極道恋浪漫

一園木蓮

文字の大きさ
66 / 159
極道恋浪漫 第一章

64

しおりを挟む
「その客というのは、とある組織の者だったようでな。どうやら羅辰ルオ チェンはその組織との間で行ったブツの取り引きの件で揉めているらしかった。後で分かったことだが、そのブツというのは阿片あへんの横流しだったようだ」
 山分けするはずだった阿片あへん羅辰ルオ チェンが独り占めしたとかで、相手方が怒り、乗り込んで来たらしい。羅辰ルオ チェンの側近二人が見せしめに銃弾を食らい、一人は即死、もう一人は腹を撃たれて重傷を負わされた。
「相手は男が三人だった。皆、銃を突き付けて羅辰ルオ チェンを脅した。このままではここにいる全員がられかねない、そう思った私はヤツの手にしていた日本刀を取り上げて三人を峰打ちにしたのだ」
 羅辰ルオ チェンはギリギリのところで命拾いをし、咄嗟に助けてくれた飛燕の腕に興味を示したそうだ。
「一緒に囚われた若夫婦は医者だった。彼らは腹を撃たれた羅辰ルオ チェンの側近に手当てをしてやり、なんとか一命を取り止めることができたのだが――それが今、紫月ズィユエのところにいるジンの両親だったのだ」

 名を春日野かすがのといったそうだ。夫妻は学会でこの香港を訪れていたそうで、当時まだジンは生まれていなかった。
羅辰ルオ チェンは側近を手当てした春日野夫妻と自分を救った私に何かしら感じるところがあったのだろう。悪どいことを平気で行うような男だ。それが恩という感情ではなかっただろうし、単に都合良く使い物になると思っただけかも知れない。だが、結果的に私は剣術の腕を見込まれて、男娼ではなくヤツの用心棒として起用されることとなった。春日野夫妻も羅辰ルオ チェンとその一派を診る医師として、遊郭街にある病院で重用されることになったんだ」

 ジンが生まれたのはそれから一年後だったそうだ。当時、赤子の名は日本語読みですみれと命名されたそうだ。春日野夫妻にしても、いつまた羅辰ルオ チェンの気が変わって遊女や男娼にさせられるかという危惧があったのだろう。身重になれば、とりあえずのところ妻が遊女になることはない。そう思った春日野は早急に子供を持つことを決意したそうだ。
「その時のことがよほど衝撃だったんだろう。しばらくして羅辰ルオ チェンは応接室の天井に銃の衝撃波に反応して爆発する仕掛けを取り付けた。その後も阿片あへんや武器の闇取引は続いていたようだが、その度にヤツは爆発物を盾に銃器の使用を禁じながら身の安全を図ってきたわけだ」
 銃撃に遭った際に飛燕が峰打ちした三人の男たちは、羅辰ルオ チェンの手下共が後で葬ったらしい。

「春日野夫人がすみれを孕ってすぐの頃だった。彼らが配属された病院で、重い病にかかっている者たちが密かに始末されているらしいことを知った。春日野夫妻の話では、主に阿片あへんで身体を蝕まれた者と、性病を患った遊女や男娼が治療を受けることも許されずに羅辰ルオ チェンの側近連中によって無惨にも葬られているとのことだった。私たちは何とかして彼らを救えないかと思ったのだ」
 その時、春日野がある提案を思いついたそうだ。医学会で懇意にしていたデェンという医者仲間がこの九龍城砦で貧しい者たちを診ていることを知っていた彼が、葬られる遊女男娼らを密かにデェンへ預けられないものかと相談してきたのだそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

朔望大学医学部付属病院/ White Dictator

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
White Dictator______通称:『白衣の独裁者』 <ホワイト・ディクテイター> ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 圧倒的な「実力」と「技術」で捩じ伏せ・現場を支配する凄腕たち。 ___ ごく僅かな一瞬の隙も逃さない神手の集まり。 ※ごめんなさい!悩みすぎて遅れてます!

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...