【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

キャラクターエピソード

Episode.田辺 華乃

私は小さい頃からお姫様だった
みんな『可愛いね』って言ってくれて、家も裕福だったから欲しいものは何でも手に入った
恵まれた容姿、家柄、才能
成績も優秀であり続けて、高嶺の花とまで呼ばれていた


中学も終わろうとしてた頃
私は幼少期から親同士の繋がりで仲良くしていたお姉さんとよく遊んでいた
お姉さんは大人で、歳も離れてて、すごく優しくて綺麗な人
何をしても楽しくて、お姉さんはセンスもあったから色んな感動をくれた
大好きだった
でもあの日…全てが壊れた
『新しい遊び』と称されて行われたそれは、まだ幼い私でもおかしい事に気付いた

「女の子同士だから恥ずかしがること無いわ」

って、何度も言われては体中を触られた
恥ずかしいだなんて言ってない
ただひたすらに怖いだけ
抵抗できなかった


お姉さんが帰った後、ママに相談した
私がおかしい訳じゃ無いって、それは立派な犯罪だって
お姉さんは私のことが好きだったから可愛がりたくなった、なんて言うけど……
怖い、気持ち悪い、大っ嫌いよ



高校に入って、私は友達が出来た
好きなタイプは？
なんてよくある話題で、同性愛者かどうか確認して
だって関わりたく無いもの、あんな性犯罪者

授業で先生が言ってた
『多様性を認めましょう』
『差別やイジメはしてはいけません』
そんなの分かってる
でも私は犯罪者と仲良くなんて出来ないわ


高校に入って好きな人が出来た
三年生の先輩
カッコよくて、キラキラしてて、優しくて、賢い
笑顔と優しさを振り撒くその姿に惚れないなんて無理よ
でもその先輩は学校を辞めた
植野 翼樹…あいつのせいで
ツバキは先輩を好きらしい
そんな噂が広まって、先輩は「誰かに好かれるなんて嬉しいな」って言ってたらしい
先輩はただ優しかっただけ
だから気持ちを否定してあげなかっただけ
なのに…先輩まで同性愛者だと噂になった
悪いのは先輩になった
先輩は学校を辞めた
大学の推薦まであったのに

許せないじゃない、そんなの
先輩の夢も未来も勝手に踏み躙って
追い込んでおいて何食わぬ顔で日常を送って
自分のせいで他人を不幸にした事、自覚させてあげたの
そしたら他の人も手伝ってくれたわ
怯えて、震えて、泣いて
いいザマよ
それだけ自分がした事が悪いって、ちゃんと分かって
これはイジメじゃ無い、ただ受けるべき罰を与えてるだけ


やっぱり、同性愛者なんてただの犯罪者、疫病神でしょ？
全部、居なくなればいいわ



ツバキは学校を辞めた
なんか雰囲気が変わってたわ
ちゃんと反省したみたい
ならこれ以上、誰にも迷惑をかけないでね










………高校生の終わり近く
クラスメイトが噂してたの


「……先輩が高校を辞めたのって好きな人に迷惑かけないように、だったらしいよ」
「あー、あの先輩ゲイだって噂になってたもんね。それでかな」
「みたい。なんでも……先輩が中退した後イジメにあった人、植野くんのことが好きだったみたいで………」
「それって一年の時のクラスメイトの？嘘、じゃあ両思いだったのに離れたって事？」
「可哀想だよね。ウチの姉がその先輩と幼馴染なんだけど、姉伝てに植野くんがイジメに遭って中退したこと知って…泣いてたって」
「そんな……じゃあさ、なんとか2人を合わせられないかな」

「無理だよ。植野くん…何ヶ月か前に事故で亡くなったって。小・中学の同級生だったからウチのとこにも連絡来た」



前の席からそんな話が聞こえて来た
私は、悪く無いわ……