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2巻 あやかしの妹におともだちができました
2-2
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「おいしいねぇ。おねいちゃんのごはんは、いつもおいしい。くり子ね、このちっちゃなおにく、だいすき!」
くり子に視線を向けると、上機嫌で三色そぼろ丼を食べている。スプーンで鶏そぼろをすくいとり、ぱくんとお口の中へ。もぐもぐと口を動かしながら、にんまりと笑う。鶏そぼろの味を堪能しているようだ。ふっくらした頬には、またも鶏そぼろがくっついている。
「くり子、お顔をこっちに向けて。拭いてあげるから」
布巾でさっと拭きとると、くり子は大きな声で言った。
「ありがと、おねいちゃん!」
にかっと笑う妹が可愛い。
お父さんへの感謝の気持ちを言葉にして伝えるのは、私一人だと恥ずかしいけれど、くり子がいればきっと大丈夫。くり子の笑顔を見ているとそう感じる。
「保育園にも元気に通えているし、これからはきっと楽しいことがいっぱいだよ、くり子」
「そうだな、お父さんもそう思うぞ」
くり子も同じ気持ちのようで、嬉しそうにこくこくと頷いている。
半妖の妹を家族として迎え入れ、始まった新生活。きっと大変だろうと覚悟していたけれど、くり子なら問題なく元気に過ごせるだろう。登園前の朝のお支度だけは大変だけど、お父さんと協力しながらなんとかやっていけそうだ。
くり子を家で留守番させていた頃の申し訳ない気持ちを思えば、朝が大変でも苦にはならないもの。
私たち家族は、きっと大丈夫。これからも楽しい思い出を、くり子とお父さんと共に作っていこう。
†
登園前の朝は私が朝食の準備をして、お父さんはゴミ出しやくり子の世話をして保育園に連れていき、そのまま会社に出社。私は家の戸締りをして高校に行き、下校時にくり子を迎えに行く。
くり子が保育園に通うようになって一ヶ月も経つと、朝の慌ただしさにもだいぶ慣れてきた。今のところ問題はないけれど、今後、家族の誰かが体調を崩すこともあるだろう。状況に応じて臨機応変に動けるようにしていかないとね、などと思っていた。
学校が終わり、くり子を迎えに行こうと準備をしていた時だった。私のスマホにお父さんから電話がかかってきた。仕事が忙しい父は、仕事中に私に連絡をしてくることは少ない。あるとすれば、大事な用事や緊急のことが起きた時だ。
なんとなく嫌な予感がして、すぐに電話に出た。
『杏菜、今話しても大丈夫か?』
普段のお父さんなら、私の都合なんて考えずにペラペラと話し始めるのに、どうしたんだろう? ひょっとして何かあったんだろうか。
「うん。今からくり子のお迎えに行こうと思っていたの。何かあった?」
お父さんが事故か何かにあったのかもしれないと思ったけれど、怖くて聞けなかった。
『そうか。学校、お疲れさま。実は保育園から連絡があったんだ』
何かあったのは、お父さんのほうじゃなかった。くり子が体調を崩したり、怪我をしたりしたんだろうか?
「くり子に何かあったの? 遊んでる時に遊具から落ちたとか?」
元気いっぱいの妹のことだ。遊具で無邪気に遊んでる時に、怪我をしてしまったのかもしれない。「いたいよぅ」と泣いているくり子の姿が頭に浮かび、心配でたまらなくなった。
『くり子は怪我してない。大丈夫だ』
お父さんの言葉に、ほっと胸を撫でおろした。くり子は無事なんだ。良かった。
となると、お父さんはなぜ私に電話をしてきたんだろう?
『実はな、くり子が怪我をしたのではなく、その逆なんだ』
父の言葉を、すぐには理解できなかった。くり子が怪我をしたのではなく、その逆……?
『他の男の子と口論になって、怒ったくり子が男の子を突き飛ばして、転倒させてしまったそうだ。幸い、男の子は肘を擦りむいた程度らしいが、くり子が他の子を怪我させてしまったことになる……』
頭を鈍器で殴られた気がした。私にとっては、くり子が怪我をするよりも衝撃の事実だった。
想像さえもしていなかった。くり子が他の子に危害を加えるなんて。
半妖だから、他の子より力は強いかもしれないけど、優しくていい子なのに。可愛いくり子が同じ年頃の男の子に怪我をさせたなんて信じたくない。
「お父さん、私、どうしたらいい? 何をすればいいの?」
咄嗟に父に助けを求めてしまった。情けないけれど、すぐには頭の中を整理できなかったから。
『ともかく、早めにお迎えに行ってくれ。お父さんもすぐに行くつもりだが、仕事の都合で少しだけ遅くなる。被害にあった男の子の保護者の方が来ていたら、杏菜には申し訳ないが、まずは謝罪してほしい。くり子にも何かしらの事情があったと思いたいが、怪我をさせてしまった以上、悪いのはくり子だ。まずは反省して謝らないと』
お父さんの言うとおりだと思った。くり子にどんな理由があったとしても、相手の男の子を突き飛ばしてしまったのは許されることじゃない。
「わかった。くり子と一緒に相手の男の子と保護者の方に謝るね。これからすぐに保育園に行くから」
『悪いが頼む。お父さんもできるだけ早く行くから』
「うん、わかった。いったん電話切るね」
電話を切り、スマホを鞄にしまおうとしたけれど、うまく収納できずに地面に落としてしまった。
「やだ、手が震えてる……」
私の手が、小刻みに揺れていた。妹が心配というのもあるけれど、まったく想定していなかった現実を、私の心と体が受け止められていないようだった。
くり子が他の子を怪我させたなんて、今でも信じられない。くり子が攻撃的になったのは、たった一度だけだ。しかもそれは私を守るため、青い鬼から姉を救うためだ。誰かを攻撃したのは、その時だけ。
「でも、くり子はいい子だよ。優しくて可愛い私のいもうと……」
どれだけ愛らしくても、妹はあやかしの子なのだ。容赦ない現実を思い知らされた気がした。
「私がくり子を守らないと。私はおねいちゃんなんだから」
混乱している気持ちを落ち着かせようと、軽く目を閉じて深呼吸する。
半妖の妹を守ることは難しいと思い、一度はくり子を銀の鬼の里へ帰そうと思った。けれど私は、どうしてもくり子を手放すことができなかった。くり子は私の大切な家族で、可愛い妹だから。あの子と離れるなんて、今は考えられない。だったら私がしっかりしないと。
くり子と共に生きることを選んだのだから、あらゆる事態を受け止められるようにならないといけないのだ。何かあるたびに混乱していたら、幼い子と変わらない。冷静になって、しっかり対応しなければ。
かすかに震えが残る両の手で、左右の頬をぱんと叩いた。じんとした痛みに、心が引き締まる気がした。
「しっかりしろ、杏菜! おねいちゃんでしょ」
自らに言い聞かせると、保育園に向かって走り出した。吸い込む息がいつもより冷たく、体と心を切り裂くように感じられた。
†
保育園は、いつもと同じようにお迎えに来ている保護者で混雑していた。くり子がいるクラス『もも組』へ行こうと下駄箱で靴を脱いでいたら、「野々宮さん」と声をかけられた。声をかけてきたのは、副園長先生だ。
「野々宮さん、お迎えありがとうございます。ちょっと医務室へ来ていただけますか? くり子ちゃんもそこで待っていますので」
普段なら、副園長先生が声をかけてくることはない。顔を合わせたら挨拶をする程度だ。
「はい、わかりました」
返事をして、副園長先生の後ろをついていく。無言のまま前を歩く副園長先生の背中がどことなく怖い。
副園長先生に促されて医務室の中に入ると、奥のほうでくり子がうつむいているのが見えた。担任の先生もいる。
「くり子ちゃん、お姉さん来たよ」
担任の先生に声をかけられた妹が、ぱっと顔をあげた。私の姿を確認したくり子の目元に、みるみる涙があふれてくる。泣くのをずっと堪えていたのかもしれない。
「くり子!」
たまらない気持ちになった私は、妹の名を呼びながらそばに駆け寄った。くり子も私のほうへと歩き出す。両手を広げて妹を抱きしめた。
「おねいちゃん、おねい、ちゃん~」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、ひしと私にしがみつく妹。愛らしく、健気な幼子にしか感じられなかった。
「野々宮さん、お電話でお父様にもお話ししましたが、くり子ちゃんが同じクラスの翔太くんと園庭で口論になりまして……」
遠慮がちに担任の先生が事情を説明してくれた。
「くり子ちゃんと翔太くんとで園庭で話をしていたんです。仲良くお話ししてるのだと思っていました。徐々に翔太くんの声が大きくなりましたが、くり子ちゃんの声は落ち着いてましたので、翔太くんが嬉しくて興奮してるのかと思っていたんです。そうしたら突然、翔太くんの泣き声が聞こえてきて……。慌てて駆け寄ると、翔太くんが地面で寝転がった状態で大泣きしていて、『くり子に突き飛ばされた』と……」
担任の先生がゆっくりと話してくれたので、当時の状況がわかってきた。どうやら担任の先生は、くり子が翔太くんを突き飛ばした瞬間を見ていなかったようだ。
「翔太くんが大きな声を出した時に、すぐ駆け付けるべきでした。申し訳ありません」
先生ひとりで多くの幼児を見ているのは知っているし、担任の先生を責める気にはなれなかった。
「先生は見ていなかったようですが、うちの息子はくり子ちゃんに突き飛ばされたって言ってるんですよ。それが真実でしょう。しかもうちの子は怪我までしてるんです。ほら、見てください!」
声を荒らげているのは、翔太くんのお母さんのようだ。翔太くんの左肘には絆創膏が貼られている。すでに手当てが終わっているようで、それほど大きな傷には思えなかった。
「とても痛かったって、翔太はわたしに泣きついてきたんですよ。翔太は元気な子ですから、遊びながら大きな声を出すことだってあるでしょう。でもだからといって突き飛ばしていい理由にはなりません。野々宮さん、お宅はくり子ちゃんに、どんな教育をされてるんですか!」
翔太くんのお母さんが怒り出してしまった。
くり子から話を聞いたわけではないけれど、小さな傷であっても妹が怪我をさせてしまったことが事実なら謝らなくてはいけないと思った。
「うちの妹が申し訳ありません!」
姿勢を正した私はその場でぺこりと頭を下げ、翔太くんとそのお母さんに謝罪した。
「ほら、くり子も翔太くんに、『ごめんなさい』しなさい」
私の体にしがみついたままの妹に声をかける。
ところがくり子は、無言のままだった。いつもなら、素直に私の言葉に従うのに。どうしたのだろう?
「くり子、謝りなさい」
少し強めに言ってみると、くり子はようやく口を開いた。
「くり子、わるくないもん……」
小さな声でようやく口にしたのは、謝罪の言葉ではなかった。驚いた私よりも早く反応したのは、翔太くんのお母さんだ。
「翔太を突き飛ばしたのに、自分は悪くない? まぁ、なんて子でしょう!」
翔太くんのお母さんが、般若の面のような恐ろしい顔になっていく。早く謝れ、と言わんばかりに私とくり子をにらみつけている。
どうしよう。翔太くんのお母さん、すごく怖い……
大切な息子が傷つけられて怒るのは、母親として当然のことかもしれない。
けれどその怒りに、どう対応すればいいのか私にはわからなかった。
翔太くんのお母さんの鋭い眼光に、体が震え上がる。怖くて私まで泣いてしまいそうだ。でも妹と一緒に泣いている場合じゃない。どうにかして、くり子を謝らせないと。
そうしないと翔太くんのお母さんの怒りはきっと収まらない。
「翔太くんのお母さん、少し落ち着いてください。くり子ちゃんも怯えてますし」
見かねた保育園の先生が声をかけてくれたけど、翔太くんのお母さんは先生にも大声で怒り始めた。
「そもそも先生方がしっかり見ていないから、こんなことになったんですよ!」
「こちらとしても大変申し訳ないと思っております」
「申し訳ないと思ってるなら、あの子にちゃんと謝らせてくださいよ!」
翔太くんのお母さんは先生たちに怒鳴りながら、くり子を再びにらみつける。
くり子が謝罪するまで、許さないつもりなんだ。早く謝らせないと、怒りはもっとひどくなりそうだ。
「くり子、まずは『ごめんなさい』しなさい。翔太くんは怪我してるんだよ。とても痛かったって。くり子は悪いことしたのよ。だから謝るの」
私にしがみつく妹の目線まで体をかがめ、しっかりと諭した。口喧嘩になったのなら、翔太くんに何か言われたのかもしれないけれど、だからといって突き飛ばしていい理由にはならないのだから。
ところが妹は、どうしても謝ろうとしなかった。ふるふると頭を振りながら、ぽろぽろと涙をこぼすだけだ。見ていて痛々しいけれど、くり子が謝らないと翔太くんのお母さんの怒りがさらに増していってしまう。
「くり子、『ごめんなさい』しなさい。お友だちをドンッて突き飛ばすのはとても悪いことよ。だから謝るの。おねいちゃんも一緒にごめんなさいするから。くり子、お願い」
私からお願いする形になってしまったけれど、この場はしかたない。まずは謝らせるのが先だと思ったのだ。
「くり子、あやまるのイヤ……」
私がこれほどお願いしても、妹は頭を下げようとはしなかった。
なんで、くり子はわかってくれないの? 悪いことしたら、ごめんなさいしようねって教えているのに。難しいことではないはずだ。
「くり子、ごめんなさいしなさい!」
苛立った私は、つい声を荒らげてしまった。
妹の小さな体がびくりと震えた。怯えた表情で私を見つめている。
「おねいちゃん……」
涙でいっぱいになった目で、おねいちゃん、なんで怒るの? くり子のこと、嫌いになったの? と訴えてくるようだった。
ああ、やってしまった。優しく諭すつもりだったのに。
可愛い妹を、泣かせたり怖がらせたりしたくなかったのに、どうしてこうなってしまったのだろう。
どうすればいいのかわからなくて、頭を抱えた時だった。
向かいに立っている翔太くんのお母さんから、ちっと舌打ちが聞こえた。
「まったく……。これだから母親がいない子は困るわ。躾がされてないじゃない」
翔太くんのお母さんが、小さな声で呟いた。ひとり言のつもりだったのかもしれない。でも私の耳には、しっかり届いてしまった。泣いている幼い妹には聞こえていなかったようで、それがせめてもの救いだった。
母親がいない子は躾がされてないって何?
どうしてそんなひどいことを、簡単に言えるの?
お母さんがいないことで、私とくり子がどれだけ悲しんだことだろう。妻を亡くしたお父さんも、とても辛かったはずだ。
それでも私たちは、家族として頑張って毎日を生きている。くり子の子育てだって、私とお父さんとで相談しながら精一杯やっている。くり子のお母さんにはなれないけれど、私は姉として妹を大切に思っている。
母親がいない家庭ってだけで、見下されていい理由にはならないはずだ。
気づけば視界が涙でぼやけて見えた。悔し涙だった。
翔太くんのお母さんに言い返してやりたい。
でも今それをすれば、くり子はごめんなさいもできない子として、保育園で立場がなくなってしまうかもしれない。
私はいったいどうすればいいの? ああ、誰か教えてほしい……
救いを求めるように、ぎゅっと目を閉じた。
「遅くなって申し訳ありません。くり子の、野々宮くり子の父です!」
医務室の引き戸を開けて入ってきたのは、私とくり子の父、野々宮山彦だった。
ああ、よかった。ようやく来てくれた。私たちのお父さんが。
娘ふたりの姿を確認した父は、すぐさま駆け寄ってきてくれた。
「くり子、杏菜。遅れてすまない。杏菜、大丈夫か? ひとりで対応させてごめんな」
私は軽く首を横に振り、目元ににじんだ涙を指先でそっと拭きとった。
「私は大丈夫。でもお父さん、くり子が翔太くんにごめんなさいしてくれないの。嫌って言うだけで」
「そうか。わかった。あとは俺に任せてくれ」
力強く言った父は、まず翔太くんのお母さんに顔を向けた。
「野々宮くり子の父です。娘が翔太くんを突き飛ばしたと先生から聞きました。大事な息子さんに怪我をさせてしまって申し訳ございません」
頭を下げて、翔太くんのお母さんにしっかりとお詫びした。すると今度は片膝を床につけ目線を低くすると、お母さんの後ろに立っている翔太くんに向かって声をかけた。
くり子に視線を向けると、上機嫌で三色そぼろ丼を食べている。スプーンで鶏そぼろをすくいとり、ぱくんとお口の中へ。もぐもぐと口を動かしながら、にんまりと笑う。鶏そぼろの味を堪能しているようだ。ふっくらした頬には、またも鶏そぼろがくっついている。
「くり子、お顔をこっちに向けて。拭いてあげるから」
布巾でさっと拭きとると、くり子は大きな声で言った。
「ありがと、おねいちゃん!」
にかっと笑う妹が可愛い。
お父さんへの感謝の気持ちを言葉にして伝えるのは、私一人だと恥ずかしいけれど、くり子がいればきっと大丈夫。くり子の笑顔を見ているとそう感じる。
「保育園にも元気に通えているし、これからはきっと楽しいことがいっぱいだよ、くり子」
「そうだな、お父さんもそう思うぞ」
くり子も同じ気持ちのようで、嬉しそうにこくこくと頷いている。
半妖の妹を家族として迎え入れ、始まった新生活。きっと大変だろうと覚悟していたけれど、くり子なら問題なく元気に過ごせるだろう。登園前の朝のお支度だけは大変だけど、お父さんと協力しながらなんとかやっていけそうだ。
くり子を家で留守番させていた頃の申し訳ない気持ちを思えば、朝が大変でも苦にはならないもの。
私たち家族は、きっと大丈夫。これからも楽しい思い出を、くり子とお父さんと共に作っていこう。
†
登園前の朝は私が朝食の準備をして、お父さんはゴミ出しやくり子の世話をして保育園に連れていき、そのまま会社に出社。私は家の戸締りをして高校に行き、下校時にくり子を迎えに行く。
くり子が保育園に通うようになって一ヶ月も経つと、朝の慌ただしさにもだいぶ慣れてきた。今のところ問題はないけれど、今後、家族の誰かが体調を崩すこともあるだろう。状況に応じて臨機応変に動けるようにしていかないとね、などと思っていた。
学校が終わり、くり子を迎えに行こうと準備をしていた時だった。私のスマホにお父さんから電話がかかってきた。仕事が忙しい父は、仕事中に私に連絡をしてくることは少ない。あるとすれば、大事な用事や緊急のことが起きた時だ。
なんとなく嫌な予感がして、すぐに電話に出た。
『杏菜、今話しても大丈夫か?』
普段のお父さんなら、私の都合なんて考えずにペラペラと話し始めるのに、どうしたんだろう? ひょっとして何かあったんだろうか。
「うん。今からくり子のお迎えに行こうと思っていたの。何かあった?」
お父さんが事故か何かにあったのかもしれないと思ったけれど、怖くて聞けなかった。
『そうか。学校、お疲れさま。実は保育園から連絡があったんだ』
何かあったのは、お父さんのほうじゃなかった。くり子が体調を崩したり、怪我をしたりしたんだろうか?
「くり子に何かあったの? 遊んでる時に遊具から落ちたとか?」
元気いっぱいの妹のことだ。遊具で無邪気に遊んでる時に、怪我をしてしまったのかもしれない。「いたいよぅ」と泣いているくり子の姿が頭に浮かび、心配でたまらなくなった。
『くり子は怪我してない。大丈夫だ』
お父さんの言葉に、ほっと胸を撫でおろした。くり子は無事なんだ。良かった。
となると、お父さんはなぜ私に電話をしてきたんだろう?
『実はな、くり子が怪我をしたのではなく、その逆なんだ』
父の言葉を、すぐには理解できなかった。くり子が怪我をしたのではなく、その逆……?
『他の男の子と口論になって、怒ったくり子が男の子を突き飛ばして、転倒させてしまったそうだ。幸い、男の子は肘を擦りむいた程度らしいが、くり子が他の子を怪我させてしまったことになる……』
頭を鈍器で殴られた気がした。私にとっては、くり子が怪我をするよりも衝撃の事実だった。
想像さえもしていなかった。くり子が他の子に危害を加えるなんて。
半妖だから、他の子より力は強いかもしれないけど、優しくていい子なのに。可愛いくり子が同じ年頃の男の子に怪我をさせたなんて信じたくない。
「お父さん、私、どうしたらいい? 何をすればいいの?」
咄嗟に父に助けを求めてしまった。情けないけれど、すぐには頭の中を整理できなかったから。
『ともかく、早めにお迎えに行ってくれ。お父さんもすぐに行くつもりだが、仕事の都合で少しだけ遅くなる。被害にあった男の子の保護者の方が来ていたら、杏菜には申し訳ないが、まずは謝罪してほしい。くり子にも何かしらの事情があったと思いたいが、怪我をさせてしまった以上、悪いのはくり子だ。まずは反省して謝らないと』
お父さんの言うとおりだと思った。くり子にどんな理由があったとしても、相手の男の子を突き飛ばしてしまったのは許されることじゃない。
「わかった。くり子と一緒に相手の男の子と保護者の方に謝るね。これからすぐに保育園に行くから」
『悪いが頼む。お父さんもできるだけ早く行くから』
「うん、わかった。いったん電話切るね」
電話を切り、スマホを鞄にしまおうとしたけれど、うまく収納できずに地面に落としてしまった。
「やだ、手が震えてる……」
私の手が、小刻みに揺れていた。妹が心配というのもあるけれど、まったく想定していなかった現実を、私の心と体が受け止められていないようだった。
くり子が他の子を怪我させたなんて、今でも信じられない。くり子が攻撃的になったのは、たった一度だけだ。しかもそれは私を守るため、青い鬼から姉を救うためだ。誰かを攻撃したのは、その時だけ。
「でも、くり子はいい子だよ。優しくて可愛い私のいもうと……」
どれだけ愛らしくても、妹はあやかしの子なのだ。容赦ない現実を思い知らされた気がした。
「私がくり子を守らないと。私はおねいちゃんなんだから」
混乱している気持ちを落ち着かせようと、軽く目を閉じて深呼吸する。
半妖の妹を守ることは難しいと思い、一度はくり子を銀の鬼の里へ帰そうと思った。けれど私は、どうしてもくり子を手放すことができなかった。くり子は私の大切な家族で、可愛い妹だから。あの子と離れるなんて、今は考えられない。だったら私がしっかりしないと。
くり子と共に生きることを選んだのだから、あらゆる事態を受け止められるようにならないといけないのだ。何かあるたびに混乱していたら、幼い子と変わらない。冷静になって、しっかり対応しなければ。
かすかに震えが残る両の手で、左右の頬をぱんと叩いた。じんとした痛みに、心が引き締まる気がした。
「しっかりしろ、杏菜! おねいちゃんでしょ」
自らに言い聞かせると、保育園に向かって走り出した。吸い込む息がいつもより冷たく、体と心を切り裂くように感じられた。
†
保育園は、いつもと同じようにお迎えに来ている保護者で混雑していた。くり子がいるクラス『もも組』へ行こうと下駄箱で靴を脱いでいたら、「野々宮さん」と声をかけられた。声をかけてきたのは、副園長先生だ。
「野々宮さん、お迎えありがとうございます。ちょっと医務室へ来ていただけますか? くり子ちゃんもそこで待っていますので」
普段なら、副園長先生が声をかけてくることはない。顔を合わせたら挨拶をする程度だ。
「はい、わかりました」
返事をして、副園長先生の後ろをついていく。無言のまま前を歩く副園長先生の背中がどことなく怖い。
副園長先生に促されて医務室の中に入ると、奥のほうでくり子がうつむいているのが見えた。担任の先生もいる。
「くり子ちゃん、お姉さん来たよ」
担任の先生に声をかけられた妹が、ぱっと顔をあげた。私の姿を確認したくり子の目元に、みるみる涙があふれてくる。泣くのをずっと堪えていたのかもしれない。
「くり子!」
たまらない気持ちになった私は、妹の名を呼びながらそばに駆け寄った。くり子も私のほうへと歩き出す。両手を広げて妹を抱きしめた。
「おねいちゃん、おねい、ちゃん~」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、ひしと私にしがみつく妹。愛らしく、健気な幼子にしか感じられなかった。
「野々宮さん、お電話でお父様にもお話ししましたが、くり子ちゃんが同じクラスの翔太くんと園庭で口論になりまして……」
遠慮がちに担任の先生が事情を説明してくれた。
「くり子ちゃんと翔太くんとで園庭で話をしていたんです。仲良くお話ししてるのだと思っていました。徐々に翔太くんの声が大きくなりましたが、くり子ちゃんの声は落ち着いてましたので、翔太くんが嬉しくて興奮してるのかと思っていたんです。そうしたら突然、翔太くんの泣き声が聞こえてきて……。慌てて駆け寄ると、翔太くんが地面で寝転がった状態で大泣きしていて、『くり子に突き飛ばされた』と……」
担任の先生がゆっくりと話してくれたので、当時の状況がわかってきた。どうやら担任の先生は、くり子が翔太くんを突き飛ばした瞬間を見ていなかったようだ。
「翔太くんが大きな声を出した時に、すぐ駆け付けるべきでした。申し訳ありません」
先生ひとりで多くの幼児を見ているのは知っているし、担任の先生を責める気にはなれなかった。
「先生は見ていなかったようですが、うちの息子はくり子ちゃんに突き飛ばされたって言ってるんですよ。それが真実でしょう。しかもうちの子は怪我までしてるんです。ほら、見てください!」
声を荒らげているのは、翔太くんのお母さんのようだ。翔太くんの左肘には絆創膏が貼られている。すでに手当てが終わっているようで、それほど大きな傷には思えなかった。
「とても痛かったって、翔太はわたしに泣きついてきたんですよ。翔太は元気な子ですから、遊びながら大きな声を出すことだってあるでしょう。でもだからといって突き飛ばしていい理由にはなりません。野々宮さん、お宅はくり子ちゃんに、どんな教育をされてるんですか!」
翔太くんのお母さんが怒り出してしまった。
くり子から話を聞いたわけではないけれど、小さな傷であっても妹が怪我をさせてしまったことが事実なら謝らなくてはいけないと思った。
「うちの妹が申し訳ありません!」
姿勢を正した私はその場でぺこりと頭を下げ、翔太くんとそのお母さんに謝罪した。
「ほら、くり子も翔太くんに、『ごめんなさい』しなさい」
私の体にしがみついたままの妹に声をかける。
ところがくり子は、無言のままだった。いつもなら、素直に私の言葉に従うのに。どうしたのだろう?
「くり子、謝りなさい」
少し強めに言ってみると、くり子はようやく口を開いた。
「くり子、わるくないもん……」
小さな声でようやく口にしたのは、謝罪の言葉ではなかった。驚いた私よりも早く反応したのは、翔太くんのお母さんだ。
「翔太を突き飛ばしたのに、自分は悪くない? まぁ、なんて子でしょう!」
翔太くんのお母さんが、般若の面のような恐ろしい顔になっていく。早く謝れ、と言わんばかりに私とくり子をにらみつけている。
どうしよう。翔太くんのお母さん、すごく怖い……
大切な息子が傷つけられて怒るのは、母親として当然のことかもしれない。
けれどその怒りに、どう対応すればいいのか私にはわからなかった。
翔太くんのお母さんの鋭い眼光に、体が震え上がる。怖くて私まで泣いてしまいそうだ。でも妹と一緒に泣いている場合じゃない。どうにかして、くり子を謝らせないと。
そうしないと翔太くんのお母さんの怒りはきっと収まらない。
「翔太くんのお母さん、少し落ち着いてください。くり子ちゃんも怯えてますし」
見かねた保育園の先生が声をかけてくれたけど、翔太くんのお母さんは先生にも大声で怒り始めた。
「そもそも先生方がしっかり見ていないから、こんなことになったんですよ!」
「こちらとしても大変申し訳ないと思っております」
「申し訳ないと思ってるなら、あの子にちゃんと謝らせてくださいよ!」
翔太くんのお母さんは先生たちに怒鳴りながら、くり子を再びにらみつける。
くり子が謝罪するまで、許さないつもりなんだ。早く謝らせないと、怒りはもっとひどくなりそうだ。
「くり子、まずは『ごめんなさい』しなさい。翔太くんは怪我してるんだよ。とても痛かったって。くり子は悪いことしたのよ。だから謝るの」
私にしがみつく妹の目線まで体をかがめ、しっかりと諭した。口喧嘩になったのなら、翔太くんに何か言われたのかもしれないけれど、だからといって突き飛ばしていい理由にはならないのだから。
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「くり子、『ごめんなさい』しなさい。お友だちをドンッて突き飛ばすのはとても悪いことよ。だから謝るの。おねいちゃんも一緒にごめんなさいするから。くり子、お願い」
私からお願いする形になってしまったけれど、この場はしかたない。まずは謝らせるのが先だと思ったのだ。
「くり子、あやまるのイヤ……」
私がこれほどお願いしても、妹は頭を下げようとはしなかった。
なんで、くり子はわかってくれないの? 悪いことしたら、ごめんなさいしようねって教えているのに。難しいことではないはずだ。
「くり子、ごめんなさいしなさい!」
苛立った私は、つい声を荒らげてしまった。
妹の小さな体がびくりと震えた。怯えた表情で私を見つめている。
「おねいちゃん……」
涙でいっぱいになった目で、おねいちゃん、なんで怒るの? くり子のこと、嫌いになったの? と訴えてくるようだった。
ああ、やってしまった。優しく諭すつもりだったのに。
可愛い妹を、泣かせたり怖がらせたりしたくなかったのに、どうしてこうなってしまったのだろう。
どうすればいいのかわからなくて、頭を抱えた時だった。
向かいに立っている翔太くんのお母さんから、ちっと舌打ちが聞こえた。
「まったく……。これだから母親がいない子は困るわ。躾がされてないじゃない」
翔太くんのお母さんが、小さな声で呟いた。ひとり言のつもりだったのかもしれない。でも私の耳には、しっかり届いてしまった。泣いている幼い妹には聞こえていなかったようで、それがせめてもの救いだった。
母親がいない子は躾がされてないって何?
どうしてそんなひどいことを、簡単に言えるの?
お母さんがいないことで、私とくり子がどれだけ悲しんだことだろう。妻を亡くしたお父さんも、とても辛かったはずだ。
それでも私たちは、家族として頑張って毎日を生きている。くり子の子育てだって、私とお父さんとで相談しながら精一杯やっている。くり子のお母さんにはなれないけれど、私は姉として妹を大切に思っている。
母親がいない家庭ってだけで、見下されていい理由にはならないはずだ。
気づけば視界が涙でぼやけて見えた。悔し涙だった。
翔太くんのお母さんに言い返してやりたい。
でも今それをすれば、くり子はごめんなさいもできない子として、保育園で立場がなくなってしまうかもしれない。
私はいったいどうすればいいの? ああ、誰か教えてほしい……
救いを求めるように、ぎゅっと目を閉じた。
「遅くなって申し訳ありません。くり子の、野々宮くり子の父です!」
医務室の引き戸を開けて入ってきたのは、私とくり子の父、野々宮山彦だった。
ああ、よかった。ようやく来てくれた。私たちのお父さんが。
娘ふたりの姿を確認した父は、すぐさま駆け寄ってきてくれた。
「くり子、杏菜。遅れてすまない。杏菜、大丈夫か? ひとりで対応させてごめんな」
私は軽く首を横に振り、目元ににじんだ涙を指先でそっと拭きとった。
「私は大丈夫。でもお父さん、くり子が翔太くんにごめんなさいしてくれないの。嫌って言うだけで」
「そうか。わかった。あとは俺に任せてくれ」
力強く言った父は、まず翔太くんのお母さんに顔を向けた。
「野々宮くり子の父です。娘が翔太くんを突き飛ばしたと先生から聞きました。大事な息子さんに怪我をさせてしまって申し訳ございません」
頭を下げて、翔太くんのお母さんにしっかりとお詫びした。すると今度は片膝を床につけ目線を低くすると、お母さんの後ろに立っている翔太くんに向かって声をかけた。
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