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何やら様子がおかしいターゲット
8話 救い ❇︎
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今、服を脱いでって言われた?
でもそんな事をしたら……いや、この衝動を止める事が最優先
僕はもう組織を裏切ると決めている
なら隠し続けても意味はないし、罰が与えられるならなんだって受け入れる
今はただ、なんでもいいから早く解放されたい
けど、手が震えてシャツのボタンが外せない
それに気付いたアイリス様が代わりに外し始めた
……これは本当に殺人衝動のせい?
心臓の音がうるさくなる
「あ……」
「隠さなくても、君が女性だってことはとっくに知ってる」
「え?そ、うだったんだ……」
知ってて王子様として対応してたって事?
…この人は、僕の何を知ってて何を知らない?
そんなことを考えているうちにサラシも取られ、上半身は一糸纏わぬ姿になった
そのままうつ伏せになるとアイリス様は僕の背中にそっと触れた
「痛かったり気持ち悪くても少しだけ我慢してて。少し時間かかるかも」
そう言ってアイリス様は僕の背中に指を滑らせ何かを書き始めた
これは魔法?
確かに魔法を得意とするアイリス様なら本当に止められるかもしれない
でも……痛いより、気持ち悪いより…………
「っ……!」
「ごめん、痛かった?」
違う、痛くは無い
確かに普段より痛みを感じやすい体になってはいるけど、今はそれ以上に……不思議な感じがする
くすぐったくて、頭がぼーっとする
なんか体がおかしい
労わるように指先が優しく触れる度に体が跳ねる
「ぅっ……!」
「もう少しだけ耐えて。これが終われば、二度と衝動は来ないから」
これが終われば、もう殺人衝動は来ない?
そんな事が本当にできるの?
なんて半信半疑だったけど、今の時点で誰かを殺したいなんて思わなくなっている
…それでも、まだ熱っぽさは無くならない
どれくらい経った?
体感10分くらいだけど……
「終わったよ。これで……」
「っ…、はっ……あ、アイリス様…なんか、僕のからだ、おかし……」
確かに殺人衝動は抑えられ、体が悲鳴を上げるような痛みも無くなった
でも、まだ熱っぽくて息が苦しい
それにベッドのシーツが擦れるだけでくすぐったい
「……もしかして、気持ちよかった?」
「え……?」
気持ちよくなんて無い
苦しくてどうにかなりそうだもん……
何も考えられなくなるし、僕の『王子様』の演技すら全く出来ないで素が出る
アイリス様はまた優しく肌に触れた
腋から腰にかけてゆっくりなぞられると、体のゾクゾクも大きくなる
「んっ……ぁ……っ!」
「やっぱり、感じてるんだ」
「何…?」
「そう、知らないんだ。……中途半端だと苦しいだろうから、ちゃんと最後まで良くしてあげる」
それから自分が何をされていたのか分からない
ただ一度、体が痙攣するような浮遊感を感じると、不思議と熱っぽさは消えた
「その…ごめん。完全に行き過ぎた行為だった」
僕が正気に戻った途端に顔色が悪くなったアイリス
後ろめたいような、深く反省してるような顔だ
「えっと、僕はよく分かんないけど、その……別に嫌じゃ無かったし、大丈夫…だと思う」
………
なんか気まずい
僕の嘘がバレた事は不思議と焦ることもなかった
ただ、初めての感覚に対する焦りと、愛されるみたいな感覚が残ってどこかフワフワする
「あ、その、ありがとう…アイリス様。僕を止めてくれて」
そう、そっちがメインだ
突然のことで焦って蔑ろになりそうだったけど
「礼を言われるほどのことじゃ無い。シード様の体内で暴れてる物質を黙らせて、シード様の主導権を私に移しただけ……って、あ、止める為にだから、普段はシード様の体や意識を乗っ取ったりはしないから安心して」
そんな方法で……
確かに殺人衝動が起きた時もそうじゃない時も、たまに自分が自分じゃ無くなる感じはしたけど……
改造された時に僕を乗っ取る何かが体内に入れられたって事だったんだ
今はアイリス様がこの体の主みたいになって、もう体も意識も乗っ取られる事は無い
確かにそれなら暴走する事は二度と無いだろうな
「ありがとう…アイリス様。それとごめんなさい。知ってるかもしれないけど、僕はアイリス様を殺しに……」
「言わなくていい。最初の目的と今は違うんだろ?」
………本当に良かった
こんな優しい人を殺すことにならなくて、本当に………
でもそんな事をしたら……いや、この衝動を止める事が最優先
僕はもう組織を裏切ると決めている
なら隠し続けても意味はないし、罰が与えられるならなんだって受け入れる
今はただ、なんでもいいから早く解放されたい
けど、手が震えてシャツのボタンが外せない
それに気付いたアイリス様が代わりに外し始めた
……これは本当に殺人衝動のせい?
心臓の音がうるさくなる
「あ……」
「隠さなくても、君が女性だってことはとっくに知ってる」
「え?そ、うだったんだ……」
知ってて王子様として対応してたって事?
…この人は、僕の何を知ってて何を知らない?
そんなことを考えているうちにサラシも取られ、上半身は一糸纏わぬ姿になった
そのままうつ伏せになるとアイリス様は僕の背中にそっと触れた
「痛かったり気持ち悪くても少しだけ我慢してて。少し時間かかるかも」
そう言ってアイリス様は僕の背中に指を滑らせ何かを書き始めた
これは魔法?
確かに魔法を得意とするアイリス様なら本当に止められるかもしれない
でも……痛いより、気持ち悪いより…………
「っ……!」
「ごめん、痛かった?」
違う、痛くは無い
確かに普段より痛みを感じやすい体になってはいるけど、今はそれ以上に……不思議な感じがする
くすぐったくて、頭がぼーっとする
なんか体がおかしい
労わるように指先が優しく触れる度に体が跳ねる
「ぅっ……!」
「もう少しだけ耐えて。これが終われば、二度と衝動は来ないから」
これが終われば、もう殺人衝動は来ない?
そんな事が本当にできるの?
なんて半信半疑だったけど、今の時点で誰かを殺したいなんて思わなくなっている
…それでも、まだ熱っぽさは無くならない
どれくらい経った?
体感10分くらいだけど……
「終わったよ。これで……」
「っ…、はっ……あ、アイリス様…なんか、僕のからだ、おかし……」
確かに殺人衝動は抑えられ、体が悲鳴を上げるような痛みも無くなった
でも、まだ熱っぽくて息が苦しい
それにベッドのシーツが擦れるだけでくすぐったい
「……もしかして、気持ちよかった?」
「え……?」
気持ちよくなんて無い
苦しくてどうにかなりそうだもん……
何も考えられなくなるし、僕の『王子様』の演技すら全く出来ないで素が出る
アイリス様はまた優しく肌に触れた
腋から腰にかけてゆっくりなぞられると、体のゾクゾクも大きくなる
「んっ……ぁ……っ!」
「やっぱり、感じてるんだ」
「何…?」
「そう、知らないんだ。……中途半端だと苦しいだろうから、ちゃんと最後まで良くしてあげる」
それから自分が何をされていたのか分からない
ただ一度、体が痙攣するような浮遊感を感じると、不思議と熱っぽさは消えた
「その…ごめん。完全に行き過ぎた行為だった」
僕が正気に戻った途端に顔色が悪くなったアイリス
後ろめたいような、深く反省してるような顔だ
「えっと、僕はよく分かんないけど、その……別に嫌じゃ無かったし、大丈夫…だと思う」
………
なんか気まずい
僕の嘘がバレた事は不思議と焦ることもなかった
ただ、初めての感覚に対する焦りと、愛されるみたいな感覚が残ってどこかフワフワする
「あ、その、ありがとう…アイリス様。僕を止めてくれて」
そう、そっちがメインだ
突然のことで焦って蔑ろになりそうだったけど
「礼を言われるほどのことじゃ無い。シード様の体内で暴れてる物質を黙らせて、シード様の主導権を私に移しただけ……って、あ、止める為にだから、普段はシード様の体や意識を乗っ取ったりはしないから安心して」
そんな方法で……
確かに殺人衝動が起きた時もそうじゃない時も、たまに自分が自分じゃ無くなる感じはしたけど……
改造された時に僕を乗っ取る何かが体内に入れられたって事だったんだ
今はアイリス様がこの体の主みたいになって、もう体も意識も乗っ取られる事は無い
確かにそれなら暴走する事は二度と無いだろうな
「ありがとう…アイリス様。それとごめんなさい。知ってるかもしれないけど、僕はアイリス様を殺しに……」
「言わなくていい。最初の目的と今は違うんだろ?」
………本当に良かった
こんな優しい人を殺すことにならなくて、本当に………
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