あおとみずいろと、あかいろと

蒼真まこ

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あかの章 朱里

ずっとそばにいる

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 海斗はいつも通り、私の話を聞いてくれた。
 普段と少し違うのは、私の片手をずっと握っていてくれたことだ。話し始めた私の体が震え始めてしまつたので、とっさに手を握ってくれたのだ。少し汗ばんた海斗の手は温かく、おかげで落ち着いて話をすることができた。経緯をゆっくり話すことで、混乱していた気持ちに少しずつ整理がつき始めていた。

「私、これからどうしたらいいと思う?」
「…………」

「海斗? 何か言ってよ」

 海斗はいつになく難しい顔をしていた。

「ごめん、具体的にどうしたらいいのか、正直いってオレにもよくわからない」
「海斗……」

 思えば当然だった。経験豊富な大人ならともかく、海斗はまだ自分と同じ歳で未成年なのだから。

「でもひとつだけ言えるのは、たぶん朱里がこれからどうしたいか? じゃないかと思う」
「私がどうしたいか?」

 海斗はゆっくりとうなずいた。私の手を握る力が少しだけ強くなった。

「こんなこと言ったら無責任かもしれないけど、今後はすべて朱里の気持ち次第だと思うんだ。朱里が何を望み、何を願うかで変わってくる」
「私が何を望み、何を願うか……」
「朱里はどうしてほしい? オレやおじさん、そして実のお父さんに」

 率直に聞かれて、とまどってしまった。けれど自分がどれだけ混乱しているのか、改めてわかった気がした。

「心配するな、朱里。おまえが何を望んでも、オレは朱里の傍にいるから」

 海斗は優しく微笑み、まっすぐに私を見つめていた。『朱里のしたいようにすればいい』そんな思いが海斗から伝わってきた。彼の優しさと愛情が、冷え切った心を温め、勇気づけてくれた。

(考えよう、私がどうしたいのか、何を望むのか)

 静かに目を閉じると、自分の心を見つめる。握ってくれている手の温もりが、心のよりどころだった。

 私はおじさんとの穏やかな生活を、何より大切にしたかった。おじさんの愛情があったからこそ、「私は捨てられた子」という感情に囚われずに済んだのだから。けれど心の奥底では常に疑問があった。「なぜ私は捨てられ、おじさんを実の父親と思ってはいけないのか」と。おじさんへの疑問と、実の父親の不可解な言動の理由。私は知りたい、真実を。そうでなければもう私は、前に進めない。

「海斗、私は真相を知りたい。おじさんと父親、それぞれに真実を話してもらいたいって思う」
「それが朱里の望みか? 真実を話してもらうと、また傷つくかもしれないぞ」
「もう十分傷ついてるもん。だったらいっそのこと全部話してほしい。何事もなかったように過ごすなんて、もうできないから。海斗、辛すぎることがあったら、また話を聞いてくれる?」
「言ったろ。オレはおまえの傍にいるって。いつでも話せばいい。ひとりで抱え込むなよ、朱里」

 海斗は両手で私の手をつつみ込み、力強い目で私を見つめている。

「ありがとう、嬉しい。海斗、もうひとつお願いがあるんだけど聞いてくれる?」
「なんだ?」
「私を家まで送ってくれる? ひとりだと怖くなってしまいそうだから」
「わかった、送るよ。オレもおまえの大好きなおじさんを見てみたいしな」
「おじさん、イケメンだよ?」
「オレよりカッコイイわけ?」
「うーん、どうかなぁ?」
「おいおい、そこは『海斗のほうがカッコイイよ』って言うべきだろ?」
「嘘は言えないもん。でもね、海斗は今の私にとって心の支えなの。だから誰よりステキだよ」

 一瞬で海斗の顔が赤くなる。よく見たら耳まで真っ赤だ。

「お、おまっ、ストレートすぎるだろっ」
「海斗が言えっていったのに? 照れ屋のところは変わってないねぇ、海斗」
「おまえが照れるようなことを、さらっと言うからだろ!」
「今さら何言ってんの。今日の海斗は、だいぶキザなこと話してるんだよ?」
「う……確かに」

 私たちは目を合わせ、どちらからともなく笑った。素直に笑えることが、何より嬉しかった。

「じゃあ、そろそろ行くか?」
「うん、行こう」

 海斗と手を繋ぎながら、おじさんと父が待つ家へと向かった。
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