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世界を変革する聖母

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 私は『過去を書き換える力』によって、エルドラの歴史を少しずつ変えていった。

 私が代理母出産で得た力を、女たちに分け与えたのだ。
 女性たちに水を操る力や、傷を癒やし、攻撃から防御する力を与えた。
自らの力によって、生きられるように。

 私より前に勝手に異世界召還されて、命を落とした女たちの時間も書き換えた。
 異世界召還はなかったことにしたのだ。
 異世界召還されなければ、命をおとすこともなかったのだから。

 さらに女は奴隷としか見ていない、エルドラの男たちの意識を少しずつ変えていった。
 互いに助け合う世界だからこそ、命が生まれ、健やかに成長していくのだと教えていった。

 それには私が代理出産した99人の子どもたちも
協力してくれた。100人目の子が、私に協力するように伝達したらしい。
彼らもまた、何かしらの異能力者だったのだ。

 そして私は、100人目の赤ん坊を産んだ。100人目の赤ん坊は、世界を変革させる力をもつ。

 産まれた子は女の子だった。
彼女が目を開けた瞬間、異世界エルドラが光に包まれ、変わっていった。


 エルドラは、あらゆる命を愛し尊び、支えていく世界へ生まれ変わったのだ。私と、100人の子どもたちがそれを成した。
 


 私がこの世界で、子どもを代理出産する必要は、もうない。



「ママ、ありがとう。そして、さようなら」


 100人目の女の子の意識が伝わってきた。


「こちらこそ、ありがとう。99人の子どもたちにも伝えて。
強く生きて、そして幸せになって、と」


 100人の子どもたちに罪はない。彼がこれから異世界を変えていくのだから。
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