男装呪封師と鬼の皇帝〜秘された少女は後宮で開花する〜

蒼真まこ

文字の大きさ
22 / 42
第四章 二人で立ち向かおう

星の変装

しおりを挟む
「しばらく後宮に行っていなかったが、そろそろ行かねばならぬ。星、おまえも共に来てほしい」

 雷烈に届けられる書状の整理をしていた星に雷烈が告げた。最近は雷烈の政務の手伝いなどもこなしていた星だった。
 雷烈と星が共に過ごすことが多くなってから、雷烈は後宮への出入りを制限していた。政務が忙しいというのが表向きの理由だ。だが実際は、後宮内にうずまいている呪いのケモノに触発され、雷烈の鬼の力が暴走しないようにするためだった。
 星の封印術をおかげで鬼の力を制御できるようになってきたので、呪いをかけている者を見つけるため、後宮に行くことにしたのだ。

「陛下を呪っているものを見つけて、呪いを無力化させないと陛下の鬼の力を完全に抑えることができませんしね。わかりました。私もお手伝いさせていただきます」
「よろしく頼む……と言いたいところだが。星、俺の許可なく勝手に動くなよ」

 雷烈が妃たちのところへ通っている間、星はひとりで後宮内を調べる気満々だった。またも星の心を見透かした雷烈に星は慌てて首を左右に振る。

「もちろん勝手な行動はしませんよ。でも陛下がお妃様方のところへ行かれている間、私は暇ですし」
「暇だからと勝手にうろつかれるのは困る。星は男ということになっているのだから」

 雷烈の言うことは至極当然の話だった。後宮は宦官以外、男子禁制なのだから、そこに男がふらふらと歩いていたら不審者扱いされてしまうだろう。

「うーん。それでは私が女の姿に、宮女になってみるのはどうでしょう? それなら後宮をひとりで歩いていても問題ないかと思います」
「そなた、女装するつもりか?」
「女装って……私、一応女ですよ。隠してますけども」

 星が女装するというよりは、本来の姿である女性に戻るだけなのだが、どことなく釈然としない星だった。

「宮女の姿になるなら問題はないかもしれんが、十分気をつけてほしい。そなたに何かあったら俺が困る」
「はい、気をつけます」
「女官長に星のことをうまく紹介しておくから、宮女の装いなどは女官長から受け取ってくれ」

 こうして男装陰陽師から、宮女になることになった星だった。

 翌日の夕暮れ、後宮に行くため雷烈が政務を早めに切り上げていると、女官長が小柄な宮女を伴ってやってきた。

「陛下に御挨拶申し上げます」

 叩頭して陛下に御挨拶した宮女に、雷烈が顔をあげるよう命じる。すると宮女はゆっくりと顔をあげ、にっこりと笑った。

「そなた……?」

 顔をあげた宮女は雷烈がよく知っている者だった。だが普段とは、まるで印象が違う。眉を整え、うすく化粧を施し、女性の衣である襦裙じゅくんを着ている。雷烈の前にいる清楚で愛らしい宮女こそ、女性の姿になった星だった。
 いつもと同じように、雷烈は「星」と呼びそうになり、慌てて口を抑えた。星は男ということになっているのだから、女官長の前で名前を呼ぶのは危険すぎる行為だ。
 女官長に感謝の言葉を伝えると、下がるよう命じて退出してもらった。
 女官と二人だけになって、ようやく雷烈は星の名を呼んだ。

「驚いたぞ、星。一瞬だれかわからなかった」
「そんなに違いますか? 衣が違うだけですけど」

 衣装が違うだけだと星は言い張るが、今の彼、いや、彼女は可憐な少女へと変貌していた。うすく化粧しているため、きめ細かな肌が艶めいて見える。着慣れていないからか、スカートがひらひらと舞うように広がり、さながら天から降り立った天女のようだ。

「まるで違う。今の星は、とても可愛らしい」

 宮女になった星をしげしげと見つめながら、雷烈は平然と告げた。

「かわいらしい?? 陛下、いつも言ってますけど、お戯れはおやめください」
「戯れてなどいるものか。事実を伝えているだけだ。今の星は可愛いし、美しいぞ」

「可愛い」「美しい」といった女性への褒め言葉を言われたことが少ない星は、どう反応していいかわからず、その場で真っ赤になってしまった。

(私が美しい? そんなこと言われたことない)

 雷烈が本気で言っているのか、おだてているのかは星にはわからなかったが、褒められて嫌な気はしなかった。

「からかわないでください。私は後宮を調査するためにこの格好になっているのですから」
「からかってなどいないがな。まぁ、これ以上言うのは今は止めておくとしよう。星の顔が赤いままだと、またあらぬ噂をたてられてしまうからな。ではそろそろ日も暮れるから後宮へ行くとしよう」
「はい、お供いたします」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。 今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。 家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。 だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?

処理中です...