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第二十七話 真実が明らかになる
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「ああ、残念だ。人の死はもう見たくもない」
わざとらしく頭を抱えたエリスは、そう言った。
アーニャ先生としての仮面の姿はもうない。白銀の髪を揺らしながら、口元を三日月のように釣り上げている人物は狂った実力主義の指導者、エリスだ。
場内からの批判の声なんてものはエリスにも届いていない。エリスは、この女は最初からだましていたのだろう。何もかもすべて。
「ふざけるなっ!! エリス、お前だけは許さない!!」
「許さない、か。別にそれでもいい。君が約束を破れることはないからな」
エリスは不敵に笑うと、俺の言葉を遮り、エミルを見て顎で俺たちを指した。
そんなエミルは顔をしかめながら、ビスマルクに剣を突きつけている。
「姉さん! これは一体どういうこと!?」
「一体どういうこと? エミル。お前が、それを言うのか」
エミルの鋭い視線もエリスは気にしなかった。
エリスはエミルの言葉を鼻で笑うと、
「全ては究極のためだ。そうだろう? ガリスという国が出来上がった理由はなんだ? おじい様の理念は? 最強の人類を作り上げること。そのためなら、弱者はいくらでも切り捨てていい」
「だからと言って、やりすぎだ!! 姉だからと言っても、これは流石に許せる行為じゃない!」
聞いたこともないように声を荒げたエミルは、エリスを睨みつける。
だが、エリスは不敵に笑ったまま、エミルを眺めていた。
「狂っておる。フォールド姉妹! 貴様! 今自分が何をしているのか、分かっているのか!」
俺が口をはさむより早くにエリスに剣を突きつけられているアーラン・ラリアの声は場内に響き渡った。
するとエリスは嘆息している。
「やれやれだよ、アーラン・ラリア。貴様は、いつまで堕落した豚でいるつもりだ。でも、まぁ、こうなったら今、全てを話すしかない。エミル、ビスマルクをアラス達のところに運んでくれ」
そう言われたエミルは、エリスを睨みながらも俺たちへの元に運ぶ。
「さて! 真実を話そう!!」
にやりと笑ったエリスは俺を見つめながら、手足を縛られたビスマルクを指さしていた。
俺は指さされたビスマルクを見る。すると再びエリスの声が聞こえてくる。
「ああ、違うのだ。アラス。全てを話す。だからその鋭い視線を抑えてくれないか?」
「今さら何をっ!!」
だが、エリスは俺の言葉を無視すると今度はリーフェを見ていた。
「私は約束は守る。だから全てを話そう。だが、最初に行うのはリーフェとの契約遂行だ」
するとリーフェは、驚きつつもビスマルクに近寄り、魔法剣を生成して、首元に剣先を突きつける。
そんなリーフェの表情はきつく、目線のみで男を切り裂きそうなほどだった。
「ライズ家はラリアの大貴族だった。あの中央に座る屑の側近として栄えてきたの。でも、ライズ家はおじい様の時代から変わった。『庶民にも優しく』そう言う方針に変わったの。だからあの屑の先代の時も、あの屑の時もライズ家は苦しでいた。だから、父の友達だった弱小貴族のビスマルクが、両親を殺して、ライズ家を継いでも何も文句は言わなかったのでしょうね」
そう言うと、ビスマルクの首元を魔法の剣で薄く切る。
「ま、まて! 私は、私は本当は君の父さんとずっと親友でいたかったんだ」
そんなビスマルクの言葉をリーフェは聞く耳を持つわけもない。
リーフェはビスマルクの頬を平手打ちしていた。
「親友でいたかった? 忘れたの! 私がクローゼットの中に隠れていることを! 両親があんたに殺されるところを見ていたのよ! よくもそんな口が!」
そう言うとリーフェはビスマルクの頬を再び平手打ちする。
「それは......仕方がなかったんだ! 君の両親は反逆者で!」
「ふざけるなっ! 皆に平等に接していたお父様とお母さまが反逆者なわけあるか!」
リーフェそう言うとは力強く、剣を両手で大きく振りかぶっていた。
「ま、まて!! 本当に待ってくれ!! 本当のことを話す!!」
ビスマルクの渋い顔は涙と鼻水でいっぱいだった。
「本当のこと? 言ってみなさいよ。まぁ、十中八九しょうもないことなのだろうけど」
「ああ、本当のことだ。6年前、私はあの女に言われたんだ。ライズの人間は、王を裏切ろうとしている。実力主義の国に変えようとしているとな。証拠だってある」
ビスマルクは顎でエリスを指していた。
「やれやれ、ビスマルク。これは約束だろう。約束は守るから約束なんだ。ったく。だから、ラリアの豚共は嫌いなんだ」
エリスはそう悪態つくと、きつく睨んでいるリーフェに対して、話し始めた。
「そうだ。私が仕向けた。予定とは違くなったが、もうすべて話そう」
エリスはそう言うと、俺を見てにやりと微笑んでいる。
「今から6年前。ラリアで10歳でダンジョンに潜り、生還した少年がいた。その男はラリア王家の目に留まり、城に招かれた。その理由はその少年の母親はラリア王家の血を引いているからだ。でも、その少年は違った。ラリアから遠く離れた蛮族の血を引いているなんてどうでもいいことをアーランは嫌った。でも同時に利用価値があるとも考えたんだ。ダンジョンを調査するために。だから、強力なラリアの兵士に育てようとした。だが、生憎それは私の手によって、その少年の耳に入った」
「貴様だったのか! エリス!」
アーランの大きな声が魔法拡声器によって、城内に響き渡たる。
だが、エリスはそんなアーランの首を魔法の剣で少し切ると、再び話始めた。
「だから少年は逃げ出そうとした。でも失敗した。そして、母はその時にアーランによって殺され、少年はラリア王家に伝わる忘却魔法により記憶を失い、ラリア学院に入学。その時、私はラリア人はなんておろかだと思ったよ。馬鹿な貴族連中は雑種の少年を嫌うに決まっているからな。だから、私の誘導もうまくいったよ。その少年には魔法を教えるなと。なあ、アーランあの無能な教師共は今どうしている?」
エリスはアーランの顔を覗き込んでいるようだった。
「民の前で答えるようなことではない」
そう言い淀みながら答えるアーランに、エリスは不気味な笑みを浮かべ大笑いをしていた。
俺はそれを見てゾっとした。おそらく、人が死んだというのに、嬉しそうに笑っているのだ。
「あの教師共は国家転覆の罪で処刑されたよ。可哀想にな、私に騙されたばかりに......」
エリスは再び頭をわざとらしく抱え込んで、恍惚とした表情で俺を見つめていた。
俺はそんなエリスとアーランに強い憎しみと怒りが沸いてきた。
今すぐにでも顔を百発殴って、ぼこぼこにしたい。そんな思いが。
「まぁ、そのおかげで私のアラスをガリア学院に入学させることは簡単だった。そして、その間に私がやったことは、ビスマルクをそそのかしリーフェをガリアに入学させ、初めから孤児にしておいたユラが偶然にもアラスの幼馴染だったから、ガリアに入学させ、後は適当に強そうな魔道具使いのエラルドを入学させて完成だ。リーフェは万能なアラスの盾、ユラはアラスの精神的支柱、エラルドは...... まぁ、男だろう?友人だ。さらに妻として最強の妹を加えれば最強の出来上がりだ」
不敵に笑うエリスは俺を見ていた。
俺はそんなエリスが許せなかった。
あいつは、あいつだけは許せない。ソンネもリーフェもユラもエラルドも、そして俺も母上も、こいつによって大事な物が奪われた。
今さら、返せと言っても甦ってはくれない、そんな人たちを。
だから、もう限界だった。百発顔面を殴る? それどころじゃ済まない、一生をかけて苦しませたい。じりじりと爪が一本ずつはがされていくような痛みを、一生をかけて。
俺は崩れ落ちたユラや、無気力に項垂れているエラルドをみて、その衝動は更に高まった。
俺は闘技場中央から空歩を使い、エリスのところに行き、まずは右手をはねる。
その予定だった。それはリーフェによって止められていた。俺の右腕はリーフェによって絡みつくように縛られていた。
「アラス、冷静になりなさい。あなたが行ったところで、エリスは殺せないわ。あなたはまだ契約を果たしていない。あの人の契約の魔法には抗えない。だからまずは私に背負わせて」
冷静なリーフェはそう言うと、深呼吸するように俺に指示している。
俺はそんなリーフェをみて、落ち着いた。だから、同じく深呼吸をして、頷いた。
すると、リーフェは見たことのないような笑顔で、にっこりと笑い返してくれていた。
「ビスマルク! 私の妹はどこ?」
「ああ、リーファのことか! ならば屋敷で待っているだろう! ただ、屋敷に近寄ればリーファの命はないぞ? だから、この縄を解きなさい!」
「その必要はないかな、リーフェちゃん。妹のことなら私が解決したよ。姉さんの命令だったけど、あの人は約束は守る人だから信用してほしい」
同じく隣にいたエミルは深々と頭を下げながら、そう言っていた。
「そっか。なら、私も覚悟を決める。アラスの仲間として、実力主義、血統主義のこの国たちを壊す。でしょ?」
俺はリーフェにそんなことを話したことはなかったというのに、リーフェは俺の覚悟を知っていた。
そんなリーフェは首を傾げながら俺に許可を求めるように、俺の事を見ている。だから、俺は首を縦に振った。
ソンネのこと、リーフェの両親のこと、ユラの両親のこと、エラルドのこと、そして俺の母と祖母のこと。
全ては行き過ぎた実力主義のガリアと、血統主義のラリアのせいだ。
だからこそ、俺たちは守るべき仲間のため、これからのために許してはいけない。
その結果、ソンネのようなことが今後起こっても、突き進まなければならない。
それが、俺たちが背負った覚悟と責任。
「やめてくれ!! おい! そうだ! 金をやろう金! それに、当主の座も返す!!」
ビスマルクは手足を縛られたまま、頭を地面にこすりつけていた。
そんなみっともない姿のビスマルクを、リーフェは許すはずもなく、大きく振りかぶられた魔法の剣により首は落とされた。
わざとらしく頭を抱えたエリスは、そう言った。
アーニャ先生としての仮面の姿はもうない。白銀の髪を揺らしながら、口元を三日月のように釣り上げている人物は狂った実力主義の指導者、エリスだ。
場内からの批判の声なんてものはエリスにも届いていない。エリスは、この女は最初からだましていたのだろう。何もかもすべて。
「ふざけるなっ!! エリス、お前だけは許さない!!」
「許さない、か。別にそれでもいい。君が約束を破れることはないからな」
エリスは不敵に笑うと、俺の言葉を遮り、エミルを見て顎で俺たちを指した。
そんなエミルは顔をしかめながら、ビスマルクに剣を突きつけている。
「姉さん! これは一体どういうこと!?」
「一体どういうこと? エミル。お前が、それを言うのか」
エミルの鋭い視線もエリスは気にしなかった。
エリスはエミルの言葉を鼻で笑うと、
「全ては究極のためだ。そうだろう? ガリスという国が出来上がった理由はなんだ? おじい様の理念は? 最強の人類を作り上げること。そのためなら、弱者はいくらでも切り捨てていい」
「だからと言って、やりすぎだ!! 姉だからと言っても、これは流石に許せる行為じゃない!」
聞いたこともないように声を荒げたエミルは、エリスを睨みつける。
だが、エリスは不敵に笑ったまま、エミルを眺めていた。
「狂っておる。フォールド姉妹! 貴様! 今自分が何をしているのか、分かっているのか!」
俺が口をはさむより早くにエリスに剣を突きつけられているアーラン・ラリアの声は場内に響き渡った。
するとエリスは嘆息している。
「やれやれだよ、アーラン・ラリア。貴様は、いつまで堕落した豚でいるつもりだ。でも、まぁ、こうなったら今、全てを話すしかない。エミル、ビスマルクをアラス達のところに運んでくれ」
そう言われたエミルは、エリスを睨みながらも俺たちへの元に運ぶ。
「さて! 真実を話そう!!」
にやりと笑ったエリスは俺を見つめながら、手足を縛られたビスマルクを指さしていた。
俺は指さされたビスマルクを見る。すると再びエリスの声が聞こえてくる。
「ああ、違うのだ。アラス。全てを話す。だからその鋭い視線を抑えてくれないか?」
「今さら何をっ!!」
だが、エリスは俺の言葉を無視すると今度はリーフェを見ていた。
「私は約束は守る。だから全てを話そう。だが、最初に行うのはリーフェとの契約遂行だ」
するとリーフェは、驚きつつもビスマルクに近寄り、魔法剣を生成して、首元に剣先を突きつける。
そんなリーフェの表情はきつく、目線のみで男を切り裂きそうなほどだった。
「ライズ家はラリアの大貴族だった。あの中央に座る屑の側近として栄えてきたの。でも、ライズ家はおじい様の時代から変わった。『庶民にも優しく』そう言う方針に変わったの。だからあの屑の先代の時も、あの屑の時もライズ家は苦しでいた。だから、父の友達だった弱小貴族のビスマルクが、両親を殺して、ライズ家を継いでも何も文句は言わなかったのでしょうね」
そう言うと、ビスマルクの首元を魔法の剣で薄く切る。
「ま、まて! 私は、私は本当は君の父さんとずっと親友でいたかったんだ」
そんなビスマルクの言葉をリーフェは聞く耳を持つわけもない。
リーフェはビスマルクの頬を平手打ちしていた。
「親友でいたかった? 忘れたの! 私がクローゼットの中に隠れていることを! 両親があんたに殺されるところを見ていたのよ! よくもそんな口が!」
そう言うとリーフェはビスマルクの頬を再び平手打ちする。
「それは......仕方がなかったんだ! 君の両親は反逆者で!」
「ふざけるなっ! 皆に平等に接していたお父様とお母さまが反逆者なわけあるか!」
リーフェそう言うとは力強く、剣を両手で大きく振りかぶっていた。
「ま、まて!! 本当に待ってくれ!! 本当のことを話す!!」
ビスマルクの渋い顔は涙と鼻水でいっぱいだった。
「本当のこと? 言ってみなさいよ。まぁ、十中八九しょうもないことなのだろうけど」
「ああ、本当のことだ。6年前、私はあの女に言われたんだ。ライズの人間は、王を裏切ろうとしている。実力主義の国に変えようとしているとな。証拠だってある」
ビスマルクは顎でエリスを指していた。
「やれやれ、ビスマルク。これは約束だろう。約束は守るから約束なんだ。ったく。だから、ラリアの豚共は嫌いなんだ」
エリスはそう悪態つくと、きつく睨んでいるリーフェに対して、話し始めた。
「そうだ。私が仕向けた。予定とは違くなったが、もうすべて話そう」
エリスはそう言うと、俺を見てにやりと微笑んでいる。
「今から6年前。ラリアで10歳でダンジョンに潜り、生還した少年がいた。その男はラリア王家の目に留まり、城に招かれた。その理由はその少年の母親はラリア王家の血を引いているからだ。でも、その少年は違った。ラリアから遠く離れた蛮族の血を引いているなんてどうでもいいことをアーランは嫌った。でも同時に利用価値があるとも考えたんだ。ダンジョンを調査するために。だから、強力なラリアの兵士に育てようとした。だが、生憎それは私の手によって、その少年の耳に入った」
「貴様だったのか! エリス!」
アーランの大きな声が魔法拡声器によって、城内に響き渡たる。
だが、エリスはそんなアーランの首を魔法の剣で少し切ると、再び話始めた。
「だから少年は逃げ出そうとした。でも失敗した。そして、母はその時にアーランによって殺され、少年はラリア王家に伝わる忘却魔法により記憶を失い、ラリア学院に入学。その時、私はラリア人はなんておろかだと思ったよ。馬鹿な貴族連中は雑種の少年を嫌うに決まっているからな。だから、私の誘導もうまくいったよ。その少年には魔法を教えるなと。なあ、アーランあの無能な教師共は今どうしている?」
エリスはアーランの顔を覗き込んでいるようだった。
「民の前で答えるようなことではない」
そう言い淀みながら答えるアーランに、エリスは不気味な笑みを浮かべ大笑いをしていた。
俺はそれを見てゾっとした。おそらく、人が死んだというのに、嬉しそうに笑っているのだ。
「あの教師共は国家転覆の罪で処刑されたよ。可哀想にな、私に騙されたばかりに......」
エリスは再び頭をわざとらしく抱え込んで、恍惚とした表情で俺を見つめていた。
俺はそんなエリスとアーランに強い憎しみと怒りが沸いてきた。
今すぐにでも顔を百発殴って、ぼこぼこにしたい。そんな思いが。
「まぁ、そのおかげで私のアラスをガリア学院に入学させることは簡単だった。そして、その間に私がやったことは、ビスマルクをそそのかしリーフェをガリアに入学させ、初めから孤児にしておいたユラが偶然にもアラスの幼馴染だったから、ガリアに入学させ、後は適当に強そうな魔道具使いのエラルドを入学させて完成だ。リーフェは万能なアラスの盾、ユラはアラスの精神的支柱、エラルドは...... まぁ、男だろう?友人だ。さらに妻として最強の妹を加えれば最強の出来上がりだ」
不敵に笑うエリスは俺を見ていた。
俺はそんなエリスが許せなかった。
あいつは、あいつだけは許せない。ソンネもリーフェもユラもエラルドも、そして俺も母上も、こいつによって大事な物が奪われた。
今さら、返せと言っても甦ってはくれない、そんな人たちを。
だから、もう限界だった。百発顔面を殴る? それどころじゃ済まない、一生をかけて苦しませたい。じりじりと爪が一本ずつはがされていくような痛みを、一生をかけて。
俺は崩れ落ちたユラや、無気力に項垂れているエラルドをみて、その衝動は更に高まった。
俺は闘技場中央から空歩を使い、エリスのところに行き、まずは右手をはねる。
その予定だった。それはリーフェによって止められていた。俺の右腕はリーフェによって絡みつくように縛られていた。
「アラス、冷静になりなさい。あなたが行ったところで、エリスは殺せないわ。あなたはまだ契約を果たしていない。あの人の契約の魔法には抗えない。だからまずは私に背負わせて」
冷静なリーフェはそう言うと、深呼吸するように俺に指示している。
俺はそんなリーフェをみて、落ち着いた。だから、同じく深呼吸をして、頷いた。
すると、リーフェは見たことのないような笑顔で、にっこりと笑い返してくれていた。
「ビスマルク! 私の妹はどこ?」
「ああ、リーファのことか! ならば屋敷で待っているだろう! ただ、屋敷に近寄ればリーファの命はないぞ? だから、この縄を解きなさい!」
「その必要はないかな、リーフェちゃん。妹のことなら私が解決したよ。姉さんの命令だったけど、あの人は約束は守る人だから信用してほしい」
同じく隣にいたエミルは深々と頭を下げながら、そう言っていた。
「そっか。なら、私も覚悟を決める。アラスの仲間として、実力主義、血統主義のこの国たちを壊す。でしょ?」
俺はリーフェにそんなことを話したことはなかったというのに、リーフェは俺の覚悟を知っていた。
そんなリーフェは首を傾げながら俺に許可を求めるように、俺の事を見ている。だから、俺は首を縦に振った。
ソンネのこと、リーフェの両親のこと、ユラの両親のこと、エラルドのこと、そして俺の母と祖母のこと。
全ては行き過ぎた実力主義のガリアと、血統主義のラリアのせいだ。
だからこそ、俺たちは守るべき仲間のため、これからのために許してはいけない。
その結果、ソンネのようなことが今後起こっても、突き進まなければならない。
それが、俺たちが背負った覚悟と責任。
「やめてくれ!! おい! そうだ! 金をやろう金! それに、当主の座も返す!!」
ビスマルクは手足を縛られたまま、頭を地面にこすりつけていた。
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