【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

転生した意味

67話 真っ黒な血液

自分が神子であることを知ってから何日か経った…らしい
まだ完全に復活できていない僕は御神木から離れられない
グドが言うには、

「御神木の力でも無い限り、一度死んだ体の回復なんて出来ないよ。普通の回復魔法じゃあ何十倍か何百倍も時間がかかる！」

らしい
眠るかグドと話すかの二択しか出来ないと、時間の感覚は完全に狂う


どうやら胃腸が回復したみたいで、とっても久しぶりにご飯が食べられる
とは言え、半年以上空っぽだった胃に負担はかけられない
味の無い、離乳食みたいな野菜スープを食べることになった
ただ意外とちょうどいい
スープに味は無くても野菜の味はちゃんとするし、胃も若干ギリギリだった

あと治って無いのは肺と肝臓だ
肝臓が今治りかけで、肺は呼吸出来ても酸素が取り込まれないらしい
御神木の皮で指先を切ったこともあるけど、血が真っ黒だった
それも静脈血みたいなドス黒い赤じゃなくて本当に黒一色
なんだかんだ死んだことよりショックだったかも知れない
ずっと日光を浴びてない白い肌に透ける血管はかなり目立つ
特に関節部分は見たく無くて腕まくりもあんまりしてない
それもこの調子なら1ヶ月もしないで治るはずだと言われた


しばらく眠ってる間に筋力が失われていないか
見た目的には魔力の影響で変わってなかったから、今もどうか分からない
見た目通り非力かも知れない
もしかしたら割と変わってないかも知れない
どうなんだろうと考えていると、ふと思い出した

そういえば、赤い剣ってあんなに重かったっけ？

そう、剣の大きさは変わってはいない
でも鏡代わりに持った時、少し不安定で扱いづらかった
……まぁ、そりゃそうだよね
半年以上眠って落ちない訳無いよね
回復したらグドにまた剣の特訓を頼んでみよっかな


ちなみに、魔力はというとほとんど使えない
そもそも僕は魔力を循環させて身体強化することしか出来ない
でも循環させるための血液が良く無さすぎるためか、ほとんど魔力を動かせない
御神木の魔力が少しだけ巡ってるのは多分血液じゃなくてリンパだよね


とりあえずはこの真っ黒な血液さえどうにかなればいい
そうすればこの部屋を出て動くことも出来るし、魔力を巡らせることも出来る
それと、あまりにも怖い
自分の血があり得ない色をしてるのを見るだけでも精神的にすり減って行く気がする
……御神木の根元の泉に入って早く治るようにしよっかな
飲んだら大きい魔力に耐えきれずに内臓壊れるってグドが言ってたし
濡れたら服が張り付いて着替えづらいし、当分は足湯感覚で泉に入ってようと思う



この黒い血は生理的に一生受け付けられる気がしない
もう無理はしません……………多分。