8 / 42
第二章 星と天御門家
かすかに残った哀しき希望
しおりを挟む
その後のことは、星はほとんど覚えていない。
兄の力を受け継ぎ、呪封師としての力に目覚めた星の力の暴走により、鬼が逃げていったと別の一族の陰陽師から聞いた。天御門家を滅ぼした悪鬼は海を渡って逃亡していったそうだ。悪鬼は天御門家一族の抹殺を狙っていたようで、天御門家以外の陰陽師とはまともに戦わずに逃げていった。傷だらけだったため、戦いたくても戦えなかったようだが。
たったひとりの家族を、何より大切な兄の優を失った星は涙も枯れ果て、力なく横たわっていた。
生きる希望を失い、日が暮れた夜の星々をぼんやりと眺めることしかできない。
そんな星を慰めるように、流れ星がきらきらと瞬きながら消えていく。殺された優や、天御門家一族の星なのだろうか。
「星が消えていく……優はもうこの世にいないのね……」
夜の空を眺めていれば、兄の優が会いに来てくれる。それが星のただひとつの喜びだった。
だがどれだけ待っても、もう優は星のところは来ることはない。流れ落ちていく星は、悲しい現実と切ない希望を教えてくれている気がした。
死んだ優のためにも生きろ、と。
「兄様の敵……敵討ちができるのは私だけだわ。優を殺した鬼を覚えているもの」
兄の優は敵討ちなど望んでいないとわかっている。何もかも失った星にとっては、敵を討つことだけが生きる目的となってしまった。哀れな少女の悲しき決意だった。
和国では女の陰陽師は跡を継ぐことができないため、どのみち生きる場所はない。ならばわずかな可能性を求めて、庸国へ行こう。兄の敵の悪鬼も、おそらく庸国にいる。そんな気がした。
ほどなくして、庸国の皇帝が天御門家の陰陽師を求めていると知り、星はその報せに飛びついた。
女ひとりが船に乗り海を渡るのは危険すぎるため、男装して男に、兄の優の姿となって生きることを決めた。
「私、今日から男になるわね。天から私を見守っていて、兄様」
兄の敵を討つ。
それがひとりぼっちになった星の、かすかに残った希望だった。
兄の力を受け継ぎ、呪封師としての力に目覚めた星の力の暴走により、鬼が逃げていったと別の一族の陰陽師から聞いた。天御門家を滅ぼした悪鬼は海を渡って逃亡していったそうだ。悪鬼は天御門家一族の抹殺を狙っていたようで、天御門家以外の陰陽師とはまともに戦わずに逃げていった。傷だらけだったため、戦いたくても戦えなかったようだが。
たったひとりの家族を、何より大切な兄の優を失った星は涙も枯れ果て、力なく横たわっていた。
生きる希望を失い、日が暮れた夜の星々をぼんやりと眺めることしかできない。
そんな星を慰めるように、流れ星がきらきらと瞬きながら消えていく。殺された優や、天御門家一族の星なのだろうか。
「星が消えていく……優はもうこの世にいないのね……」
夜の空を眺めていれば、兄の優が会いに来てくれる。それが星のただひとつの喜びだった。
だがどれだけ待っても、もう優は星のところは来ることはない。流れ落ちていく星は、悲しい現実と切ない希望を教えてくれている気がした。
死んだ優のためにも生きろ、と。
「兄様の敵……敵討ちができるのは私だけだわ。優を殺した鬼を覚えているもの」
兄の優は敵討ちなど望んでいないとわかっている。何もかも失った星にとっては、敵を討つことだけが生きる目的となってしまった。哀れな少女の悲しき決意だった。
和国では女の陰陽師は跡を継ぐことができないため、どのみち生きる場所はない。ならばわずかな可能性を求めて、庸国へ行こう。兄の敵の悪鬼も、おそらく庸国にいる。そんな気がした。
ほどなくして、庸国の皇帝が天御門家の陰陽師を求めていると知り、星はその報せに飛びついた。
女ひとりが船に乗り海を渡るのは危険すぎるため、男装して男に、兄の優の姿となって生きることを決めた。
「私、今日から男になるわね。天から私を見守っていて、兄様」
兄の敵を討つ。
それがひとりぼっちになった星の、かすかに残った希望だった。
10
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる