42 / 1,212
漆黒の人(香港マフィア頭領次男坊編)
42
しおりを挟む
「これって……宝石だよね。水晶かなにか……?」
小指の爪ほどもある大きさだ。仮にもダイヤだとは思えないが、輝きは半端ではない。冰はおそるおそる周を見上げながら訊いた。
「白い方のはダイヤモンドだな」
「……ええッ!?」
宝石などに疎い男の冰でも、それがどれほど高価なのだろうと想像するのもおそろしいくらいだ。だが、周は平然としたように先を続けた。
「ストラップってのは普段使いするもんだろうが。すぐに割れちまったんじゃ意味がねえ。その点、ダイヤは硬度があるからな」
だから普段使いにはもってこいだというわけなのか――一般庶民として育った冰からすれば、驚く以前に発想からして異次元だ。
「赤いのは――まあ、ダイヤほど硬度はねえだろうが、ガーネットという宝石だ」
「ガーネット?」
冰にはあまり耳慣れない名前だった。赤い宝石といえば、すぐに思い浮かぶのはルビーくらいである。
「今回は硬度よりも色味で選んだからな。パイロープガーネットという種類のやつらしい」
「パイロープガーネット……」
二つの組紐を見つめながら、冰はハッと何かに思い当たったようにして瞳を見開いた。
「これ、もしかして……俺と白龍の……」
そう、名前にちなんだものではないかと思ったのだ。
以前、ケーキを選んだ際に周が言っていた言葉を思い出す。
『俺らの名前にピッタリだな』
あの時、冰はホワイトチョコレートでできた真っ白なケーキを、周は紅いベリーのムースケーキを頼んでいた。その時は偶然だったのだが、雪吹冰という”白”をイメージさせる名前と、周焔の”赤”をイメージさせる色のケーキを選んだことで、周が自分たちの名前のようだと言ったのだ。それを覚えていて、わざわざこうして揃いのストラップを作ってくれたというわけか。
冰はあまりの感激に、思わず胸が締めつけられたように苦しくなり、今にも涙が滲み出してしまいそうだった。
「白龍……あの、これ……」
「ああ。俺とお前と揃いで使おうと思ってな」
「お揃い……って、ホントに俺がもらっても……いいの?」
「ああ。その為に作ったんだ。スマートフォンのカバーに付けるのにちょうどいいだろうが」
周はそう言って、自分用の赤い方の組紐を冰の掌から取ろうと指を伸ばした。白い方には純白の中に降りしきる”雪吹”をイメージして薄灰色の糸を交ぜて組み込んでもらったのも、名前にちなんでと思ってのことだ。
だが冰は、伸ばされた指を咄嗟に掴むと、周にとってはひどく驚くようなことを口にした。
「待って白龍! あの、あの……さ。俺がこっちを貰ってい……?」
冰が取り上げたのは赤いストラップの方だった。
「我が侭言ってごめん。でも俺――こっちがいい……んだ。だって、だってさ……。これ持ってたら、いっつも白龍と一緒って思えるし」
うつむき、小さな声で頬を朱に染めながら弱々と呟いた冰を見つめながら、周は驚きに一瞬硬直させられてしまったほどだった。
小指の爪ほどもある大きさだ。仮にもダイヤだとは思えないが、輝きは半端ではない。冰はおそるおそる周を見上げながら訊いた。
「白い方のはダイヤモンドだな」
「……ええッ!?」
宝石などに疎い男の冰でも、それがどれほど高価なのだろうと想像するのもおそろしいくらいだ。だが、周は平然としたように先を続けた。
「ストラップってのは普段使いするもんだろうが。すぐに割れちまったんじゃ意味がねえ。その点、ダイヤは硬度があるからな」
だから普段使いにはもってこいだというわけなのか――一般庶民として育った冰からすれば、驚く以前に発想からして異次元だ。
「赤いのは――まあ、ダイヤほど硬度はねえだろうが、ガーネットという宝石だ」
「ガーネット?」
冰にはあまり耳慣れない名前だった。赤い宝石といえば、すぐに思い浮かぶのはルビーくらいである。
「今回は硬度よりも色味で選んだからな。パイロープガーネットという種類のやつらしい」
「パイロープガーネット……」
二つの組紐を見つめながら、冰はハッと何かに思い当たったようにして瞳を見開いた。
「これ、もしかして……俺と白龍の……」
そう、名前にちなんだものではないかと思ったのだ。
以前、ケーキを選んだ際に周が言っていた言葉を思い出す。
『俺らの名前にピッタリだな』
あの時、冰はホワイトチョコレートでできた真っ白なケーキを、周は紅いベリーのムースケーキを頼んでいた。その時は偶然だったのだが、雪吹冰という”白”をイメージさせる名前と、周焔の”赤”をイメージさせる色のケーキを選んだことで、周が自分たちの名前のようだと言ったのだ。それを覚えていて、わざわざこうして揃いのストラップを作ってくれたというわけか。
冰はあまりの感激に、思わず胸が締めつけられたように苦しくなり、今にも涙が滲み出してしまいそうだった。
「白龍……あの、これ……」
「ああ。俺とお前と揃いで使おうと思ってな」
「お揃い……って、ホントに俺がもらっても……いいの?」
「ああ。その為に作ったんだ。スマートフォンのカバーに付けるのにちょうどいいだろうが」
周はそう言って、自分用の赤い方の組紐を冰の掌から取ろうと指を伸ばした。白い方には純白の中に降りしきる”雪吹”をイメージして薄灰色の糸を交ぜて組み込んでもらったのも、名前にちなんでと思ってのことだ。
だが冰は、伸ばされた指を咄嗟に掴むと、周にとってはひどく驚くようなことを口にした。
「待って白龍! あの、あの……さ。俺がこっちを貰ってい……?」
冰が取り上げたのは赤いストラップの方だった。
「我が侭言ってごめん。でも俺――こっちがいい……んだ。だって、だってさ……。これ持ってたら、いっつも白龍と一緒って思えるし」
うつむき、小さな声で頬を朱に染めながら弱々と呟いた冰を見つめながら、周は驚きに一瞬硬直させられてしまったほどだった。
37
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる