極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第三章

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「理由は何でも良かったんです。女を煽って腹を立てさせればいい。そう思って俺は女を訪ねました」
 そこで彼女をののしり、苛立たせて自分を刺すように仕向けた――ということだ。
「場所をこの九龍城砦の近くにしたのは女を煽る為です。あなたが――周老板ジォウ ラァオバンが自分のすぐ足下にいるとなれば、女もより一層気持ちが昂って手前を攻撃するだろうと。思いつく限りの罵倒を並べたところ、案の定怒った女は刃物を取り上げて手前に襲い掛かってきました」
 曲がりなりにもプロの殺し屋であるロナルドのことだ。同じ刺されるにしても急所を外して刺させることくらいは可能だったはずだ。だが、彼は敢えて急所を差し出すような体勢で刃物を食らったのだ。傷害と殺人では罪の重さに違いが出ると思ってのことだったのだろう。少しでも長く女を監獄に留め置くには罪は重い方がいい。ロナルドの告白からは、彼が本気でイェンや九龍城砦地下街の為に犠牲になろうとしていたことが窺えた。
「しかしロナルド――お前さん、このイェンに不問にしてもらった恩を感じているのは分かるが……。命をしてまで恩返しをしようとするとはな」
 これまでのところ、イェンとロナルドは特に懇意にしていたという既知の関係ではなかった。ひょうの件を通して初めて顔を突き合わせた、いわば初対面といえる。なぜそこまでして恩に報いようとするのか、遼二りょうじがそう訊くと、ロナルドは少し寂しそうに苦笑を浮かべながらも素直にその理由を述べてよこした。
「本来であれば――手前はあの時に始末されて当然の身でした。ですが、周老板ジォウ ラァオバンは手前を生かし、見逃してくださった。もちろんそれが手前のことを思ってしてくださったわけじゃねえというのは分かっております。ですが、理由はどうあれ手前の命が繋がったことは事実です。あの時に掛けていただいた周老板ジォウ ラァオバンの温情が……身に染みたんス。手前はこれまでずっと……決して褒められねえ人生を送ってきました。殺し屋を稼業にして……それで食ってきたんです。クズ同然、いえ――クズ以下のような手前ですが、せめて一度くれえ他人様ひとさまの役に立って死ねたらと、そう思ったんス」
 つまり、彼にとって生かしてもらえたという事実は、はたで思うよりも遥かに重く、有り難かったということなのだろう。ロナルドは続けた。
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