【完】男装暗殺者は神子様を落としたい

輝石玲

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何やら様子がおかしいターゲット

12話 甘やかし

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僕が兄の元に通うようになって1ヶ月
毎日様子を見に行くようになったけど、未だ目が覚めない
医者によると、全身に切り傷とアザがあるらしい
こんな事をするのはボスだろう
人を超えた力に取り憑かれたあの男がお兄ちゃんを……
でも、ボスはもういない
神子カメリアが殺した
何でお兄ちゃんがこんなになってるのかは分からないけど、それでもカメリア様には感謝してる
これできっと、僕達兄妹はちょっとは自由になれた筈だから
とは言え、お兄ちゃんは左腕を失ってしまったけど


「シード、もう夕方だよ」
「あ、ごめんアイリス…」

あれから僕は神子アイリスの従者として城にいる
僕に関する噂が一人歩きしていても、僕は兄のいる場所でアイリスといれることに満足している

アイリスの部屋に戻った
僕の他にアイリスに仕えてるのはメイドのジルだけ
ジルは正真正銘の『妖精』らしい
銀髪碧眼
ビックリする程神秘的な人だ
アイリスとジルを見ると、やっぱり人間離れしてると感じる
それでも、不思議と近くに感じる



部屋の掃除を終えたジルが部屋を後にすると、アイリスは後ろから僕に抱きついた

「アイリス…?」
「シード、無理はしてない?君のお兄さんが満身創痍で不安だろうけど、何もシードが我慢する事は無いんだよ」

確かに、僕はずっとお兄ちゃんの心配ばかりしてる
カメリア様は2週間前にようやく目が覚めて、アイリスも弟のところに居たいだろうに僕に寄り添ってくれている

僕はカメリア様に会ったことが無い
だから、どんな人かも分からない
アイリスに聞いた感じだと、正義感が強くてちょっと気が弱くて、すごく不安定な人らしい
最恐と言われるようになったのは、罪を犯し続けた実父に対して残酷過ぎる罰を与えたかららしいけど…
その後、カメリア様は行方をくらませた
不幸体質に周りを巻き込まないようにと、自身でも恐ろしいと自覚している行動をして嫌われたく無かったから
それは、ほんの1週間前に分かったことだ


「アイリスは…カメリア様の事で我慢してない?ずっと心配してた弟さんがやっと戻って目が覚めたのに」
「私はちゃんと言いたい事言えたから大丈夫。それに、ミリーのとこにはアスフォデルもいるからな」

アイリスは僕が心配しても全部自分で解決してある
行動力の塊のようだ、まったく…
アイリスに何も無いのはいいけど、僕が役立たずみたいだ


「それはそうと、おいでシード」

アイリスはソファに座って膝をポンポンとした
いつもの事だ、またアレだ
僕がアイリスの近くに行くと、手を引っ張られて膝の上に座らせられる
お腹の方に手を回して僕をぬいぐるみのように抱えるアイリス
最近はこれが日常になっている

「あ、アイリス!毎日こんな事して楽しい?」
「とっても。シードは嫌?」
「嫌じゃ無いけど……」


心臓が持たないんだってば!
密着してるから心臓の音バレバレだし、恥ずかしい
僕はヤケになって反撃をした
アイリスの腕を退かして、キスをした

「…僕ばっかドキドキして、なんかやだ」 
「気付いてない?私もずっと心臓がうるさいんだけど」

そう言ったアイリスは僕の手をとって胸元に当てた
確かにアイリスも緊張してるみたい
だけど……今の状態って、なんか………
手に柔らかい感触が……!

「急に耳まで真っ赤。どうした?」
「な、なんでもないから!手、離して!」
「もしかして…いかがわしい事でも考えた?」

悪戯っぽく笑うアイリス
だーかーらー…
本当にこういうとこだってば……!

「もー、本当に襲うよ!?」
「え、私が襲われるの?私がシードを襲うじゃなくて?……できる?」

余裕そうなアイリスを前に、勝機なんて見えっこない
本当に…僕達は思春期の男の子か?
なんて思っても、ちょっと期待してる

「っいいよ。やってやるんだから」
「え、え?」

僕が強気に出たら困惑した
もしかして、押したらいける?
よし、絶対に勝ってやる…!




って、なんの勝負…?
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