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1巻 あやかしの妹が家族になります
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肝心の再婚にいろいろと問題が発生してしまったようだけれど、お父さんなりに私や野分さん、くり子の幸せを願っていることを知ることができてよかったかもしれない。おかげで冷静に考えることができそうだから。
幼い妹を認めてあげたいって気持ちと、今はまだ受け入れたくないって思いが、私の中でぶつかり合っている。すぐには答えが出てきそうになかった。
「お父さん。今は自分の感情が整理できてないの。だからくり子を私の妹として受け入れるかどうかはまだ決められない。でもこの家以外に、あの子が行くところがないのもわかるから、一時的に預かってる女の子ってことでいい? ゆっくり考えてみたいから」
心配そうに私を見ていたお父さんが、ほっとしたのがわかった。
「それでいいよ。ゆっくり考えてくれ。杏菜、ありがとう」
急にお母さんがいなくなってしまった幼女を、あっさり追い出すような真似はしたくないしね。きっと今はこれでいいんだと思う。
とりあえず今晩は私もお父さんも早めに休むことにした。
お父さんは先に寝ていたくり子と一緒に寝て、私は自分の部屋へ。今日はいろんなことがあったからか、あっという間に眠ってしまった。
半妖の妹のくり子は、私たちの家に突然やってきた。誰にも言えない秘密の暮らしは、こうして始まったのだ。
†
夢の中で私は、幼い少女だった。台所に立つお母さんの足元にまとわりつき、下からお母さんがすることを眺めるのが好きだった。
「お母さん、今日は何を作っているの?」
「杏菜の好きなハンバーグよ」
「やったぁ! あのね、粉がふいたジャガイモもある?」
「粉吹きいもね。杏菜はおイモ好きだもんね」
「うん!」
何気ない日常だったけれど、幸せな時間だった。
お母さんの足元にまとわりつくことはなくなっても、私の背丈がお母さんに追いついても、お母さんはずっと私のそばにいてくれる。そう思っていた。あたりまえの日常が、ある日突然なくなってしまうなんて、考えもしなかった。
「おかあ、さん……」
目から涙がにじみ、頬を伝って落ちていくのを感じる。誰かの手が、私の顔にふれた。
お母さん? お母さんなの?
小さくて、ぷにぷにの手だった。お母さんの手が、ぷにっとして小さいわけがない。
ゆっくり目を開けると、まず視界に入ってきたのは、牙が見え隠れする小さな口元。灰色の大きな瞳が、私をじっと見ている。頭には銀色の角が二本、ちょこんと生えていた。
「く、くり子ちゃん?」
一気に目が覚めた。寝ているところを、昨日会ったばかりの妹に見つめられていたら、驚くってものだ。
「おねいちゃん……」
灰色の瞳が不安そうに揺れている。
「どうしたの? 私に何か用事でも?」
ほっとしたような表情を見せたくり子は、直後に叫んだ。
「おねいちゃん、生きてう!」
顔をくしゃくしゃにさせ、にかっと笑う。無邪気な笑顔につられて、私もにへっと笑ってしまった。
私が生きて息をしてるってだけで、そんなにも嬉しいのだろうか? 身近な人が無事かどうか心配でたまらないのかもしれない。
「そういえば、お父さんは?」
「おとーしゃん、おちごと」
「おちごと? ああ、仕事ってことね。急な仕事が入ったの? ……って、ちょっと待って。お父さん!」
パジャマ姿であることも忘れ、慌てて父の姿を捜す。お父さんはすでに玄関で靴を履き、今まさに家を出ようとしていた。
「お父さん、待って!」
「ああ、杏菜。起きたか? おはよう。仕事でトラブルがあったらしいから、これから行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい……じゃなくて。私とあの子――くり子ちゃんをおいて仕事に行くつもり? 私、まだ受け入れられてないって、昨日の夜話したよね?」
「うん、わかってる。でも仕事でどうしても行かないといけないんだ。杏菜とくり子、ふたりが安心して暮らせるように稼がないといけないしな。なんとかまとまった休みがもぎとれるように相談してくるから、今日だけは頼む」
「待ってってば。私たちのために働いてくれるのはありがたいけど、まったく慣れてない幼女といきなりふたりだけって、私も困るよ」
「でも昨日の感じだと、くり子は杏菜に懐いてたよ。ごはんを作ってくれる人だって認識したんだろう。今日は土曜日だし、できるだけ早めに帰ってくるから。じゃあ行ってきます!」
そそくさと仕事に向かった父を追おうと玄関を飛び出しそうになったけれど、自分がまだパジャマ姿であることに気づき、やむなく扉を閉めた。
「お父さんのバカ。仕事だからって、いきなりふたりだけにしないでよ。今日一日どうすればいいわけ?」
工場で現場を管理する仕事をしている父は、勤務時間が不規則で、帰宅が遅くなることもある。それでも必ず帰ってくるし、遅くなる時は連絡をくれるから、今は父の帰宅を待つしかない。
「お、おねいちゃん……」
壁の向こうから顔だけのぞかせ、くり子が遠慮がちに声をかけてきた。灰色の瞳に涙がうっすらにじんでいる。
パジャマ姿でお父さんを追いかけて、しばし言い合いみたいになっていたから、怖くなってしまったのかもしれない。
「くり子ちゃん。その、びっくりさせてごめんね?」
くり子は銀色の角が生えた栗色の髪を揺らし、こくりと頷いた。そのまま無言で、私をじーっと見つめている。離れたところから様子をうかがう猫みたいだ。
「えっとね、くり子ちゃん。私に何か伝えたいこととかある?」
とりあえず聞いてみた。小さな女の子が自分の気持ちをしっかり伝えられるかどうか、私にはわからない。だが、接し方がわからないなら、本人に聞くしかない。
そもそも私は、幼女という存在に慣れていない。ずっとひとりっ子だったし、特に子どもが好きってわけでもない。昨夜はごはんだけは食べさせたけど、あとはどうしたらいいの? 幼女とふたり、どう過ごしたらいいわけ?
くり子は表情を変えぬまま、じーっと私を見ている。観察でもしているのかな?
「くり子ちゃん?」
返事はない。うーん。これはやみくもに刺激せず、そっとしておけばいいってこと? わからないなぁ。
「と、とりあえず。私、着替えてくるね?」
くり子に背中を向けた時だった。
「おねいちゃん……。おしょば、いってもいい?」
おしょば? そばを食べたいんだろうか? いや、違うな。「いってもいい」ってことは……
「ひょっとして、私の近くに来たいの?」
無表情だったくり子の顔が、ほんのり赤く染まり、恥ずかしそうにこくんと頷いた。きらきらと目を輝かせながら、私の返事を待っている。猫というより、人間に懐きたがっている子犬みたいだ。こんな時は、「おいで」って言えばいいのかな?
「えーっと。いいよ。私の近くに来ても。お、おいで?」
人間の子、いや、半妖の子に、「おいで」って言っていいんだろうか? でも他になんて伝えればいいの?
どうすればいいのかひとりで悩んでいると、いつの間にか、くり子がすぐそばに来ていた。
「くり子ちゃん?」
そっと名前を呼ぶと、くり子の顔がふにゃっと崩れた。
「おねいちゃん!」
私を見上げ、にまっと笑う。無邪気な笑顔だった。私のパジャマの裾を掴み、嬉しそうに体を寄せてくる。しっぽを振った犬が懐いてくる瞬間みたいだ。
か、可愛い……
幼女だからなのか、この子だからなのかわからないけど、私に甘えたいみたいだ。そんな仕草をされたら、きゅんとしてしまうじゃないの。
「って、いやいや、ちょっと待て、私。まだ妹って認めてないし! でもこの子に罪はないんだよねぇ……」
頭を抱えて葛藤してる私を、くり子はきょとんとした顔で見つめている。まだ小さいし、この子にあれこれ質問したら、かわいそうだよね。
「とりあえず。朝ごはんでも食べようか? くり子ちゃん」
くり子は嬉しそうに、こくこくと頷いた。ひょっとしたら、お腹が空いていたのかもしれない。だから寝ている私を起こしに来たのかな?
「今から朝ごはんを作るけど、くり子ちゃんは何がいい? パン? それともごはん?」
「えとね、おむしゅび!」
「おむしゅび? おむしゅび、おむすび……。ひょっとして、おにぎりのこと?」
おにぎりを握る動作を見せると、くり子はうひゃひゃっと笑い、楽しそうに私の真似をする。
「おむしゅび、すき」
「おむすびね。具は何がいい? っていっても、今は塩昆布と梅干ししかないけど、いいかな?」
「うめぼち、すき」
「梅干しね。わりと渋い好みね。用意ができるまで、ひとりで待っていられる?」
くり子はこくんと頷いた。
昨夜会ったばかりの妹とはいえ、誰かのために朝食を準備する。なんだか目的ができたみたいで、私も少しだけ嬉しい気がした。
「美味しいおにぎり作るから、ちょっと待っててね!」
台所へ走ろうとして、自分がまだパジャマだったことに気づき、慌てて自分の部屋へ戻った。
炊飯器のボタンを押すと、ゆっくりとふたが開く。ほわっと湯気が顔にあたり、炊き立てごはんの少し甘い香りが漂う。この瞬間って、わりと好き。
ふと背中に視線を感じて振り返ると、くり子が私をじぃっと見つめていた。
「おねいちゃん、あのね。おしょば、みててもいい?」
おずおずと遠慮がちに話す。どうやら朝食を作るところを見ていたいようだ。
「いいけど、ただおにぎりを握るだけよ?」
「にぎにぎするの、みちゃいの」
「見たい」か。そういえば私も、お母さんが料理するのを見るのが好きだったな。なんだか懐かしい。
「いいよ、おいで」
できるだけ優しく声をかけてあげると、くり子は嬉しそうに微笑み、私の足元へ駆け寄ってきた。そして、つま先立ちでのぞき込もうとする。しっかり見たいのか、懸命に足を伸ばしていた。
「椅子に座って見ていたら?」
くり子はこくりと頷き、食卓の椅子に飛び乗った。
「おにぎりは梅干しがいいって言ったわね。そのままだと梅干しが大きいかな。刻んでごはんにまぜ込もう」
私の手元を凝視するくり子に聞こえるように、おにぎりのことを説明した。梅干しから種を取り出し、包丁でたたく。炊き立てごはんをボウルによそうと、たたいた梅干しを入れ、ふんわりと混ぜる。
「炊き立てごはんがべちゃつかないように、さっくりとね。小さめのおにぎりのほうが食べやすいだろうから、ラップで握ろうかな」
切りとったラップで梅干しをまぜたごはんを握り、小さめの三角おにぎりを作る。海苔でくるりと巻いてお皿にのせ、くり子の前に置いた。
「梅干しのおにぎり、できたよ。どうぞ」
くり子は嬉しそうな顔で、ぱっとおにぎりを掴みとろうとしたけれど、はっとしたように手を止めた。そして、ぷにっとした小さな手を、ぺちんと重ね合わせる。
「いたーだきましゅ」
「いただきます」ってことよね。昨夜もそうだったけど、きちんとご挨拶ができる子みたいね。ちょっと発音が変だけど、きっといい子なんだ。
「どうぞ、めしあがれ」
声をかけると、その言葉を待っていましたとばかりにおにぎりを掴み、小さなお口でかぶりついた。
口に入れたおにぎりをもぐもぐと食べた瞬間。くり子はぎゅっと目をつむり、口をすぼめるような仕草をした。
どうやら、想像以上に梅干しが酸っぱかったみたいだ。
「ごめんね。梅干しが酸っぱかった? これ、お父さん用のやつだから。他のおにぎりに代えようか?」
くり子は首をぶんぶんと振り、お皿を抱え込んだ。
「くり子、しゅっぱいのすき。おねいちゃん作ってくれたから、ぜんぶ食べう!」
残したくないのか、くり子はひと口食べては酸っぱそうに顔をしかめ、またひと口。でも酸っぱいのが好きというのは嘘ではないようで、実に嬉しそうに食べている。
「ほら、お茶も飲んでね」
お茶を口に含んだくり子はふにゃっと笑い、また梅干しのおにぎりを食べ始める。しばらくして、くり子は顔を少し傾け、何事か考え始めた。
ん? 何を考えているんだろう。
不思議に思っていると、くり子は三角のおにぎりの上下をひっくり返して、しばらく眺めたあと、またかぷっとかじりついた。
「ん~っ! こっちも、ちゅっぱい!」
三角のおにぎりを、別の方向から食べたら酸っぱさが緩和されると思ったようだ。子どもらしい無邪気な思考。ごはんに細かくした梅干しをまぜ込んであるから、向きを変えても味も酸っぱさも変わらないのに。
思わず笑いたくなるのを、どうにか手で押さえて堪えた。
この子、可愛い。そしてたぶん、普通の子だって思う。
「無理しなくていいよ。今度は甘めのはちみつ梅で作ってあげるね」
くり子はにこっと笑い、それでも食べるのをあきらめたくないのか、再びおにぎりにかぶりつく。そしてまた酸っぱそうな顔をする。
愛らしい仕草に、つい手を伸ばして頭を撫でてしまった。頭を撫で始めると、すぐに違和感に気づく。普通の子にはない、頭の角があるからだ。夢中でおにぎりを頬張る幼女の口元には、鋭い牙も見え隠れしている。
角があるということは、やっぱり鬼の子なんだろうと思う。私が知ってる鬼は童話とかに出てくる鬼で、見るからに怖そうな雰囲気だ。でも目の前にいるくり子は、角と牙がある以外は人間の幼女と変わらない気がした。
この子が半分血が繋がった私の妹という実感はない。今はちょっとだけ可愛いと思えるけれど、これからも仲良くしていけるかどうかはわからなかった。
「これから、どうなるのかな……」
ぽつりと呟くと、くり子は私の顔を見つめ、不思議そうに頭をかくりと傾けた。
「おねいちゃん?」
「ごめん。おねいちゃんのひとり言。気にせず食べていいよ」
「うん!」
もぐもぐとおにぎりを食べ続けるくり子を眺めながら、私も自分用の梅干しのおにぎりにかぶりつく。直後、思いっきり口をすぼめてしまった。
「すっぱぁ! これは酸っぱいわぁ……」
次に買い物に行く時は、はちみつ梅も忘れないようにしよう。うん、絶対だ。
「幼児の子守りって、どうすればいいんだろう?」
朝食を一緒に食べてお腹は満たされたけれど、このあと、くり子と何をして過ごせばいいのか、さっぱりわからなかった。
妹や弟がいる友達に聞いてみたいところだけど、あやかしの子を世話した友達なんてきっといないだろうし。
「こういう時は、あれかな。やっぱり」
愛用のスマホを取り出すと、ささっと検索してみた。
『幼児と家で遊ぶ』や『子ども 遊ぶ 家の中』などで探すと、実に様々な情報が出てきてくれた。その中で、幼女が家の中ですぐにできそうな遊びを探していく。
ブロックや積み木なんてすぐには用意できないし、お人形やぬいぐるみもない。折り紙も買ってこないと家の中にはない。
「今、家の中にあるものがいいんだけどなぁ……」
画面をスクロールしながら次々と情報を見ていくと、ようやくいいものを見つけることができた。
「くり子ちゃん、これね。おねいちゃんの色鉛筆なんだけど、これを使って、お絵描きでもして遊ぶ? といっても、ノートぐらいしかないんだけど」
私が子どもの頃に使っていた色鉛筆を見せると、くり子はすぐに顔を綻ばせた。
「うん! ありあと」
色鉛筆とノートを受けとり、くり子は何やら夢中で描き始めた。
よかった。これでしばらくはひとりで遊んでいてくれるだろう。ノートは普段学校で使っているものを一冊持ってきた。色鉛筆は私が小さい頃に使っていたもので、お母さんに買ってもらった品だ。思い出のある色鉛筆だったから、今でも捨てずにしまってあったのだ。短くなってる色鉛筆もあるけど、今は我慢してもらうしかない。
「小さい頃は私もよくお絵描きして遊んでたのに、すっかり忘れてたなぁ……」
目を輝かせて色鉛筆をノートに滑らせていく幼女を見守りつつ、洗い物を片付けたり、洗濯物を干したりして、家事を済ませていった。
お昼は残ったごはんをチャーハンにして、くり子と一緒に食べた。
「おねいちゃん、ちゃーはん、おいちいね!」
ごはんものは好きなようで、くり子はチャーハンもきれいに平らげてくれた。好き嫌いの少ない子なのかな。だったら助かる。
昼食のあとも、くり子は色鉛筆に夢中で、楽しそうにお絵描きをしている。私はその横で宿題などをして、穏やかに時間が過ぎていった。
やがて日が暮れ、夜となった。お父さんからメールが来ていて、そこには「すまない。事情があって少し遅くなる」とだけ書かれていた。
「事情って何よ。こっちも十分、『事情あり』なんですけど?」
ぶつぶつと文句を言いながら、少し早めの夕食としてきつねうどんを準備した。くり子用はお揚げを小さめに切って、少し冷ましてから出した。
「ちゅるちゅる、おいちいねぇ」
くり子は食べることが好きなようで、文句も言わずよく食べた。にこにこと笑顔を絶やさないくり子は可愛らしく、苛ついた心がちょっとだけ癒されるのを感じる。
くり子がとてもいい子だったからか、特に苦労もなく夜まで過ごすことができた。
「幼女の世話ってもっと大変かと思ったら、案外カンタンじゃない」
なんて余裕の発言ができたのは、お風呂前までのことだった。
「くり子ちゃん。お父さん、帰ってくるの遅くなりそうだし、先にお風呂に入ったら?」
今度もいい返事がくるだろうと思っていた。これまでずっとお利口さんだったから。
「いやっ!」
小さなくり子から、初めて聞く言葉だった。
「くり子、おふろ、きやいっ!」
ぷいっとそっぽを向く。今日一日素直でいい子だったのに。
いったい、どうしちゃったのよ?
「おふろ、きやい! だいきやい!」
どうやら、「お風呂が嫌い」と言いたいらしい。頬をぷうっとふくらませ、ぷりぷりと怒っている。私に見せていた愛らしい笑顔はまぼろしだったのだろうか。
「くり子ちゃん、お風呂が苦手なのはわかったけど、昨日も入ってないでしょ? 汗だけでも流したほうが……」
「そのまえも、そのまえのまえも、おふろ、はいってにゃいもん! だから、へーきらもん!」
「その前も、その前の前もお風呂に入ってないってことね。あれ……となると、くり子ちゃん、お風呂に何日入ってないの?」
くり子はびくりと肩を震わせ、気まずそうにうつむいた。
幼い妹を認めてあげたいって気持ちと、今はまだ受け入れたくないって思いが、私の中でぶつかり合っている。すぐには答えが出てきそうになかった。
「お父さん。今は自分の感情が整理できてないの。だからくり子を私の妹として受け入れるかどうかはまだ決められない。でもこの家以外に、あの子が行くところがないのもわかるから、一時的に預かってる女の子ってことでいい? ゆっくり考えてみたいから」
心配そうに私を見ていたお父さんが、ほっとしたのがわかった。
「それでいいよ。ゆっくり考えてくれ。杏菜、ありがとう」
急にお母さんがいなくなってしまった幼女を、あっさり追い出すような真似はしたくないしね。きっと今はこれでいいんだと思う。
とりあえず今晩は私もお父さんも早めに休むことにした。
お父さんは先に寝ていたくり子と一緒に寝て、私は自分の部屋へ。今日はいろんなことがあったからか、あっという間に眠ってしまった。
半妖の妹のくり子は、私たちの家に突然やってきた。誰にも言えない秘密の暮らしは、こうして始まったのだ。
†
夢の中で私は、幼い少女だった。台所に立つお母さんの足元にまとわりつき、下からお母さんがすることを眺めるのが好きだった。
「お母さん、今日は何を作っているの?」
「杏菜の好きなハンバーグよ」
「やったぁ! あのね、粉がふいたジャガイモもある?」
「粉吹きいもね。杏菜はおイモ好きだもんね」
「うん!」
何気ない日常だったけれど、幸せな時間だった。
お母さんの足元にまとわりつくことはなくなっても、私の背丈がお母さんに追いついても、お母さんはずっと私のそばにいてくれる。そう思っていた。あたりまえの日常が、ある日突然なくなってしまうなんて、考えもしなかった。
「おかあ、さん……」
目から涙がにじみ、頬を伝って落ちていくのを感じる。誰かの手が、私の顔にふれた。
お母さん? お母さんなの?
小さくて、ぷにぷにの手だった。お母さんの手が、ぷにっとして小さいわけがない。
ゆっくり目を開けると、まず視界に入ってきたのは、牙が見え隠れする小さな口元。灰色の大きな瞳が、私をじっと見ている。頭には銀色の角が二本、ちょこんと生えていた。
「く、くり子ちゃん?」
一気に目が覚めた。寝ているところを、昨日会ったばかりの妹に見つめられていたら、驚くってものだ。
「おねいちゃん……」
灰色の瞳が不安そうに揺れている。
「どうしたの? 私に何か用事でも?」
ほっとしたような表情を見せたくり子は、直後に叫んだ。
「おねいちゃん、生きてう!」
顔をくしゃくしゃにさせ、にかっと笑う。無邪気な笑顔につられて、私もにへっと笑ってしまった。
私が生きて息をしてるってだけで、そんなにも嬉しいのだろうか? 身近な人が無事かどうか心配でたまらないのかもしれない。
「そういえば、お父さんは?」
「おとーしゃん、おちごと」
「おちごと? ああ、仕事ってことね。急な仕事が入ったの? ……って、ちょっと待って。お父さん!」
パジャマ姿であることも忘れ、慌てて父の姿を捜す。お父さんはすでに玄関で靴を履き、今まさに家を出ようとしていた。
「お父さん、待って!」
「ああ、杏菜。起きたか? おはよう。仕事でトラブルがあったらしいから、これから行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい……じゃなくて。私とあの子――くり子ちゃんをおいて仕事に行くつもり? 私、まだ受け入れられてないって、昨日の夜話したよね?」
「うん、わかってる。でも仕事でどうしても行かないといけないんだ。杏菜とくり子、ふたりが安心して暮らせるように稼がないといけないしな。なんとかまとまった休みがもぎとれるように相談してくるから、今日だけは頼む」
「待ってってば。私たちのために働いてくれるのはありがたいけど、まったく慣れてない幼女といきなりふたりだけって、私も困るよ」
「でも昨日の感じだと、くり子は杏菜に懐いてたよ。ごはんを作ってくれる人だって認識したんだろう。今日は土曜日だし、できるだけ早めに帰ってくるから。じゃあ行ってきます!」
そそくさと仕事に向かった父を追おうと玄関を飛び出しそうになったけれど、自分がまだパジャマ姿であることに気づき、やむなく扉を閉めた。
「お父さんのバカ。仕事だからって、いきなりふたりだけにしないでよ。今日一日どうすればいいわけ?」
工場で現場を管理する仕事をしている父は、勤務時間が不規則で、帰宅が遅くなることもある。それでも必ず帰ってくるし、遅くなる時は連絡をくれるから、今は父の帰宅を待つしかない。
「お、おねいちゃん……」
壁の向こうから顔だけのぞかせ、くり子が遠慮がちに声をかけてきた。灰色の瞳に涙がうっすらにじんでいる。
パジャマ姿でお父さんを追いかけて、しばし言い合いみたいになっていたから、怖くなってしまったのかもしれない。
「くり子ちゃん。その、びっくりさせてごめんね?」
くり子は銀色の角が生えた栗色の髪を揺らし、こくりと頷いた。そのまま無言で、私をじーっと見つめている。離れたところから様子をうかがう猫みたいだ。
「えっとね、くり子ちゃん。私に何か伝えたいこととかある?」
とりあえず聞いてみた。小さな女の子が自分の気持ちをしっかり伝えられるかどうか、私にはわからない。だが、接し方がわからないなら、本人に聞くしかない。
そもそも私は、幼女という存在に慣れていない。ずっとひとりっ子だったし、特に子どもが好きってわけでもない。昨夜はごはんだけは食べさせたけど、あとはどうしたらいいの? 幼女とふたり、どう過ごしたらいいわけ?
くり子は表情を変えぬまま、じーっと私を見ている。観察でもしているのかな?
「くり子ちゃん?」
返事はない。うーん。これはやみくもに刺激せず、そっとしておけばいいってこと? わからないなぁ。
「と、とりあえず。私、着替えてくるね?」
くり子に背中を向けた時だった。
「おねいちゃん……。おしょば、いってもいい?」
おしょば? そばを食べたいんだろうか? いや、違うな。「いってもいい」ってことは……
「ひょっとして、私の近くに来たいの?」
無表情だったくり子の顔が、ほんのり赤く染まり、恥ずかしそうにこくんと頷いた。きらきらと目を輝かせながら、私の返事を待っている。猫というより、人間に懐きたがっている子犬みたいだ。こんな時は、「おいで」って言えばいいのかな?
「えーっと。いいよ。私の近くに来ても。お、おいで?」
人間の子、いや、半妖の子に、「おいで」って言っていいんだろうか? でも他になんて伝えればいいの?
どうすればいいのかひとりで悩んでいると、いつの間にか、くり子がすぐそばに来ていた。
「くり子ちゃん?」
そっと名前を呼ぶと、くり子の顔がふにゃっと崩れた。
「おねいちゃん!」
私を見上げ、にまっと笑う。無邪気な笑顔だった。私のパジャマの裾を掴み、嬉しそうに体を寄せてくる。しっぽを振った犬が懐いてくる瞬間みたいだ。
か、可愛い……
幼女だからなのか、この子だからなのかわからないけど、私に甘えたいみたいだ。そんな仕草をされたら、きゅんとしてしまうじゃないの。
「って、いやいや、ちょっと待て、私。まだ妹って認めてないし! でもこの子に罪はないんだよねぇ……」
頭を抱えて葛藤してる私を、くり子はきょとんとした顔で見つめている。まだ小さいし、この子にあれこれ質問したら、かわいそうだよね。
「とりあえず。朝ごはんでも食べようか? くり子ちゃん」
くり子は嬉しそうに、こくこくと頷いた。ひょっとしたら、お腹が空いていたのかもしれない。だから寝ている私を起こしに来たのかな?
「今から朝ごはんを作るけど、くり子ちゃんは何がいい? パン? それともごはん?」
「えとね、おむしゅび!」
「おむしゅび? おむしゅび、おむすび……。ひょっとして、おにぎりのこと?」
おにぎりを握る動作を見せると、くり子はうひゃひゃっと笑い、楽しそうに私の真似をする。
「おむしゅび、すき」
「おむすびね。具は何がいい? っていっても、今は塩昆布と梅干ししかないけど、いいかな?」
「うめぼち、すき」
「梅干しね。わりと渋い好みね。用意ができるまで、ひとりで待っていられる?」
くり子はこくんと頷いた。
昨夜会ったばかりの妹とはいえ、誰かのために朝食を準備する。なんだか目的ができたみたいで、私も少しだけ嬉しい気がした。
「美味しいおにぎり作るから、ちょっと待っててね!」
台所へ走ろうとして、自分がまだパジャマだったことに気づき、慌てて自分の部屋へ戻った。
炊飯器のボタンを押すと、ゆっくりとふたが開く。ほわっと湯気が顔にあたり、炊き立てごはんの少し甘い香りが漂う。この瞬間って、わりと好き。
ふと背中に視線を感じて振り返ると、くり子が私をじぃっと見つめていた。
「おねいちゃん、あのね。おしょば、みててもいい?」
おずおずと遠慮がちに話す。どうやら朝食を作るところを見ていたいようだ。
「いいけど、ただおにぎりを握るだけよ?」
「にぎにぎするの、みちゃいの」
「見たい」か。そういえば私も、お母さんが料理するのを見るのが好きだったな。なんだか懐かしい。
「いいよ、おいで」
できるだけ優しく声をかけてあげると、くり子は嬉しそうに微笑み、私の足元へ駆け寄ってきた。そして、つま先立ちでのぞき込もうとする。しっかり見たいのか、懸命に足を伸ばしていた。
「椅子に座って見ていたら?」
くり子はこくりと頷き、食卓の椅子に飛び乗った。
「おにぎりは梅干しがいいって言ったわね。そのままだと梅干しが大きいかな。刻んでごはんにまぜ込もう」
私の手元を凝視するくり子に聞こえるように、おにぎりのことを説明した。梅干しから種を取り出し、包丁でたたく。炊き立てごはんをボウルによそうと、たたいた梅干しを入れ、ふんわりと混ぜる。
「炊き立てごはんがべちゃつかないように、さっくりとね。小さめのおにぎりのほうが食べやすいだろうから、ラップで握ろうかな」
切りとったラップで梅干しをまぜたごはんを握り、小さめの三角おにぎりを作る。海苔でくるりと巻いてお皿にのせ、くり子の前に置いた。
「梅干しのおにぎり、できたよ。どうぞ」
くり子は嬉しそうな顔で、ぱっとおにぎりを掴みとろうとしたけれど、はっとしたように手を止めた。そして、ぷにっとした小さな手を、ぺちんと重ね合わせる。
「いたーだきましゅ」
「いただきます」ってことよね。昨夜もそうだったけど、きちんとご挨拶ができる子みたいね。ちょっと発音が変だけど、きっといい子なんだ。
「どうぞ、めしあがれ」
声をかけると、その言葉を待っていましたとばかりにおにぎりを掴み、小さなお口でかぶりついた。
口に入れたおにぎりをもぐもぐと食べた瞬間。くり子はぎゅっと目をつむり、口をすぼめるような仕草をした。
どうやら、想像以上に梅干しが酸っぱかったみたいだ。
「ごめんね。梅干しが酸っぱかった? これ、お父さん用のやつだから。他のおにぎりに代えようか?」
くり子は首をぶんぶんと振り、お皿を抱え込んだ。
「くり子、しゅっぱいのすき。おねいちゃん作ってくれたから、ぜんぶ食べう!」
残したくないのか、くり子はひと口食べては酸っぱそうに顔をしかめ、またひと口。でも酸っぱいのが好きというのは嘘ではないようで、実に嬉しそうに食べている。
「ほら、お茶も飲んでね」
お茶を口に含んだくり子はふにゃっと笑い、また梅干しのおにぎりを食べ始める。しばらくして、くり子は顔を少し傾け、何事か考え始めた。
ん? 何を考えているんだろう。
不思議に思っていると、くり子は三角のおにぎりの上下をひっくり返して、しばらく眺めたあと、またかぷっとかじりついた。
「ん~っ! こっちも、ちゅっぱい!」
三角のおにぎりを、別の方向から食べたら酸っぱさが緩和されると思ったようだ。子どもらしい無邪気な思考。ごはんに細かくした梅干しをまぜ込んであるから、向きを変えても味も酸っぱさも変わらないのに。
思わず笑いたくなるのを、どうにか手で押さえて堪えた。
この子、可愛い。そしてたぶん、普通の子だって思う。
「無理しなくていいよ。今度は甘めのはちみつ梅で作ってあげるね」
くり子はにこっと笑い、それでも食べるのをあきらめたくないのか、再びおにぎりにかぶりつく。そしてまた酸っぱそうな顔をする。
愛らしい仕草に、つい手を伸ばして頭を撫でてしまった。頭を撫で始めると、すぐに違和感に気づく。普通の子にはない、頭の角があるからだ。夢中でおにぎりを頬張る幼女の口元には、鋭い牙も見え隠れしている。
角があるということは、やっぱり鬼の子なんだろうと思う。私が知ってる鬼は童話とかに出てくる鬼で、見るからに怖そうな雰囲気だ。でも目の前にいるくり子は、角と牙がある以外は人間の幼女と変わらない気がした。
この子が半分血が繋がった私の妹という実感はない。今はちょっとだけ可愛いと思えるけれど、これからも仲良くしていけるかどうかはわからなかった。
「これから、どうなるのかな……」
ぽつりと呟くと、くり子は私の顔を見つめ、不思議そうに頭をかくりと傾けた。
「おねいちゃん?」
「ごめん。おねいちゃんのひとり言。気にせず食べていいよ」
「うん!」
もぐもぐとおにぎりを食べ続けるくり子を眺めながら、私も自分用の梅干しのおにぎりにかぶりつく。直後、思いっきり口をすぼめてしまった。
「すっぱぁ! これは酸っぱいわぁ……」
次に買い物に行く時は、はちみつ梅も忘れないようにしよう。うん、絶対だ。
「幼児の子守りって、どうすればいいんだろう?」
朝食を一緒に食べてお腹は満たされたけれど、このあと、くり子と何をして過ごせばいいのか、さっぱりわからなかった。
妹や弟がいる友達に聞いてみたいところだけど、あやかしの子を世話した友達なんてきっといないだろうし。
「こういう時は、あれかな。やっぱり」
愛用のスマホを取り出すと、ささっと検索してみた。
『幼児と家で遊ぶ』や『子ども 遊ぶ 家の中』などで探すと、実に様々な情報が出てきてくれた。その中で、幼女が家の中ですぐにできそうな遊びを探していく。
ブロックや積み木なんてすぐには用意できないし、お人形やぬいぐるみもない。折り紙も買ってこないと家の中にはない。
「今、家の中にあるものがいいんだけどなぁ……」
画面をスクロールしながら次々と情報を見ていくと、ようやくいいものを見つけることができた。
「くり子ちゃん、これね。おねいちゃんの色鉛筆なんだけど、これを使って、お絵描きでもして遊ぶ? といっても、ノートぐらいしかないんだけど」
私が子どもの頃に使っていた色鉛筆を見せると、くり子はすぐに顔を綻ばせた。
「うん! ありあと」
色鉛筆とノートを受けとり、くり子は何やら夢中で描き始めた。
よかった。これでしばらくはひとりで遊んでいてくれるだろう。ノートは普段学校で使っているものを一冊持ってきた。色鉛筆は私が小さい頃に使っていたもので、お母さんに買ってもらった品だ。思い出のある色鉛筆だったから、今でも捨てずにしまってあったのだ。短くなってる色鉛筆もあるけど、今は我慢してもらうしかない。
「小さい頃は私もよくお絵描きして遊んでたのに、すっかり忘れてたなぁ……」
目を輝かせて色鉛筆をノートに滑らせていく幼女を見守りつつ、洗い物を片付けたり、洗濯物を干したりして、家事を済ませていった。
お昼は残ったごはんをチャーハンにして、くり子と一緒に食べた。
「おねいちゃん、ちゃーはん、おいちいね!」
ごはんものは好きなようで、くり子はチャーハンもきれいに平らげてくれた。好き嫌いの少ない子なのかな。だったら助かる。
昼食のあとも、くり子は色鉛筆に夢中で、楽しそうにお絵描きをしている。私はその横で宿題などをして、穏やかに時間が過ぎていった。
やがて日が暮れ、夜となった。お父さんからメールが来ていて、そこには「すまない。事情があって少し遅くなる」とだけ書かれていた。
「事情って何よ。こっちも十分、『事情あり』なんですけど?」
ぶつぶつと文句を言いながら、少し早めの夕食としてきつねうどんを準備した。くり子用はお揚げを小さめに切って、少し冷ましてから出した。
「ちゅるちゅる、おいちいねぇ」
くり子は食べることが好きなようで、文句も言わずよく食べた。にこにこと笑顔を絶やさないくり子は可愛らしく、苛ついた心がちょっとだけ癒されるのを感じる。
くり子がとてもいい子だったからか、特に苦労もなく夜まで過ごすことができた。
「幼女の世話ってもっと大変かと思ったら、案外カンタンじゃない」
なんて余裕の発言ができたのは、お風呂前までのことだった。
「くり子ちゃん。お父さん、帰ってくるの遅くなりそうだし、先にお風呂に入ったら?」
今度もいい返事がくるだろうと思っていた。これまでずっとお利口さんだったから。
「いやっ!」
小さなくり子から、初めて聞く言葉だった。
「くり子、おふろ、きやいっ!」
ぷいっとそっぽを向く。今日一日素直でいい子だったのに。
いったい、どうしちゃったのよ?
「おふろ、きやい! だいきやい!」
どうやら、「お風呂が嫌い」と言いたいらしい。頬をぷうっとふくらませ、ぷりぷりと怒っている。私に見せていた愛らしい笑顔はまぼろしだったのだろうか。
「くり子ちゃん、お風呂が苦手なのはわかったけど、昨日も入ってないでしょ? 汗だけでも流したほうが……」
「そのまえも、そのまえのまえも、おふろ、はいってにゃいもん! だから、へーきらもん!」
「その前も、その前の前もお風呂に入ってないってことね。あれ……となると、くり子ちゃん、お風呂に何日入ってないの?」
くり子はびくりと肩を震わせ、気まずそうにうつむいた。
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