57 / 1,212
漆黒の人(香港マフィア頭領次男坊編)
57
しおりを挟む
その翌朝のこと――。
冰はカーテンの隙間から差し込む眩しいほどの日射しを感じて、ウトウトと目を覚ました。場所はいつもの自分のベッドだが、隣には周が眠っている。それを目にするなり、昨夜のことを思い出してポッと頬を赤らめた。
だがそれもほんの一瞬のことだった。次の瞬間にはハッと何かを思い出したようにして、冰はガバッと布団から半身を起こした。
(そうだ、あれを片付けなきゃ……!)
慌てて飛び起きると、とりあえずローブだけを羽織って、向かった先は周の私室だった。昨夜、周に抱かれたままにしてきてしまった情事の跡を思い出したのだ。
時計を見ればまだ朝の九時過ぎであったが、万が一にも真田やメイドたちにあのぐちゃぐちゃになったシーツの様子が見つかったりしたらと思うと、気が気でなかった。
ベッドリネンなどの交換は真田らの仕事とはいえ、情事の後始末などさせてはさすがに申し訳ない。それ以前に、そんなことが知れたら恥ずかしくてまともに顔を合せられなくなってしまう。冰は大慌てでバタバタとダイニングを横切った。
幸い、休日の食事は昼前くらいにブランチで取るのが通常なので、まだ誰もおらず、用意もされていない。ホッと胸を撫で下ろしながら中華風の装飾が美しいドアを開いた。真田らが来る前にそっとシーツを片付けてしまおうと思ったわけだ。
ところが――である。何と周の寝室はすっかりとメイキングが済んだ後のようで、綺麗に整えられていることを目の当たりにして蒼白となった。
(うそ……! まさか見つかっちゃったんじゃ……)
次第に心拍数が速くなる。オロオロしていると、周が寝ぼけ眼を擦りながらやって来た。
「おい、何事だ――」
冰がバタバタとベッドを抜け出していったことで目を覚ましてしまったのだろう。彼は昨日はとんぼ返りで関西へ行って来たこともあってか、熟睡していたようだ。
「あ、白龍! ごめん、起こしちゃって。あの、それが……さ」
冰がベッドと周を交互に見やりながら心許ない顔付きでいると、主人たちが起きたことを悟ったのだろう、相変わらずにビシッと黒のスーツで決めた真田が背後から顔を出した。
「うわ……っ!」
冰は気付くなり、慌てるまま大声を上げてしまった。
「何だ。どうかしたのか?」
周がポリポリと尻の辺りを掻きながら首を傾げている。起き抜けのまま追い掛けて来たのだろう、一応ローブは羽織っていたものの、下着を穿いてくるまで気が回らなかったらしい。彼が肌を掻く度に、チラチラとローブの隙間から見てはいけないモノがのぞいている。正直なところ朝から拝むには目の毒といえる。しかも真田がいる前だしで、冰はますます慌ててしまった。
冰はカーテンの隙間から差し込む眩しいほどの日射しを感じて、ウトウトと目を覚ました。場所はいつもの自分のベッドだが、隣には周が眠っている。それを目にするなり、昨夜のことを思い出してポッと頬を赤らめた。
だがそれもほんの一瞬のことだった。次の瞬間にはハッと何かを思い出したようにして、冰はガバッと布団から半身を起こした。
(そうだ、あれを片付けなきゃ……!)
慌てて飛び起きると、とりあえずローブだけを羽織って、向かった先は周の私室だった。昨夜、周に抱かれたままにしてきてしまった情事の跡を思い出したのだ。
時計を見ればまだ朝の九時過ぎであったが、万が一にも真田やメイドたちにあのぐちゃぐちゃになったシーツの様子が見つかったりしたらと思うと、気が気でなかった。
ベッドリネンなどの交換は真田らの仕事とはいえ、情事の後始末などさせてはさすがに申し訳ない。それ以前に、そんなことが知れたら恥ずかしくてまともに顔を合せられなくなってしまう。冰は大慌てでバタバタとダイニングを横切った。
幸い、休日の食事は昼前くらいにブランチで取るのが通常なので、まだ誰もおらず、用意もされていない。ホッと胸を撫で下ろしながら中華風の装飾が美しいドアを開いた。真田らが来る前にそっとシーツを片付けてしまおうと思ったわけだ。
ところが――である。何と周の寝室はすっかりとメイキングが済んだ後のようで、綺麗に整えられていることを目の当たりにして蒼白となった。
(うそ……! まさか見つかっちゃったんじゃ……)
次第に心拍数が速くなる。オロオロしていると、周が寝ぼけ眼を擦りながらやって来た。
「おい、何事だ――」
冰がバタバタとベッドを抜け出していったことで目を覚ましてしまったのだろう。彼は昨日はとんぼ返りで関西へ行って来たこともあってか、熟睡していたようだ。
「あ、白龍! ごめん、起こしちゃって。あの、それが……さ」
冰がベッドと周を交互に見やりながら心許ない顔付きでいると、主人たちが起きたことを悟ったのだろう、相変わらずにビシッと黒のスーツで決めた真田が背後から顔を出した。
「うわ……っ!」
冰は気付くなり、慌てるまま大声を上げてしまった。
「何だ。どうかしたのか?」
周がポリポリと尻の辺りを掻きながら首を傾げている。起き抜けのまま追い掛けて来たのだろう、一応ローブは羽織っていたものの、下着を穿いてくるまで気が回らなかったらしい。彼が肌を掻く度に、チラチラとローブの隙間から見てはいけないモノがのぞいている。正直なところ朝から拝むには目の毒といえる。しかも真田がいる前だしで、冰はますます慌ててしまった。
38
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる