極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
25 / 1,212
漆黒の人(香港マフィア頭領次男坊編)

25

しおりを挟む
 そうして周と二人で朝食を取りながら、冰は昨夜李に聞いたことを告げるべきかどうか迷っていた。
 李自身からも『私から申し上げてよいかどうか――』と言われていたこともあり、自分の口から告げるのがいいのか、それともいずれ周から直接聞いた際に礼を言う方がいいのかと思ったからだ。だが、周がこうして部屋まで用意していてくれたことを思えば、やはりその気持ちを嬉しく思ったことを伝えたいとも思う。
 何か言いたげにソワソワとしている様子が気になったのか、目ざとい周は訝しげに見つめてきた。
「どうした?」
「え……!?」
「何か不安なことでもあるなら遠慮なく言ってくれ」
「いえ……不安とか……そういうわけじゃ」
「なんか言いたさそうなツラに見えるがな――」
「そ、そうですか?」
 冰は咄嗟にごまかしたが、周のようなデキる大人の男からすれば、自身の挙動不審な様子などごまかしようがないのかも知れない。隠すことで別の心配を掛けるのも本意ではない。当たり障りのない礼の言葉くらいならと、冰は思い切って切り出すことにした。
「あの、周さん。いろいろとありがとうございます」
「何だ、改まって」
「だってこんなにすごい部屋に住まわせてもらって、それに仕事まで与えてもらって……。俺、なんて言っていいか。どうお礼を言っても足りない……」
「何だ、そんなことか」
 言葉は素っ気ないが、その表情は嬉しそうだ。クッと口角が上がっていて、瞳もやさしげに細められている。

「あの――周さんはどうしてこんなに俺に良くしてくださるんですか?」

 それは率直な疑問だった。別段、李からいろいろと聞かなかったにしても、その理由を不思議に思っていたことは事実だからだ。
 周は穏やかな表情で口を開いた。
「初めてお前に出会った頃、ウォンのじいさんは既に結構な高齢だったからな。もしもお前がまだガキの内にじいさんが亡くなったりしたら――俺がお前を引き取って育てるつもりだった」
 周の口からは昨夜李から聞いたのと同じことが語られた。
「周さんが……俺を……? けど、どうして……ですか?」
「お前は知らんだろうが、お前の両親が亡くなったのは俺たちファミリー下に属していた者たちの抗争が原因だった。俺にはお前に対して責任がある」
「それは……でも、周さんが直接抗争を起こしたわけじゃないんですし……」
「まあ、それもお前のことを気に掛ける原因のひとつではあったんだが――。お前は俺の生まれを――つまり妾腹だってことをウォンのじいさんから聞いてねえか?」
「あ……! はい、聞いてます」
 確かにウォン老人はそう言っていた。幼い時に冰をチンピラ連中から助けて出してくれた漆黒の男は香港マフィアの頭領ボスの次男で、妾の子供でもあったと。それで周はファミリーの後継の座を兄に任せて日本の地で起業したのだとも聞いていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...