荒くなり、はぁはぁと言いながらそう言っていた。
前言撤回。やはりユラも変人だった。いや、狂気さえ感じる。
「だから言ったろ。変人ばかりだって」
エラルドは俺の方に手を置くと、そう言っていた。
その感覚に俺は安心感を覚える。
「ああ、そうみたいだ」
リーフェとユラには聞こえないように小声で言う。
「まぁ、こんなんだからさ、俺たちは推薦組のくせに最弱なんて言われてんだわ」
「最弱?」
「そうさ。最弱。アラスが加わったところで変わりはしないと思うわ」
エラルドは深く嘆息した。
「心外ね。あんたたちが私のペースについてこれないだけよ」
リーフェはエラルドの発言にむっとしていた。
「わかったわかったって」
エラルドはリーフェを軽くあしらうと、
「ま! それはダンジョンに潜るときにわかるさ。それより、今日はアーニャっちのおごりだ。食わないのは損。食べようぜ」
そう言うとエラルドは席に座り、肉を頬張っている。
俺はその光景を見て、ソンネ達ともこういう時があったのだと思う。
俺がまだ期待されていた頃の話だ。
俺たち5人の中は良好で、常に一緒にいた。
懐かしく思うってことは未練なんてものがあるのだろうか。
おそらく、あると思う。
だが、今となってはそれよりも憎しみのほうが大きい。
この場所は実力が全てで、ラリアから来た俺でも歓迎してくる。
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