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第三章 初めての戦いと二人の秘密
鬼の気配
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***
「優……まって。どこに行くの?」
うなされながら、星は双子の兄である優へと懸命に手を伸ばす。必死にその名を呼ぶが、優はどんどん遠くなっていく。泣いてもわめいても、優しい兄は戻ってきてくれない。
「優、私をひとりにしないで!」
叫び声と共に、星は闇の中で目を開いた。両の目からは涙がとめどなくあふれている。眠りながら泣いていたため息苦しくなり、悪夢から現実の世界へと戻ってこれたようだ。
「また夢を見てたんだ、私……」
もう思い出したくない過去の記憶だった。辛すぎて、いっそ忘れてしまいたいのに忘れられない。くりかえし夢で見てしまうのだ。何度夢で見ても残酷な結末は変わらない。だがそれでも大好きな兄の優と、夢の中で再会できることだけが今の星のささやかな喜びでもあった。
乱れた息を呼吸でゆっくり整えながら、星は自らの心を落ち着かせた。何度も見た悪夢だから、目覚めた後の対処には慣れていた。悪夢でうなされた後は、もう寝れないことも経験から知っている。それでも今日は少しだけ寝れたほうだ。それだけ体が疲れていたのだろう。
「私は忘れない。兄様を、大好きな優を殺した悪鬼に復讐するために、庸国に来たのだから」
悪夢を見たあとは、復讐するのだ、敵討ちをするのだと悲壮な決意を自分自身に言い聞かせる。そうしなければ、目からこぼれ落ちる涙が止まらないからだ。
涙が止まり、ようやく気持ちが落ち着いてきた頃、星はある異変に気づいた。人ではない存在の気配を感じるのだ。
「呪いのケモノ……? ちがう。そうじゃない……」
最初は呪いが具現化したケモノの気配だと思った。だがそうではないことはすぐにわかった。かすかに感じる異臭。呪いのケモノのようだが、それよりもずっと強い、この世のすべてを憎悪している気配を感じる。
「鬼だ……星を殺した悪鬼の気配だっ!」
星は乱れた衣を手早く直すと、すぐに外に飛び出した。寝所の外は、夜の静寂につつまれていた。皇帝が住まう皇城と後宮を守るための兵士が夜の警備にあたっているが、星が感じている気配は人ではない。
「鬼はどこだ! どこにいる?」
闇の中を悪鬼の気配と異臭を手がかりに、星は必死で走った。
慣れない城の中では鬼がどこに潜んでいるかもわからない。だがようやく見つけた敵の気配を前に、じっとしていることなど星にはできなかった。せめて一太刀でもいいから、兄の無念を晴らしてやりたい。この世でたった一人の理解者だった兄の優を殺した悪鬼に相応の報いを。
復讐のためなら、自分の身がどうなろうとかまわない。今の星にとっては、復讐こそが生きる目的なのだ。
「優……まって。どこに行くの?」
うなされながら、星は双子の兄である優へと懸命に手を伸ばす。必死にその名を呼ぶが、優はどんどん遠くなっていく。泣いてもわめいても、優しい兄は戻ってきてくれない。
「優、私をひとりにしないで!」
叫び声と共に、星は闇の中で目を開いた。両の目からは涙がとめどなくあふれている。眠りながら泣いていたため息苦しくなり、悪夢から現実の世界へと戻ってこれたようだ。
「また夢を見てたんだ、私……」
もう思い出したくない過去の記憶だった。辛すぎて、いっそ忘れてしまいたいのに忘れられない。くりかえし夢で見てしまうのだ。何度夢で見ても残酷な結末は変わらない。だがそれでも大好きな兄の優と、夢の中で再会できることだけが今の星のささやかな喜びでもあった。
乱れた息を呼吸でゆっくり整えながら、星は自らの心を落ち着かせた。何度も見た悪夢だから、目覚めた後の対処には慣れていた。悪夢でうなされた後は、もう寝れないことも経験から知っている。それでも今日は少しだけ寝れたほうだ。それだけ体が疲れていたのだろう。
「私は忘れない。兄様を、大好きな優を殺した悪鬼に復讐するために、庸国に来たのだから」
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涙が止まり、ようやく気持ちが落ち着いてきた頃、星はある異変に気づいた。人ではない存在の気配を感じるのだ。
「呪いのケモノ……? ちがう。そうじゃない……」
最初は呪いが具現化したケモノの気配だと思った。だがそうではないことはすぐにわかった。かすかに感じる異臭。呪いのケモノのようだが、それよりもずっと強い、この世のすべてを憎悪している気配を感じる。
「鬼だ……星を殺した悪鬼の気配だっ!」
星は乱れた衣を手早く直すと、すぐに外に飛び出した。寝所の外は、夜の静寂につつまれていた。皇帝が住まう皇城と後宮を守るための兵士が夜の警備にあたっているが、星が感じている気配は人ではない。
「鬼はどこだ! どこにいる?」
闇の中を悪鬼の気配と異臭を手がかりに、星は必死で走った。
慣れない城の中では鬼がどこに潜んでいるかもわからない。だがようやく見つけた敵の気配を前に、じっとしていることなど星にはできなかった。せめて一太刀でもいいから、兄の無念を晴らしてやりたい。この世でたった一人の理解者だった兄の優を殺した悪鬼に相応の報いを。
復讐のためなら、自分の身がどうなろうとかまわない。今の星にとっては、復讐こそが生きる目的なのだ。
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