異世界代理母出産～私は異世界で、100人の子を産んだ

世界を創った女神

　私は自分で得た力によって、日本に戻ってきた。

　今はごく平凡な主婦として、愛する家族と共に暮らしている。


　夢を介して情報が伝えられてくるが、異世界エルドラで私は、
『世界を創った女神』とされているらしい。

　100人目に産んだ女の子が女王となり、99人の子どもたちが女王に仕え、支えているという。
彼らのおかげでエルドラは豊かに繁栄しているそうだ。
　エルドラの女たちの、幸せそうな笑い声が伝わってくる。子を産む女が笑っているからこそ、
尊い命が育まれていくのだから。

　私を代理母として物扱いした王や神官たちは、今は身分もなく、力もなく、一般的な平民として
日々を必死に生きているそうだ。
　それでいい。必死に生きてこその命だ。
自分たちのために女や、異世界の人間を好きにしていい理由などない。

　王たちに直接仕返ししてやることも考えたが、あえて放置という形でささやかな仕返しを
することにした。弱くなった自分たちを助けてくれる人に感謝することで、助け合うことの
尊さを知るべきだ。



　ところで、私は100回の代理母出産によって得た力を今でも持っている。
ほとんどはエルドラの女たちに分け与えてしまったが、まだ少しだけ残っている。
　この力を使えば、今の世界を変えることだってできる。　


　でも、そんなことはしない。
　派手に力を使えば、他の異世界のものによってまた、代理母出産をさせられるかもしれない。
聖母だ、女神だと、祀り上げられるのは、もうごめんだ。


　平凡だけれど、ささやかな幸せを噛みしめる毎日が、一番幸福だと思う。
それこそが人間の基本なのではないかと感じている。

　私はこれからも家族を大切に、日々を大切に過ごしていくつもりだ。
　それこそが、人が生きる道だと思うから──。




　　　　　　　　　　　　了