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最終章 あおとみずいろと、あかいろと
母桃子の手紙
しおりを挟む朱里へ
この手紙を朱里が読むとき、もしかしたらお母さんはこの世にいないかもしれません。
あきらめずに頑張るつもりだけど、万が一ってこともあるから、準備だけしておこうと思いました。
まずはあなたの名付けの意味から伝えさせてね。
『朱里』という名前は、お母さんがつけました。桃子の娘だから、赤系の色を含めた名前がいいと前から決めてました。
心に朱い情熱を持ち、周囲の人にとって『希望のあかり』となれるようにと願いを込めています。素敵な名前でしょう? 朱里はこの名前を気に入ってくれてると嬉しいです。
なぜ色にこだわったかというとね。お母さんが好きになった人が、色を含んだ名前だったから。
お母さんは二人の男性を好きになりました。しかも双子の兄弟なの。誰のことなのか、もうわかるでしょう?
青葉と水樹。朱里のおじさんとお父さんです。
初めて出会ったとき、青葉と水樹の雰囲気はすごく悪かったの。お互いのことが嫌で嫌で仕方ないといった感じだった。でもね、不思議なもので青葉と水樹はいがみ合っていても、心の奥底で繋がっていて、お互いを信頼してるの。変な兄弟だよね。面白いな~って思ってるうちに、好きになってしまったの。ふたりのことを同時に。
青葉は私にとって憧れの人。しっかり者で優しいのよ。料理もすごく上手。私にお兄さんがいたら、きっとこんな感じだろうなって思った。
水樹は私にとって相棒で同士というべき存在かな。最初は弟みたいな存在だったけど、どんどん男らしくなっていって。気付いたら、すごく好きになってたの。
本音を言うとね、お母さんは青葉と水樹と本当の兄妹になりたかった。お母さんが育った家庭はケンカが絶えなかったから、私だけの家族がずっと欲しかったの。青葉と水樹は双子だから、私を含めたら三つ子かな。毎日ぎゃーぎゃーケンカして、すごく楽しそうだもの。
三つ子なんて、なれるわけないってわかっていたけど、それでも憧れた。だって三つ子になれたら、ずっと三人でいられるものね。
少しずつ成長するうちに、私と青葉と水樹の関係も変わっていった。青葉か水樹、どちらかを選ばなくてはいけなかったの。二人とも愛し続けるなんて残酷なこと、できないものね。
水樹を選んだことに後悔はしてないよ。だけど本当はすごく切なくて苦しかった。どうしてひとりだけを選ばなくてはいけないの? って思った。いっそのこと青葉と水樹から離れてしまえば良かったけど、それもできなかった。だってお母さんは青葉と水樹のことが大好きだったから。傍を離れたくなかったの。
大人になるってね、時々すごく切ないの。いろんなものをあきらめなくてはいけないから。何もかも手に入れられたらいいけど、そんなことは無理だよね。
でもね、切なさの代わりに得られるものもあるんだよ。それは自分が決める未来という幸福。そこには責任も伴うけど、自分が幸せになれるかどうかを、自分自身で選べるってことだもの。
だからお母さんは水樹と恋をして結婚したこと、そして朱里を授かったこと、なにひとつ後悔していません。とても幸せだったよ。だからどうか、朱里もあなただけの未来を、自分で選んでください。それはあなたにしかできないことよ。
私の大切な娘、どうか幸せになってください。
願わくばあなたの幸せを近くで見守っていきたいけど、こればかりは神様が決めることだから……。
母はあなたの幸せを誰より願っています。
母より
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